43 / 110
3 過去
四話
しおりを挟む
案内されたのは歴代の騎士達が集めてきた資料室。窓も無く、一つの扉しかない部屋。分厚い壁で部屋を区切られている為、防犯防音となっている。秘密の会話をするには最適な場所である。
そして、騎士団の中でも部隊長だけ呼ばれているので、レオンハルトとは扉の前で一旦お別れとなった。
金属で覆われた分厚い扉を開けると、もう話が進んでいるようで机には沢山の資料が置かれては部隊長が会話をしていた。
その中一人、騎士団長がこちらに気がついてこちらに手を振った。
「イナミ隊長、休みにすまないが急を要する問題があってな。後で話は詳しく説明するから、今はそこの席についてくれないか」
「分かりました」
指示された場所に座れば会議は再開される。最初の経緯は聞いていないから会話の内容が入ってこないが、流しつつ聞いていると大型の魔物が町で暴れている様だ。
死者もそれなりに出ていて、次の町を襲わせないために騎士団は緊急で作戦を立てているところだった。
「休みくらい休ませろ、って思うよな」
そうイナミの隣で耳打ちするように小声で話すのは、二番隊長のアルバンだった。机に足をかけては暇そうに話を聞く、横柄な態度が許されるのはこの人くらいだろう。
「アルバン隊長も休みだったんですか」
「いや、今日は普通に出勤だけど。ほら、イナミ隊長って滅多に休まないからさ、そう思っただけ」
「……そうですか? 結構休んでいる方だと思うのですが」
「ハハっ。それで休んでいるって言われたら、ここにいる奴ら形無しなんだけど。まぁ、もう少し休んでいた方が良いと俺は思うけど」
「また考えておきます」
「絶対嘘でしょ」
アルバンから枯れた笑いが飛ぶ。そんな事を話いる内に、作戦は決まり魔物が通るルートに罠を仕掛ける事となった。簡単で単純な作戦だが、魔物がどれほどの猛威を振るうかで困難さは決まる。
「という事で後方から追い詰めつつ、魔術の罠にかける。解かれる場合もあるため部隊を固めておいてくれ」
そして、騎士団長が話を纏めて解散といったところだ。それぞれの部隊長は隊に戻って大まかな動きを決める事となった。
アルバンも戻ろうと立ち上がった時に、イナミは話しかけた。
「アルバン隊長、折り行ったお話いいですか」
「えっなに、改まって。俺、殺される?」
「そんな話じゃないです。アルバン隊長は三番隊のレオンハルトっていう人物を知っていますか」
「知ってるも何も、大型の魔物を一刀両断した君のところのエースだろ。その話が耳に入った時には、全体が騒ついたんだから知らない方がいないだろ」
「その件は、騒がせてすいません。もっと言っておくべきでした」
「いや、別に責めている訳じゃないけど。それより、その部下について話したい事があるんだろ」
「レオンハルトをそちらの隊でみてもらえないでしょうか」
「はぁ?」
気の抜けた声。体の力が抜けるのを感じアルバンはすぐに事情を確認すると、レオンハルトは三番隊に合わないのではないかという話だった。
「確かに、人によっては合う合わない隊があるけど。こちらとしては、レオンハルトは大歓迎だが、いいのか。ある意味イナミ隊長が目をつけて引き抜いてきた部下だろ」
「そう……寂しい気もしますが、私の下で腐らせるくらいなら、場所を変えた方がいいと思いまして」
「イナミ隊長が言うならそうなんだろうけど、一度レオンハルトに相談した方がいいんじゃないか。いきなり部隊を変えられたら勘違いするぞ、アイツ」
「……そうですね、分かりました。一度確認を取ってからまたご相談させていただきます」
「そうしてくれ」
一応、アルバンの隊に受けよってくれる事は約束されたが、レオンハルトに事情を説明しないといけないと思っていた束の間、すぐに大型種の魔物退治に騎士団は駆り出される事となる。
それから立て続けに予期していない事態に巻き込まれて、最後までレオンハルトに話す機会はなかった。
そして、騎士団の中でも部隊長だけ呼ばれているので、レオンハルトとは扉の前で一旦お別れとなった。
金属で覆われた分厚い扉を開けると、もう話が進んでいるようで机には沢山の資料が置かれては部隊長が会話をしていた。
その中一人、騎士団長がこちらに気がついてこちらに手を振った。
「イナミ隊長、休みにすまないが急を要する問題があってな。後で話は詳しく説明するから、今はそこの席についてくれないか」
「分かりました」
指示された場所に座れば会議は再開される。最初の経緯は聞いていないから会話の内容が入ってこないが、流しつつ聞いていると大型の魔物が町で暴れている様だ。
死者もそれなりに出ていて、次の町を襲わせないために騎士団は緊急で作戦を立てているところだった。
「休みくらい休ませろ、って思うよな」
そうイナミの隣で耳打ちするように小声で話すのは、二番隊長のアルバンだった。机に足をかけては暇そうに話を聞く、横柄な態度が許されるのはこの人くらいだろう。
「アルバン隊長も休みだったんですか」
「いや、今日は普通に出勤だけど。ほら、イナミ隊長って滅多に休まないからさ、そう思っただけ」
「……そうですか? 結構休んでいる方だと思うのですが」
「ハハっ。それで休んでいるって言われたら、ここにいる奴ら形無しなんだけど。まぁ、もう少し休んでいた方が良いと俺は思うけど」
「また考えておきます」
「絶対嘘でしょ」
アルバンから枯れた笑いが飛ぶ。そんな事を話いる内に、作戦は決まり魔物が通るルートに罠を仕掛ける事となった。簡単で単純な作戦だが、魔物がどれほどの猛威を振るうかで困難さは決まる。
「という事で後方から追い詰めつつ、魔術の罠にかける。解かれる場合もあるため部隊を固めておいてくれ」
そして、騎士団長が話を纏めて解散といったところだ。それぞれの部隊長は隊に戻って大まかな動きを決める事となった。
アルバンも戻ろうと立ち上がった時に、イナミは話しかけた。
「アルバン隊長、折り行ったお話いいですか」
「えっなに、改まって。俺、殺される?」
「そんな話じゃないです。アルバン隊長は三番隊のレオンハルトっていう人物を知っていますか」
「知ってるも何も、大型の魔物を一刀両断した君のところのエースだろ。その話が耳に入った時には、全体が騒ついたんだから知らない方がいないだろ」
「その件は、騒がせてすいません。もっと言っておくべきでした」
「いや、別に責めている訳じゃないけど。それより、その部下について話したい事があるんだろ」
「レオンハルトをそちらの隊でみてもらえないでしょうか」
「はぁ?」
気の抜けた声。体の力が抜けるのを感じアルバンはすぐに事情を確認すると、レオンハルトは三番隊に合わないのではないかという話だった。
「確かに、人によっては合う合わない隊があるけど。こちらとしては、レオンハルトは大歓迎だが、いいのか。ある意味イナミ隊長が目をつけて引き抜いてきた部下だろ」
「そう……寂しい気もしますが、私の下で腐らせるくらいなら、場所を変えた方がいいと思いまして」
「イナミ隊長が言うならそうなんだろうけど、一度レオンハルトに相談した方がいいんじゃないか。いきなり部隊を変えられたら勘違いするぞ、アイツ」
「……そうですね、分かりました。一度確認を取ってからまたご相談させていただきます」
「そうしてくれ」
一応、アルバンの隊に受けよってくれる事は約束されたが、レオンハルトに事情を説明しないといけないと思っていた束の間、すぐに大型種の魔物退治に騎士団は駆り出される事となる。
それから立て続けに予期していない事態に巻き込まれて、最後までレオンハルトに話す機会はなかった。
53
ここまでの長編を最後までお読みいただきありがとうございます100お気に入りありがとうございます
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる