騎士隊長はもう一度生き返ってみた(その名前はリリィ)

イケのタコ

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3 過去

四話

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案内されたのは歴代の騎士達が集めてきた資料室。窓も無く、一つの扉しかない部屋。分厚い壁で部屋を区切られている為、防犯防音となっている。秘密の会話をするには最適な場所である。
そして、騎士団の中でも部隊長だけ呼ばれているので、レオンハルトとは扉の前で一旦お別れとなった。

金属で覆われた分厚い扉を開けると、もう話が進んでいるようで机には沢山の資料が置かれては部隊長が会話をしていた。
その中一人、騎士団長がこちらに気がついてこちらに手を振った。

「イナミ隊長、休みにすまないが急を要する問題があってな。後で話は詳しく説明するから、今はそこの席についてくれないか」
「分かりました」

指示された場所に座れば会議は再開される。最初の経緯は聞いていないから会話の内容が入ってこないが、流しつつ聞いていると大型の魔物が町で暴れている様だ。
死者もそれなりに出ていて、次の町を襲わせないために騎士団は緊急で作戦を立てているところだった。

「休みくらい休ませろ、って思うよな」

そうイナミの隣で耳打ちするように小声で話すのは、二番隊長のアルバンだった。机に足をかけては暇そうに話を聞く、横柄な態度が許されるのはこの人くらいだろう。

「アルバン隊長も休みだったんですか」
「いや、今日は普通に出勤だけど。ほら、イナミ隊長って滅多に休まないからさ、そう思っただけ」
「……そうですか? 結構休んでいる方だと思うのですが」
「ハハっ。それで休んでいるって言われたら、ここにいる奴ら形無しなんだけど。まぁ、もう少し休んでいた方が良いと俺は思うけど」
「また考えておきます」
「絶対嘘でしょ」

アルバンから枯れた笑いが飛ぶ。そんな事を話いる内に、作戦は決まり魔物が通るルートに罠を仕掛ける事となった。簡単で単純な作戦だが、魔物がどれほどの猛威を振るうかで困難さは決まる。

「という事で後方から追い詰めつつ、魔術の罠にかける。解かれる場合もあるため部隊を固めておいてくれ」

そして、騎士団長が話を纏めて解散といったところだ。それぞれの部隊長は隊に戻って大まかな動きを決める事となった。
アルバンも戻ろうと立ち上がった時に、イナミは話しかけた。

「アルバン隊長、折り行ったお話いいですか」
「えっなに、改まって。俺、殺される?」
「そんな話じゃないです。アルバン隊長は三番隊のレオンハルトっていう人物を知っていますか」
「知ってるも何も、大型の魔物を一刀両断した君のところのエースだろ。その話が耳に入った時には、全体が騒ついたんだから知らない方がいないだろ」
「その件は、騒がせてすいません。もっと言っておくべきでした」
「いや、別に責めている訳じゃないけど。それより、その部下について話したい事があるんだろ」
「レオンハルトをそちらの隊でみてもらえないでしょうか」
「はぁ?」

気の抜けた声。体の力が抜けるのを感じアルバンはすぐに事情を確認すると、レオンハルトは三番隊に合わないのではないかという話だった。

「確かに、人によっては合う合わない隊があるけど。こちらとしては、レオンハルトは大歓迎だが、いいのか。ある意味イナミ隊長が目をつけて引き抜いてきた部下だろ」
「そう……寂しい気もしますが、私の下で腐らせるくらいなら、場所を変えた方がいいと思いまして」
「イナミ隊長が言うならそうなんだろうけど、一度レオンハルトに相談した方がいいんじゃないか。いきなり部隊を変えられたら勘違いするぞ、アイツ」
「……そうですね、分かりました。一度確認を取ってからまたご相談させていただきます」
「そうしてくれ」

一応、アルバンの隊に受けよってくれる事は約束されたが、レオンハルトに事情を説明しないといけないと思っていた束の間、すぐに大型種の魔物退治に騎士団は駆り出される事となる。
それから立て続けに予期していない事態に巻き込まれて、最後までレオンハルトに話す機会はなかった。
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