騎士隊長はもう一度生き返ってみた(その名前はリリィ)

イケのタコ

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五話 拘束

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一箇所に長時間いないよう移動し続けてきたが、捕まる時は案外早い。
 
ロードリックによって捕まったイナミは町の宿に捕縛されていた。騎士に見張られながら椅子に括り付けられ、魔術師という事もあって手首には術を施した縄が巻かれていた。

「その紐がある限りは術を使おうとすれば電撃が走る。何かをしようと思わない方がいい」

騎士の一人に脅されたが、使えるのはリリィであって俺にとってなんの意味もなさない。

捕まったのがロードリックか。
模範的な騎士で良い騎士ではあるのだが、敵側になると融通が利かない堅物の騎士。
それでも、敵が近づいてくる事くらい伝えたい。

「あの、敵に追われてまして……」
「帝都で話は聞く。今は話を聞く気はない」

元上司の話くらい少し訊けよ!
と怒りたいが今は外見が違うので仕方ない。
ロードリックは全く訊く耳は持たずそそくさと数人の騎士を連れて部屋を出て行ってしまう。
溜め込んだ息を吐きつつ。それにしても、すぐに帝都行きかと思えば一旦宿に降ろされて騎士達に見張られている。

「帝都と連絡が取れていないようです」

数時間が経って、ここの隊長であるロードリックは帰ってこず、一人の騎士が緊張な面持ちで部屋に入って来ては仲間に報告する。

「どうなっているんだ、先ほどまでとれていただろう」
「そうなのですが、隊長が言うには何かに邪魔されていると」
「邪魔ってまさかコイツが」

騎士が俺を指したが、すぐに仲間がそれはないと否定する。

「もし、術を使って通信妨害しているなら、必ず縄に反応があるはずだから違う」
「そっそうか」

良かった、冷静な騎士がいた。

「隊長はどうすると」
「帝都と連絡が付くまでこの町で待機することが決まった。罠だったとしても待ち構えているほうが良いと」

皆に辺りを警戒するようにと隊員に命令する。
確かにその方が騎士団的には良いと思うが、俺的には最悪の決断だ。
どう考えても魔術で通信を遮断するのはサエグサしかいない。騎士に俺が捕まる事を見越しての行動なのだろう。
術も使えない、その上に拘束されているなんて良いカモだ。
俺は今から首を落とされるのですがと、暴れてやりたいが余計に拘束具が増えそうなのでやめておく。

「で、あるから。ニードにここを任せていいか」
「えっ僕ですか」

意外そうに口を開けるニードと呼ばれた騎士は、どの隊員より若く青々しい。レオンハルトの隊でいうと、フィルの立ち位くらいに見える。

「我々は連絡できない原因を探るから、一人でここを任せる事になるが、大丈夫か」
「もちろんですよ、僕一人任せてください先輩方」

フィルは緊張を纏った素直な学生だったが、こちらは自信過剰な危なっかしい学生だな。
というか駄目だ、新人を一人にしては巻き込まれる。

「俺、結構な凶悪犯だと思うのですけど、見張りは一人だけでいいんですか。仲間とか、来るかもだし」

魔術師が魔術を封じられている今、無力だと分かっている、それでも二人もしくはベテランを付けろと言いたい。
ロードリックは慎重に物事を進める方だと思っていたが、罪人の横に新人一人を置いていくのは荷が重すぎるだろ。

「ふんっ、そんな脅しに屈すると思うか。この僕、私がいる限りは一歩も出歩けると思うな」
「そういうことだと、凶悪犯さん。せいぜい大人しくする事だな」

騎士達に鼻で笑われた、全く取り合ってくれない。それもそうだよな、見た目とか魔術として未熟さを醸し出しるし、子供の戯言しか聞こえない。
屈強な騎士達は新人のニードを残して雁首揃えて部屋から出ていく。

新人と凶悪犯の二人だけ。

「本当に仲間というか、凶悪なサエグサが来るんだ。せめて君だけでも逃げろ」
「はいはい、嘘はいいから。大人しくしてろ」

どうにかサエグサが来ることを伝えたいが、全く新人は信じてくれないようだ。教育しなかったロードリック、恨むぞ。
レオンハルト隊だったらな、話くらいは聞いてくれそうなんだが。

「フィルだったらな……」
「フィル?レオンハルト隊長のところのやつか」

口から流れ出たものを拾ったのはニードだった。

「なんだ、貴様。レオンハルトの隊に会っていたのか」
「会ったというか成り行きで」
「ふん、そうなるとあそこより僕達が早く捕まえ事になるな。やはり、僕たち部隊は上っ面だけの部隊とは違う訳だ」

どこか自慢げに腕を組むニードは、レオンハルトの隊に敵対心があるようだ。
 
「レオンハルトの隊とは仲が悪いのか」
「悪い?そんなものじゃない、隊長からの因縁だよ。前から何かにつけてレオンハルトの隊とは意見が合わないし、それに加えて意見を押し通してくる。自分達が上だと思っているのか、思い出すだけでもイライラする」
「そうですか……」

怒りが溜まっていたのかニードはどんどん饒舌になっていく。
レオンハルトとロードリックといい、隊員までお互いを意識して牽制し合っているのか。二人の喧嘩を思い出すだけで、こちらは頭が痛い。

「そもそも、レオンハルト隊長が悪いんだ。隊長に裏切るような真似をして」
「好きな食べ物を取ったのとか」
「そんなワケないだろ!あの人は恩ってものを返さず目先の欲に浮かれて、隊長もそれを怒っているんだ。自分の出世の方が大事で……何を話させる!」
「いや、勝手に話したと思うけど」
「うるさいっ!犯罪者が口答えするな」
「どっちなんだよ」

昔からの確執は余計に硬く溝を深めあった関係になっている。修復不可能なのでは。

「もうお前はしゃべるな!」
「はいはい」
「だから、しゃべるなって」

どうでもいいやり取りをしていたら、扉を軽く叩く音が聞こえた。

「お前と変な話をしてるから、みんなが帰って来たじゃないか」
「おい、待て。こんな早く帰ってくるわけない」
「なに言って」

こちらを向いたままニードがドアノブに手をかけが、その前にノブは回り扉が勝手に開く。

そして、扉の向こうには
 
「聞こえる陰口は関心しないね」

レオンハルトがいた。

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