ガラス玉のように

イケのタコ

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おまけ

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「ただいま、戻りました」
「おかえり」

出迎え来たのは勿論、義宗さんだ。帰りのタクシー、アオが彼奴絶対に機嫌が悪いから気をつけろと散々煽っていたけど、いつも通りの優しい笑顔の義宗さんがいる。

「良かった。もっと夜遅くなると思ってたから」
「すみません、何も言わずに行ってしまった」
「いいよ、スズ君のせいじゃなから。何より無事で本当に良かった。傷一つでも付いてたら、どうケジメつけさせるか考えてたから」

いや、アオの言った通りかもしれない。笑顔の奥に薄らと隙間から見える目は鋭く、その眼光で睨まれているアオが一向に玄関に入って来ない。

「玄関で立ち話もなんだから、中に入って」

俺と三船は靴を脱いでさっさと中に入る。

「アオ」
「はいはい」

当然、義宗さんにアオが呼び止めらていた。怒られると思いきや、一度指を指されるだけでお咎めはなし。
それでも、アオには何かが伝わっているようで『すいませんね』と平謝りして家の中に入ってくる。

「今から夜ご飯の用意するけど、食べられる人いる」

やはり、義宗さんはアオがなにをしていたのかお見通しのようだ。
俺は店には入ったけどハンバーガーはあまり食べていなかったから、お腹にまだ入りそうだ。食べますと手を挙げた。

「スズ君あんまり無理しなくてもいいからね。三船はお腹空いてる」
「空いてる」
「分かった、用意するからスズ君と三船は居間で待ってて」

三船は頷くと、義宗さんは着物裾を捲り上げ炊事場の方に向かう。

「俺も腹減ったんですけど」
「お前は食べただろ」
「それはそれ、これはこれ。あれだけで足りるかっての」

不満を言いながらアオは気怠げについていく。

「意外にアオさん怒られなかった。やっぱり義宗さんって優しい?」

仲が良さそうな二人、もっと険悪な空気になると身構えていたが全く無さそうで安心した。

「いや、あれは一回目の警告だな」
「えっ」
「次したら分かってるなって言ってたから」
「えー」

平然と三船は言う。義宗さんを絶対に怒らせないようにしようと誓った夜だった。


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