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第15話 ヒトと御使いの違い
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ザイは浮上する意識の中、いい匂いと柔らかな感触の気持ち良さに手を這わせそこに顔を埋めた。
「目が覚めたか?」
上から降ってきた声に顔を上に向けて間近にあったフェイの顔に一気に目が覚めた。
今朝の目覚めは衝撃的だった。
同時に己が顔を埋めていたものが何であるかも認識する。
柔らかなで程よい弾力を返すその膝からそっと頭を浮かし、その膝の主の表情を窺い見ればにこにこと笑っている。
一体何がどなってこうなった……。
状況に頭が追いつかないまま身体を横向きの姿勢にされ、再び頭は膝に載せられた。
額にフェイの手が当てられ、心拍数が一気に上がる。
「やはり、まだ熱があるな」
この状況に留まりたい誘惑を己の持て余した衝動の勢いに任せて断ち切り、ザイは勢いよく身を起こした。それに驚き目をしばたたかせる彼女の顔を直視できず、ザイは眼を逸らした。
「大丈夫だから」
「しかし……」
「本当に大丈夫だから!」
「……そうか」
狼狽え、叫ぶザイにフェイはとても大人な笑顔で聞き分け良く返してきた。
ザイが身を起こした事で自由になり、立ち上がったフェイを思わずザイの目が追う。それに気付いたフェイがこちらを見つめ返す。
「どうした?」
「なんでもない」
そうか、とだけ返し、フェイは身を整えると言って去って行った。
後を追いたいのは山々だが、女の支度と言われればザイにはついていくとは言いづらい。
彼女はああは言ったがきっとザイの為の食料を探しに行ったのだ。
戻ってきたらついでに獲ってきたとか言い出すに違いないのだ。
彼女が御使いだという実感はいまいち湧かない。ザイの持つ御使いに関する知識は、せいぜいが幼い子供のうろ覚えレベルのものだ。御使いの話の流れはどれも似たり寄ったりで、不思議の力を用いた後は必ず天に帰っておしまいだ。
たった一人、天に昇らず世界を巡り続けてお終わる御使いがいた。
それが恐らく彼女なのだろう。
御使いはヒトよりもっと上の存在だ。世界を創る手伝いをするくらいには。
食事も火も睡眠も、ヒトや生き物にとっては必要なものだが、彼女には何一つ必要のないものに違いない。
フェイはこの黒の森を『整える』為にここへ来た。フェイは銀の御使いに『手伝ってもらった』と言った。過去形であり、用が済んだとばかりに御使いが姿を消したところから考えれば彼女の用件は終わっているか終わりに近い。
なのにここに留まるのはザイの為だ。火を焚き、食料を集め、気を遣わせてないように共に食事を摂る。
身体は柔らかく、素肌はひんやりしているが、温もりはある。
ヒトではないのにヒトと錯覚してしまうのは彼女が世界に留まる事を選んだからだろう。
ヒトと全く関わらずに過ごすという事は難しい事だ。
彼女の存在はザイに甘い痺れと衝動と、心地よさを齎す。
ザイの体調が戻れば彼女は彼を置いて去るのだろう。
離れたくないし離したくない。何より離せない。
その気持ちが何なのか、彼もいい加減、理解はしている。
今まで他人を信じる事のなかった彼が会ったばかりの相手に信用という段階すら飛ばしてあっさりと陥《お》ちたという事実。
非常に往生際悪く目を逸らし、なけなしの警戒心が遠くでどんなに叫んでも、身体と心はそれに従う事はなかった。一度認めてしまえば全てがすとんと収まった。
フェイが好きだ。
一人の女として惚れてしまったから子供としてしか見ない彼女に腹が立つし苛立ちもする。
もし彼女がザイに向ける優しさを他の男に同じように向けたなら、その相手を殺しにかかるだろう。
女を知っているが故に彼女の感触を味わったが故に一人の男として欲情もする。
だが、彼女が嫌がるならそれも耐えよう。
ザイは固く決心した。
嫌われたら多分死ぬ。
§
戻ってきたフェイは予想通り昨日と同様に木の実や果実を抱えて帰ってきた。
彼女への気持ちを一旦認めてしまえば、二人だけの空間がどうも落ち着かない。
それを察した彼女がザイに身を寄せて顔やら首やら傷の状態やらを確認する為に触ってくるので尚落ち着かない。
どうにか身体を動かしてくると彼女から距離をとろうとすれば、まだ激しい運動はダメだと止められる。適度に身体を動かす程度なら、と話が落ち着き、結局彼女の森の散策に同伴する事になった。
フェイはゆっくりと森の中を歩き、そこに自生する薬草や毒草の類をレクチャーしていく。
朝食として食べた果実や木の実がどんな特徴を持つのか、どういった環境で育つのかを教えてくれた。毒とそうでない物の見分け方の説明も丁寧で、わかり辛いものは匂いや味で覚えさせられた。
流石に噛めば口の中が爛れる草を舌に載せられ、そうと知らずに口に含んだ時にはぞっとした。
どちらも唾液と混ざる事で薬効を引き出す事が厄介で、傷薬の薬草には細心の注意を払おうと自身の頭に刻み込んだ。
フェイからすれば言いつけを守っていれば問題ないという事のようだが、ザイからすればそういう問題ではない。普段は熱だなんだと気にする癖に一歩間違えばただでは済まない毒を平然と口に放り込むのはどういう了見か。ザイだからこそまだ良かったものの、普通に暮らす子供が彼女の言いつけを忠実に守るとは限らない。
ザイはその時はっきりとヒトと御使いの隔たりの片鱗を垣間見た。
一頻の説明を終えたフェイは更に奥へと足を進めた。
彼女は散策と言ったが、その足取りはしっかりと目的を持ったものだ。
ふいに止まった背中に彼女の視線の先を窺い見れば黒い結晶が地面に刺さっているのを発見した。
彼女がそれに触れようとした瞬間、結晶から黒い火花が散り、その手を弾いた。
フェイが触れる事を拒んだ。それだけでもザイにとっては許し難い。
黒い結晶を見つめるフェイの瞳から彼に見せていた穏やかさが消えた。
「ザイ」
彼女の呼ぶ声にいつもの柔らかさはない。
「これに、触れられるか?」
ザイはその言われるままに触れてみた。特にフェイのように何か反応を示す事もなさそうなので、それを掴んで地面から引き抜いた。
彼女にそう命じられたわけではなかったが、彼女の不快の原因がこの結晶にある事を察したからだ。
「それに触れて、特に異常はないか?」
「ない。でもなにこれ? 嫌な感じがする」
そう、とても嫌な感じだ。この森の空気を、先日彼を襲った魔物たちから立ち上った、尋常ではない黒い気配を煮詰めたような、この結晶からはそんな嫌な感じがした。
「良い物でない事は確かだな」
そう答えた彼女の声は硬い。
その気配が、徐々に、徐々に変質していく。
それは本来の彼女とは全く真逆のものだ。
フェイが地面を睨む。
森が震えた。
背筋を詰めたいものが駆け上がる。
ザイは咄嗟にその白く柔らかい手に己のそれを重ね、彼女を呼んだ。
「フェイ」
はっとこちらを振り返った黒い筈の瞳が一瞬だけ白に見えた。白目の部分が黒く、それがザイの脳裏に鮮烈に灼きついた。
その色彩に心臓が嫌な音を立て、息が止まった。
ひとつ瞬けば黒い瞳がザイを捕らえていた。無機質な瞳に光が戻るのを確認し、そろそろと息を吐きだし結晶を差し出す。
「これ、どうする?」
これが彼女にとって決して良いものでない事は分かった。
今この場で叩き壊してしまいたいが、ザイが勝手にして良い物ではない。
結局フェイは持ち帰る事にしたらしい。
ザイは結晶の入った革袋を彼女の手から取ろうと引いた。
「俺が持つ」
「不快なのだろう?」
触れもしない癖にそんな事を聞いてくる。
「フェイはもっと嫌そうだ」
これは彼女に近づけてはいけない。そう思えてならない。
「ありがとう」
優しい声音と共に頭に手が降って来る。
子供扱いするなとその手を除けたいところだが、今は甘んじて子供として受け取ってやると自分に言い聞かせる。
革袋に目を滑らせ、先ほどの彼女を取り巻く空気の変わりようを思いだす。同時に彼女の反転した瞳も。一瞬の事だったので実際がどうだったかもわからない。ただの目の錯覚だったと言われればそれまでだ。だが。
彼女は確かに怒っていた事に間違いない。
おとぎ話を信じるなら、この世界は『最後の御使い』にとっての大事な宝物であり、神様からの預かりものなのだ。それを安易に良からぬ事に利用しようとする不届き者に彼女は怒ったのだ。
ならば、そいつらの首を余さず狩ってきたならば、彼女は褒めてくれるだろうか。
子供扱いは遠慮したいが褒められるのはやぶさかでない。
想像するだけで胸に甘い痺れが走る。
「ザイ、実はあと4つほどそれがあるんだが、頼まれてくれるか?」
「やる」
ザイは即答した。
「目が覚めたか?」
上から降ってきた声に顔を上に向けて間近にあったフェイの顔に一気に目が覚めた。
今朝の目覚めは衝撃的だった。
同時に己が顔を埋めていたものが何であるかも認識する。
柔らかなで程よい弾力を返すその膝からそっと頭を浮かし、その膝の主の表情を窺い見ればにこにこと笑っている。
一体何がどなってこうなった……。
状況に頭が追いつかないまま身体を横向きの姿勢にされ、再び頭は膝に載せられた。
額にフェイの手が当てられ、心拍数が一気に上がる。
「やはり、まだ熱があるな」
この状況に留まりたい誘惑を己の持て余した衝動の勢いに任せて断ち切り、ザイは勢いよく身を起こした。それに驚き目をしばたたかせる彼女の顔を直視できず、ザイは眼を逸らした。
「大丈夫だから」
「しかし……」
「本当に大丈夫だから!」
「……そうか」
狼狽え、叫ぶザイにフェイはとても大人な笑顔で聞き分け良く返してきた。
ザイが身を起こした事で自由になり、立ち上がったフェイを思わずザイの目が追う。それに気付いたフェイがこちらを見つめ返す。
「どうした?」
「なんでもない」
そうか、とだけ返し、フェイは身を整えると言って去って行った。
後を追いたいのは山々だが、女の支度と言われればザイにはついていくとは言いづらい。
彼女はああは言ったがきっとザイの為の食料を探しに行ったのだ。
戻ってきたらついでに獲ってきたとか言い出すに違いないのだ。
彼女が御使いだという実感はいまいち湧かない。ザイの持つ御使いに関する知識は、せいぜいが幼い子供のうろ覚えレベルのものだ。御使いの話の流れはどれも似たり寄ったりで、不思議の力を用いた後は必ず天に帰っておしまいだ。
たった一人、天に昇らず世界を巡り続けてお終わる御使いがいた。
それが恐らく彼女なのだろう。
御使いはヒトよりもっと上の存在だ。世界を創る手伝いをするくらいには。
食事も火も睡眠も、ヒトや生き物にとっては必要なものだが、彼女には何一つ必要のないものに違いない。
フェイはこの黒の森を『整える』為にここへ来た。フェイは銀の御使いに『手伝ってもらった』と言った。過去形であり、用が済んだとばかりに御使いが姿を消したところから考えれば彼女の用件は終わっているか終わりに近い。
なのにここに留まるのはザイの為だ。火を焚き、食料を集め、気を遣わせてないように共に食事を摂る。
身体は柔らかく、素肌はひんやりしているが、温もりはある。
ヒトではないのにヒトと錯覚してしまうのは彼女が世界に留まる事を選んだからだろう。
ヒトと全く関わらずに過ごすという事は難しい事だ。
彼女の存在はザイに甘い痺れと衝動と、心地よさを齎す。
ザイの体調が戻れば彼女は彼を置いて去るのだろう。
離れたくないし離したくない。何より離せない。
その気持ちが何なのか、彼もいい加減、理解はしている。
今まで他人を信じる事のなかった彼が会ったばかりの相手に信用という段階すら飛ばしてあっさりと陥《お》ちたという事実。
非常に往生際悪く目を逸らし、なけなしの警戒心が遠くでどんなに叫んでも、身体と心はそれに従う事はなかった。一度認めてしまえば全てがすとんと収まった。
フェイが好きだ。
一人の女として惚れてしまったから子供としてしか見ない彼女に腹が立つし苛立ちもする。
もし彼女がザイに向ける優しさを他の男に同じように向けたなら、その相手を殺しにかかるだろう。
女を知っているが故に彼女の感触を味わったが故に一人の男として欲情もする。
だが、彼女が嫌がるならそれも耐えよう。
ザイは固く決心した。
嫌われたら多分死ぬ。
§
戻ってきたフェイは予想通り昨日と同様に木の実や果実を抱えて帰ってきた。
彼女への気持ちを一旦認めてしまえば、二人だけの空間がどうも落ち着かない。
それを察した彼女がザイに身を寄せて顔やら首やら傷の状態やらを確認する為に触ってくるので尚落ち着かない。
どうにか身体を動かしてくると彼女から距離をとろうとすれば、まだ激しい運動はダメだと止められる。適度に身体を動かす程度なら、と話が落ち着き、結局彼女の森の散策に同伴する事になった。
フェイはゆっくりと森の中を歩き、そこに自生する薬草や毒草の類をレクチャーしていく。
朝食として食べた果実や木の実がどんな特徴を持つのか、どういった環境で育つのかを教えてくれた。毒とそうでない物の見分け方の説明も丁寧で、わかり辛いものは匂いや味で覚えさせられた。
流石に噛めば口の中が爛れる草を舌に載せられ、そうと知らずに口に含んだ時にはぞっとした。
どちらも唾液と混ざる事で薬効を引き出す事が厄介で、傷薬の薬草には細心の注意を払おうと自身の頭に刻み込んだ。
フェイからすれば言いつけを守っていれば問題ないという事のようだが、ザイからすればそういう問題ではない。普段は熱だなんだと気にする癖に一歩間違えばただでは済まない毒を平然と口に放り込むのはどういう了見か。ザイだからこそまだ良かったものの、普通に暮らす子供が彼女の言いつけを忠実に守るとは限らない。
ザイはその時はっきりとヒトと御使いの隔たりの片鱗を垣間見た。
一頻の説明を終えたフェイは更に奥へと足を進めた。
彼女は散策と言ったが、その足取りはしっかりと目的を持ったものだ。
ふいに止まった背中に彼女の視線の先を窺い見れば黒い結晶が地面に刺さっているのを発見した。
彼女がそれに触れようとした瞬間、結晶から黒い火花が散り、その手を弾いた。
フェイが触れる事を拒んだ。それだけでもザイにとっては許し難い。
黒い結晶を見つめるフェイの瞳から彼に見せていた穏やかさが消えた。
「ザイ」
彼女の呼ぶ声にいつもの柔らかさはない。
「これに、触れられるか?」
ザイはその言われるままに触れてみた。特にフェイのように何か反応を示す事もなさそうなので、それを掴んで地面から引き抜いた。
彼女にそう命じられたわけではなかったが、彼女の不快の原因がこの結晶にある事を察したからだ。
「それに触れて、特に異常はないか?」
「ない。でもなにこれ? 嫌な感じがする」
そう、とても嫌な感じだ。この森の空気を、先日彼を襲った魔物たちから立ち上った、尋常ではない黒い気配を煮詰めたような、この結晶からはそんな嫌な感じがした。
「良い物でない事は確かだな」
そう答えた彼女の声は硬い。
その気配が、徐々に、徐々に変質していく。
それは本来の彼女とは全く真逆のものだ。
フェイが地面を睨む。
森が震えた。
背筋を詰めたいものが駆け上がる。
ザイは咄嗟にその白く柔らかい手に己のそれを重ね、彼女を呼んだ。
「フェイ」
はっとこちらを振り返った黒い筈の瞳が一瞬だけ白に見えた。白目の部分が黒く、それがザイの脳裏に鮮烈に灼きついた。
その色彩に心臓が嫌な音を立て、息が止まった。
ひとつ瞬けば黒い瞳がザイを捕らえていた。無機質な瞳に光が戻るのを確認し、そろそろと息を吐きだし結晶を差し出す。
「これ、どうする?」
これが彼女にとって決して良いものでない事は分かった。
今この場で叩き壊してしまいたいが、ザイが勝手にして良い物ではない。
結局フェイは持ち帰る事にしたらしい。
ザイは結晶の入った革袋を彼女の手から取ろうと引いた。
「俺が持つ」
「不快なのだろう?」
触れもしない癖にそんな事を聞いてくる。
「フェイはもっと嫌そうだ」
これは彼女に近づけてはいけない。そう思えてならない。
「ありがとう」
優しい声音と共に頭に手が降って来る。
子供扱いするなとその手を除けたいところだが、今は甘んじて子供として受け取ってやると自分に言い聞かせる。
革袋に目を滑らせ、先ほどの彼女を取り巻く空気の変わりようを思いだす。同時に彼女の反転した瞳も。一瞬の事だったので実際がどうだったかもわからない。ただの目の錯覚だったと言われればそれまでだ。だが。
彼女は確かに怒っていた事に間違いない。
おとぎ話を信じるなら、この世界は『最後の御使い』にとっての大事な宝物であり、神様からの預かりものなのだ。それを安易に良からぬ事に利用しようとする不届き者に彼女は怒ったのだ。
ならば、そいつらの首を余さず狩ってきたならば、彼女は褒めてくれるだろうか。
子供扱いは遠慮したいが褒められるのはやぶさかでない。
想像するだけで胸に甘い痺れが走る。
「ザイ、実はあと4つほどそれがあるんだが、頼まれてくれるか?」
「やる」
ザイは即答した。
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