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第14話 恋する人(※ダレス)

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 なんだか頭がぼーっとする。身体が熱くて、苦しい。
 俺は、何をしていたんだ︙?
 朦朧とする意識の中、ウルソンは目を覚ました。

 くちゅ...ぐちゅっ、じゅっ...。

「ん・・・はぁ、ぁ・・・。」

 部屋に響く、水音と喘ぎ声。一体、誰の声なのか。自分が誰かの閨事の最中に居合わせてしまっているのならば、一刻も早くこの場から立ち去らねばならない。そう思ってウルソンは重い瞼持ち上げた。

「やっと起きたか、ウルソン」
「お坊っ、ちゃ、ま...?」

 自分の名を呼ばれ視線を動かせば柔らかい崩れた金髪が目に入る。少し思考が停止したあと、先程までの記憶がガタガタと雪崩のように思い出された。

 反射的に身体を起こそうとする。

「ひぃっ・・・!!」
 突然、腹の奥に強い刺激が与えられる、腰の力が一気に抜けた。何かが中を擦った、身体がビリビリと痙攣する。

「なんだ、あれだけ飲ませたのにまだ動けるのか?騎士ってのは頑丈だな」
 
 金髪の青年はウルソンを見下ろし冷たく言った。
 ここはベッドの上、ダレスの部屋だ。薄明かりでは、主の表情がよく見えない。何かを飲まされ意識が飛んで・・・。なぜ今、ダレスの部屋でダレスに触れられているのか、専属騎士には分からない。

 混乱するウルソンの身体を青年は無言で弄る。蕾の中には二本の指が挿入され、時々クイっと腹側を圧迫された。その刺激は甘やかな快楽を生み出し、専属騎士は受けとる度、主の指を締めつけて答えてしまう。

 ふと、ダレスの部屋にいるはずの少年たちを思い出す。見渡し目を凝らせど、人影は無くメイドすらいない。自分の寝転ぶ大きすぎるベッドは複数人との遊びを好む彼が特別に作らせたモノ、確かに主のベッド。
 
「お坊っちゃま、何を︙︙、んっ、していらっしゃるのですか︙? それに...今夜のお相手方は? ︙ぁあっ!」

 はだけたバスローブから覗く、鍛え上げられた胸に飾られた突起を摘ままれる。電流のような刺激が腰まで駆け巡った。ウルソンの胸元の飾りは腫れ上がっていた、突起に布がかするだけで声が漏れそうになる。

「へぇ、まだ喋る余裕もあるのか。アイツらは、帰らせた。」
 ダレスは指先でウルソンの乳首を弾きながら、何でもないように言う。人差し指と中指の間で挟んだり、左右に捻ってみたりと手慣れた手つきで遊ぶ。
「...ひぅ、やっ...、あ」
 彼の指先の器用さや確実に快楽を与えてくる技能は今まで抱いてきた人の数を物語るようだ。恋しい人に触れられているのに、また胸が痛くなる。

「今夜のお相手方は、と聞いたな。僕の。ウルソン。」

 冷たい声と、剣呑な眼差し。現状からして、それが悪趣味な冗談でないことが分かると、ウルソンの血の気が一気に引いた。青ざめて、ダレスを力いっぱいに突き放し、ベッドの上から逃げようと試みる。

「い、いけません︙‼ そんな、お坊っちゃま、私は、もう部屋に戻りますから︙! 何故なにゆえかは存じませんが、身体の熱が冷めないと言うのなら、何方どなたかにご連絡をして、すぐにお呼び致しましょう︙︙!」

 捲し立てるようにウルソンは早口で言った、はだけたバスローブの胸元を握りしめる。

 これは、何かの間違いだ・・・。

 ダレスは突き飛ばしたまま動かない。その隙に力の入らないフラつく脚でベッドから這い出る。

 待て、と背後から低い声に呼び止められる。主の一言でウルソンの身体は金縛りにあったように動かなくなる。



「僕のこと、好きだろう。ウルソン」
「︙︙は?」

 心臓が掴まれたようだった。
 指先がふるふると震えだす。
 恐ろしくて、振り返ることもできない。

「僕が気付かないとでも思っていたのか?」

 ウルソンはその場に崩れ落ちた、頭が真っ白だ。視界はあっという間に水中に変化した、ボタボタと雨が降る、口の中に塩味が広がっていく。自分の犯した大罪が、白日のもとに晒された。

「︙︙申し、訳、ありません︙。」

 嗚咽するノドで小さく謝罪する。

 ダレスに腕を捕まれ、誘導されるまま立ち上がる。ベッド前まで来ると、胸元を掌で押された。薬と酒で弱まっていた屈強な騎士の身体はダレスが押しただけで簡単にた折れ込んでしまう。 涙を流しながら呆然とするウルソンの腕を掴むと、ダレスはどこからか鎖の付いた何かを取り出した。さすがに驚いて顔を上げたウルソンを無視してダレスは掴んだ手首をあっという間に頭上でまとめ上げ、ベッドに取り付けられた金具に鎖の先を引っ掛けた。

「こういうのが好きな子、結構多いんだ。兄上の店の商品で試しに使えと貰った拘束具。さすがの僕も、まさかウルソンに使う日が来るとは思わなかったけど」

 楽しげに話すダレスだが、目元は全く笑っていない。

「、っ!、解いて、下さい・・・っ!」
 
 ガチャッ!ガチャッ!
 拘束を解こうともがく。
 この程度のかわいい拘束など、簡単に外せる・・・。いつものウルソンなら。少し動いたせいで薬が完全に回った。この拘束が手首を締め付ける感覚すらも身体を震わせる。

「ゃっ、ん...は、ふ...。」

 ダレスの指先がやさしくウルソンの頬を撫でた。端整な顔立ちが近づき彼、独特の甘い香りに呑まれる。

 恋する人との接吻なのに・・・。

 ウルソンの胸を充満するのは悦びではなく、深い後悔と悲しみだった。

 僅かに呼吸を求めた隙に、舌が入り込み接吻キスが深くなる。専属騎士から溢れる止めどない涙でダレスの頬も濡れていく。
 器用な指先はウルソンの身体をまさぐりながら、バスローブの紐を緩める。熱い手が素肌を撫でる、甘い刺激に屈強な男は身はじった。

 自分はなんて我が儘なのだろうと、ウルソンは思う。きっと、これは彼の慈悲だ。こんな大男が身の程知らずの恋をしていて可哀想だ、と思ったダレスの情けなのだろう。念願だった恋しい人に触れて貰える、それなのに・・・。

『こんな形で、抱かれたくない。』

 ウルソンは精いっぱいの力で拘束された腕を解こうと、泣きながら抵抗した。

「いや...、解いて...ぇ。解いて...くださ、い...グスッ、俺は、いい...ですから、部屋に、戻らせて...ぇ、」

 チッ、とダレスから舌打ちが聞こえる。

「ふざけるなよ...、ウルソン。」

「...?!、、ヴっ、ぁっ、痛!」

 途端に首を掴まれ、強く噛まれた。
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