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攻略:ウェルギリウス
フィアンセ様、俺を嫌わないで
しおりを挟む俺を担ぎ上げたウェルは、そのままズンズンと歩き、あっという間に俺の部屋の前まで来た。正直、距離が近すぎて死にそう…。に、匂いが、体温が、呼吸が、死ぬっ!
「鍵を開けろ。」
ぶっきらぼうにウェルが言う。
だが、俺はぶんぶんと首を横に振った。
するとウェルの額には、明らかな怒りが浮かび上がる。
綺麗な蒼い目が鋭い眼光に変わって俺を追い詰めようと睨む。
怖い!王子様の顔怖い。
でも悪いが、開られないんだウェル。
だって、開けられないに決まってるんだっ。
誰も入らない、入れないスタンスで過ごしていた部屋には色んな物があるのだ。そう、色んな物が…‼ 主に最近、俺がハマっているアレ。俺の新しいオトモダチ。毎夜遊ぶ彼らを清潔に保つことはあっても、引き出しにしまうことは無い。寝室に一度入れば、部屋中でお出迎え状態なのだ!誰に見られたってマズイ部屋さ!
「お、送ってくれてありがとうなウェル。もう、ここまでで大丈夫だぞぉ。ささ、もう今夜はお帰りに……」
人生史上最もぎこちない笑顔で、俺は王子様の帰宅を促す。
「………ほぅ」
すると、ウェルも片目をピクピクさせながら満面の笑みを向けてきた。
「ダメダメダメダメだぁぁああああ‼‼」
この程度の鍵、王子様には簡単に開けれてしまうそうだ。静止も虚しく、ウェルは部屋へと強行突破。俺は、情けなくウェルのお御足にしがみついて引き止めた。俺の絶叫が寮内に響き渡る。絶望的すぎる。でも、まだ大丈夫。寝室に入らないままでいてくれれば!あっ、待って。ウェルが俺の部屋に…? う、ウェルが俺の部屋にいるっ、、えっ、あっ、わあーーー(死)
もう俺の脳はパンク寸前。情報過多。
「人の気配は無いみたいだな。これから呼ぶつもりだったのか、それともこれから来るのか。どちらにせよ、ソイツを早くここに呼ぶんだな。オレのものに手を出したんだ……、重刑は免れないぞ。」
「な、んのはなし?」
「しらばっくれるつもりか。いい度胸だな、フラン。」
「へっ、え…、わっ、あ、そっちは!」
ああっ!寝室の方はダメっ!だめぇ~!
俺の腕を掴み、寝室の扉を勢い良く開けたウェルは固まった。そんで、しばらく辺りを見渡すと、無言で俺をベッドに投げた。柔らかい布に受け止められる。体重でボフンっと布が沈む。それと同時に俺の身にボタボタと塊が降ってきた。硬いが少し弾力のある塊達。そう、これは俺の新しいトモダチ達だ。腹や胸の上、顔の直ぐ側、シーツ中に散りばめられた男根を模した卑猥な玩具。俺は、今度こそ羞恥心で死にそうになった。今度はいつもと違う熱さを顔中に感じる。耳、あっつい。もう、なんか泣きそうだよ、俺ぇ。
「クソッ、こんなものを使って。」
「ぅ、あ、ごめん、なさい……」
思わず、理由もなく謝罪してしまう。
ウェルが呆れたように息を吐く。
あ、どうしよ。俺、嫌われた?
気持ち悪いって思われたよな、絶対そう。
だって、こんな男が一人でケツ弄って、玩具使って、誰だって引く。
うわ、好きな人に知られるって、こんな最悪なんだ…。
そんで嫌われるって、こんな……。
「ゔ、ぁっ…、ごめ、ごめんなさっ、おれ、おれ。」
「フラン?」
俺の視界はいよいよ歪み始め、とんでもない絶望感に目頭が熱くなった。胸の中がモヤモヤして、ぐちゃぐちゃになって、喉の辺りがつかえる。もう、だめだ。全然だめ。こんなん俺、泣いちゃうもん。だって、前世も今世も初めてなんだ。人を好きになるのは。
「ぉれ、こんな、知らなくて…ぅうっ、ふっ、」
「し、しらない?」
「うぇると、シてから、おれ、へんなったぁ…、お前の、せーだもん。ううっ、うぇっ、おまえの、せいぃ。」
「オレのせい……、オレとシてから……」
そう、全部お前のせい。
お前とセックスして、ケツが気持ちいいこと知って。
そんで、お前がカッコいいのとか、優しいのとか、全部、キラキラして見えて。
お前が誰かに笑いかけると苦しくて、誰かに触れると胸が痛い。
でも、目が合うと嬉しくて、ドキドキする。
声を聞くと、触られると、腹の奥がジーンって熱くなって眠れなくなる。
「ウェル、おれ、びょーきなんだよぉ。おまえ、見てると、腹の奥、欲しくなる…っ。だから、おれ、ひとりで…、ひとりで、これつか、使ってぇ…ぅうっ、」
ぐすんっ、ぐすんっ、、。
俺のばーか。なんで全部言うかな。
俺なんてただの悪役だし。
この世界が悪役転生モノだとしても、俺みたいなデカイ受け見たことねぇし。
だから俺の気持ちは、きっとどうにもならない。
どのルート辿ったて、もはやゲームオーバーなんだよ。
「オレを見ると…、欲しくなるのか。」
「……そう、だ」
「誰かと使っているのか?」
「ズビッ…、誰と使うんだよ。俺が(一人で)遊んでんの信じられねぇの?」
「じゃあ自慰の最中は、オレのことを考えていたのか?」
「……ッ。ご、ごめっ、、んぅっ」
また。また、キスだっ。
どう、しよう。なんで、こんな事するのか分かんねぇ…。
意地悪、なの、か?
また、口の中全部ドロドロにされるのかと思って身構えたけど、唇はすぐに離れてしまった。物足りないような名残惜しいような、そんな気持ちが芽生える。少し、追ってしまうほどにはキスに喜んでしまっている。俺は涙に歪んだ視界をゴシゴシと腕で拭った。ぱちぱちと瞬きをしてピントを調整すると、ウェルが手の甲で口元を抑えていた。俺から距離を置いて。
「ウェル…? 顔、赤いけど、大丈夫か。具合、悪い…?」
俺、そんなに気持ち悪かった?!
そんな、自分からキスしておいて拭うって何だよ。
うわっ、せっかく涙拭いたのに、またっ。
「ぁあ、もう……。君はズルいなぁ…。」
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