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男だらけの異世界転生〜恋編〜
可愛い弟
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兄だなんて一度も思ったことない。
今日一番のショックに俺は呆然とする。
喉が渇くのを感じながら、不自然な笑みで「え」と反射的に聞き返した。
傷付いた表情を隠せずにいると、アシュルは顔を歪めて、幼い子どものように言葉を紡ぎだした。
「無理矢理になんてしたくないよ、僕。兄さんが大事なんだ。兄さんを壊したくない! でも、兄さんが僕に意地悪をするから、僕も兄さんに酷いことをしなくちゃいけなくなるんだ。兄さんのせい! 僕がしてきたこと全部が兄さんのためだったのに!兄さん…、フランドール、愛してるよ。ねぇ、愛してる。フランドール! 僕を弟にしないでよ、僕はフランドールの弟になんてなりたくないっ。僕の『愛してる』は、家族の『愛してる』じゃない。フランドールを愛してるんだよっ、愛してる!愛してる!愛してる!」
フランドール。
兄さんではなく、フランドールと呼ばれる。
アシュルの頬をボロボロと涙が伝っていく。
俺の周りは、なんでか泣き虫なやつばっかりだ。
俺だって、ここまで来てアシュルの言っている『愛してる』がわからないわけじゃない。でも、俺は気が付いてしまったんだ。ベェルのおかげで、俺はやっと自分の気持ちに気が付いた。この世界に来てからずっと、ありえないと閉じ込めていたけれど。俺にも大切に想う人がいる。家族や友人とは違う、大切な気持ち。
「…アシュルは、俺の可愛い弟だよ。」
「っ!いやだ!! いや! フランドール、ぼくをみてっ」
悲痛な叫びのような声。
がっしりと肩を掴む手は大きく、愛しい弟の成長を感じた。
「ごめん、アシュル。俺ね、大切な人がいるんだ。」
俺は、アシュルをまっすぐと見据えて言った。
俺もアシュルみたいに、ちゃんと自分の気持ちを伝えないとな。
「………! いやだぁっ」
「でも、これだけは忘れないでくれ、俺はアシュルが大切だ。素直で頑張り屋で大好きな可愛い弟。俺も愛してるよ、アシュル。」
「ぅ、ううっ、うわあああん! いやだっ、いやだあああっ!」
アシュルは俺の上に馬乗りのまま、まるで駄々っ子のように大きな声で泣き出した。部屋に響き渡る泣き声。いやだ、いやだと繰り返し、うわんうわん泣いている。
さて、どうしたものか…。
俺は取り敢えず起き上がって、アシュルを抱き込めた。あぐらの上に座り込む形で肩を震わせるアシュル。大きくなったと言えど、まだ俺のほうが断然でかい。すっぽりとまではいかないが、収まってしまうサイズの弟の頭や背を撫でた。
「よしよし、ははっ。」
やっぱり、俺の弟は可愛い。
俺の胸元はアシュルの涙と鼻水ですっかり濡れてしまった。
「ぅうう、酷いよ……。振った相手を抱きしめるなんて最低だっ」
「これしか知らないんでな」
「……。」
やっと顔をあげた銀色の前髪を掻き分ける。真っ赤になった瞳に睨まれて、俺は眉を下げた。涙を拭って、鼻水を拭って、まだまだ子どもな若い肌をむにむにとして堪能する。こんなに綺麗なんだ、そりゃみんな夢中になるよな。俺の弟は随分モテるらしい。お噂はかねがね。人気だってのは知ってたけど。まぁ、弟の諸事情まで口を挟むことは無いだろう。この世界の貞操観念は、正直分からんしな。
「アシュルも男の子だったんだなぁ…。」
すると突然、ガバっと音を立ててアシュルは俺から離れた。それからすぐに立ち上がると、スタスタとベッドから下りて歩き出すと何事もなかったかのように部屋から出ていった。
「えっ、、アシュル~?」
アシュルを抱きしめていた俺の手は空中をはくはくと掴んだ。
今日一番のショックに俺は呆然とする。
喉が渇くのを感じながら、不自然な笑みで「え」と反射的に聞き返した。
傷付いた表情を隠せずにいると、アシュルは顔を歪めて、幼い子どものように言葉を紡ぎだした。
「無理矢理になんてしたくないよ、僕。兄さんが大事なんだ。兄さんを壊したくない! でも、兄さんが僕に意地悪をするから、僕も兄さんに酷いことをしなくちゃいけなくなるんだ。兄さんのせい! 僕がしてきたこと全部が兄さんのためだったのに!兄さん…、フランドール、愛してるよ。ねぇ、愛してる。フランドール! 僕を弟にしないでよ、僕はフランドールの弟になんてなりたくないっ。僕の『愛してる』は、家族の『愛してる』じゃない。フランドールを愛してるんだよっ、愛してる!愛してる!愛してる!」
フランドール。
兄さんではなく、フランドールと呼ばれる。
アシュルの頬をボロボロと涙が伝っていく。
俺の周りは、なんでか泣き虫なやつばっかりだ。
俺だって、ここまで来てアシュルの言っている『愛してる』がわからないわけじゃない。でも、俺は気が付いてしまったんだ。ベェルのおかげで、俺はやっと自分の気持ちに気が付いた。この世界に来てからずっと、ありえないと閉じ込めていたけれど。俺にも大切に想う人がいる。家族や友人とは違う、大切な気持ち。
「…アシュルは、俺の可愛い弟だよ。」
「っ!いやだ!! いや! フランドール、ぼくをみてっ」
悲痛な叫びのような声。
がっしりと肩を掴む手は大きく、愛しい弟の成長を感じた。
「ごめん、アシュル。俺ね、大切な人がいるんだ。」
俺は、アシュルをまっすぐと見据えて言った。
俺もアシュルみたいに、ちゃんと自分の気持ちを伝えないとな。
「………! いやだぁっ」
「でも、これだけは忘れないでくれ、俺はアシュルが大切だ。素直で頑張り屋で大好きな可愛い弟。俺も愛してるよ、アシュル。」
「ぅ、ううっ、うわあああん! いやだっ、いやだあああっ!」
アシュルは俺の上に馬乗りのまま、まるで駄々っ子のように大きな声で泣き出した。部屋に響き渡る泣き声。いやだ、いやだと繰り返し、うわんうわん泣いている。
さて、どうしたものか…。
俺は取り敢えず起き上がって、アシュルを抱き込めた。あぐらの上に座り込む形で肩を震わせるアシュル。大きくなったと言えど、まだ俺のほうが断然でかい。すっぽりとまではいかないが、収まってしまうサイズの弟の頭や背を撫でた。
「よしよし、ははっ。」
やっぱり、俺の弟は可愛い。
俺の胸元はアシュルの涙と鼻水ですっかり濡れてしまった。
「ぅうう、酷いよ……。振った相手を抱きしめるなんて最低だっ」
「これしか知らないんでな」
「……。」
やっと顔をあげた銀色の前髪を掻き分ける。真っ赤になった瞳に睨まれて、俺は眉を下げた。涙を拭って、鼻水を拭って、まだまだ子どもな若い肌をむにむにとして堪能する。こんなに綺麗なんだ、そりゃみんな夢中になるよな。俺の弟は随分モテるらしい。お噂はかねがね。人気だってのは知ってたけど。まぁ、弟の諸事情まで口を挟むことは無いだろう。この世界の貞操観念は、正直分からんしな。
「アシュルも男の子だったんだなぁ…。」
すると突然、ガバっと音を立ててアシュルは俺から離れた。それからすぐに立ち上がると、スタスタとベッドから下りて歩き出すと何事もなかったかのように部屋から出ていった。
「えっ、、アシュル~?」
アシュルを抱きしめていた俺の手は空中をはくはくと掴んだ。
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