【完結】ぶりっ子悪役令息になんてなりたくないので、筋トレはじめて騎士を目指す!

セイヂ・カグラ

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男だらけの異世界転生〜俺たち勇者一行編!〜

これが所謂、パーティーメンバー

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 リリーとウェルによって集められた人材がぞろぞろと部屋に入ってきて驚いた。リアゼル奪還作戦を行うメンバーは、どうやらウェルとリリーだけではないないらしい。目の前に現れたのは、意外にも知っている者ばかりだった。

「ベェルシードくんと貴方と殿下は長い付き合いでしょう。何かと頼れる相手だと思ってね。」

 ベェルは、以前からウェル側に付いていたらしい。ウェルが学園を卒業すれば、国の情勢を担うことになる。その際、側近として王子の右腕となる者たちが必要になる。その選別は、すでにはじまっていたようだ。

「兄さん、やっと会えたね!久しぶり!」
「貴方の弟くんは、優秀な魔法使いだね。おまけに彼は、君の為なら猪突猛進で扱いやす…ゴホンッ。第一部からの引き抜きは、アシュルくんだけだよ。」

 あ、アシュル⁉
 俺のかわいい弟を危ないところへ連れて行こうと言うのか…!
 あ、いや、でも、たしかにアシュルの魔法は優秀だし、頭も良い。
 リアゼルを助けるために、アシュルが必要だ…。
 俺は、心配な気持ちをぐっと抑えた。

「それから、キルトくん。彼はウィチルダ家のご子息でね、御存知の通り情報に強い。今回すでに、彼の情報が役立っている。最も重要な役割を担ってもらっているんだ。」

 ここに来て、まさかのキルト…!
 しかもすでに情報を提供しているだと⁉ 
 俺をからかう悪趣味な男が、仕事のできるやつだと知り、複雑な気分。

「そして、レオン。レオンに関しては、殿下の忠実な下僕……、と言ったところかな?」
「下僕じゃない、側近候補。」

 レオンには、あまり良い思い出がない。
 ただ、ウェルのことを崇拝している様子はひしひしと伝わる。
 レオンは、ウェルに死ねと言われたら迷いなく死ぬだろう。
 それぐらい、ウェルだけには忠実だ。

「最後に、彼を紹介する。」

 リリーがそう言った青年は、一人だけ知らない人物だった。
 俺と似たような体格、筋肉質な身体、青い髪、なんだかすごく強そう。どこかで見たことあるような…。確か、同じ騎士科じゃなかったか?

「ドラルク・フォーカー。第一軍、軍隊長グレイス・フォーカー殿のご長男だよ。」

 グレイス・フォーカーって、あのグレイス・フォーカー⁉
 国軍最強と言われる、あのグレイス・フォーカー⁉
 200人をひとりで蹴散らし、隣国との戦をあっという間に終わらせたというあのグレイス・フォーカー⁉

「や、やあ、久しぶり。覚えているかな、俺のこと。」

 気まずげに差し出された手、困ったように下がった眉。凛々しい体格には見合わない、気の弱そうな声でドラルクが言う。俺は、すぐさま握手を返し、物凄い勢いで記憶を辿った。どこで、会ったっけ…。えーと、えーと、うーんと、まずい、出てこない。でも確かに会ったことがある気が。

「第一部のときの剣術試合で戦ったんだ。俺、フランドールくんにボロ負けしてさ……。」
「剣術の試合……? あっ!もしかして、あのときの‼」

 そう、あれは『男だらけの異世界転生~第一部・学園編~』の「剣術の授業」のこと。あの時、戦った青年のことは何となく印象に残っている。つまらない試合ばかりでぼんやりしていたら、彼との戦いが始まって、本気を出せる瞬間が訪れたのだ。あの時、少しだけ楽しかったのを覚えている。

「思い出してくれたか。」
「ああ! あの頃よりずっと鍛え上げられていて、気が付かなかったよ。」
「君に負けたのが悔しくてさ。」

 これで、全てのメンバーが揃った。
 ただリアゼルを探して奪還しに行くだけじゃないのだ、ということをはっきりと感じる。
 一体、この国で何が起きているのだろうか。
 
「あの、失礼ですが、お聞きしたいことが…。」そう言って、ベェルが口を開き、俺の浮かべた疑問を投げかけた。

「ああ、それはな『感』だ。」

 王子様は、あっけらかんとした答え方でそう言った。
 「感」という言葉に皆の顔が不安げに歪む。
 すると、まぁまぁと言いながらリリーが間に入ってきた。
 殿下は時々、言葉が足りないのです、とかなんとか。

「王家の血脈の中で極稀に生まれることがあるのだよ。お方がね…。」

 王家に稀に生まれる感の鋭い者。その人物の『感』は、ほぼ100%当たる。その呼び名は、救世主、勇者、賢者…。長い間、ハールオン家が王として君臨し続けられる理由でもある。ただの感ではない、命中率の高い予言のようなもの。それらの感は、時に自身や国だけでなく、世界をも救うことがある。

「さて、ということで…。フランドールくん、君にお仕事だよ。」
「えっ、俺ですか?」
「そう、この男を誘惑して欲しい。」
「誘惑……?」
「ハニートラップ…って言ったほうがわかりやすいかな。」
「はにー、とらっ……えっ、えぇええええ⁉」

 
 目の前にひらひらと出されたのはスキンヘッドのいかにも悪そうな男の写真。
 この男は、ブルボというらしく、盗賊の頭らしい。人身売買、奴隷商、強盗、人道外れた行いをしているが、何故か捕まらない。その理由は、どうやら人身売買の裏に教会が関わっているかららしい。何のためかは分からないが教会は子どもを集めている。ブルボは教会から多額の金を得て、おまけに罪から逃れている。あまり公にはされていないが、教会には魔力を一時的に奪う魔導具があるそうだ。その魔導具をブルボが持っている…。そうして、魔力の強い者を誘拐し、教会に売り付けているのだとか。

(ちなみに全てキルトが集めた情報なんだってさ。想像以上に優秀な人材ではないか、キルトよ…。)

「貴方は剣術において、魔法を使わない。それでいて、学園の剣術ランキングは一位。適任すぎるほど適任でしょう?」
「それは別に構わないのですが、問題は『誘惑』の方です! 必要ありますか⁉ ていうか、そもそも美少年でもないし、華奢でもない俺みたいなのにできっこないですよっ!」
「ブルボはガードが固くてね、懐に入るのが難しい。生憎、時間がない…。それに、ブルボは好みの相手にすぐ手を出したがる変態野郎だ。貴方、ブルボの好みにピッタリハマっているのです。背が高く逞しい、ツリ目がちな、暗い髪の若い青年…。貴方のことかと思いましたよ。他の者にさせてもいいですけれど、きっとすぐに犯されて終わりでしょうね。魔力を奪われては、なにもできませんから。」

 リリーからつらつらと並べられた理由に、俺は項垂れる。
 ほとんど、脅しみたいじゃないか。
 ああ、でも確かに適任。
 まるで仕向けられているみたいにな。
 魔法至上主義のこの世界。
 魔法が使えないとなると、戦える人間は限られてくる。

「ダメです…。フランドール様にそんなことさせられません!」
「兄さんが、男に媚びる、だと? 許せない…、許せない…!!」
「そうだ…!こんなこと、やはりさせられない!代わりを立てろ!」

「うう~、みんなぁっ。」

 ベェル、アシュル、ウェルが口々に意義を申し立ててくれる。
 俺は、思わず涙を浮かべた。




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