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男だらけの異世界転生〜俺たち勇者一行編!〜
消えたリアゼル
しおりを挟む第二部に上がり、騎士科を専攻した俺は、毎日楽しく剣を振るっていた。
今日も今日とて、剣術授業!
響き合う剣の音が心地よい!
今日の授業内容は、模擬試合だ。
まだまだ順番が来ない俺は、ただいま休憩中。
騎士科において大切なことは、体力、筋力、剣術力。皆、貴族だから魔力はそれなりにあるので、進級早々、剣術の基礎を徹底的に叩き込まれた。剣術は、個性が目立つ。回復魔法を上手く使う者、魔法で筋力を増加させる者、攻撃魔法と剣術を組み合わせたり、剣に魔法を纏わせたり、様々だ。
まぁ、剣術に魔法を使わない奴なんてほとんどいない。
少なくとも、筋力増加くらいの魔法はみんな使っている。
魔法を用いた剣術、そんなチートなもの俺にはできない。魔法を扱うには魔力量も、もちろん大切だ。だが、それ以上に大切なのは扱い方。いくら魔力があっても、扱い方を知らなければ意味がない。馬がいても、馬に乗れなきゃどこにも行けないように、魔力もセンスが無ければ持ち腐れる。それに騎士科に必要なのは魔法の上手さよりも、剣術の中に魔法をどう組み込むかというものだ。
魔法はセンス!
そして俺には、そのセンスもない。
魔力量が少ないと言えど、俺だって一応それなりに魔力はある。
だがオレが使えるのは、せいぜい日常生活で使うくらいの初級魔法と少しばかり効き目の良い回復魔法。
ということで、俺は剣術で魔法を使うことを諦めた。
むしろそのほうが、剣術に集中できて俺には合うらしい。
「フランドールくぅん♡」
猫撫で声で、俺に擦り寄ってくる橙色頭。俺の背後に立つソイツは、俺に抱き着くと肩に顎を乗せる。コイツ、キルトが騎士科を志望していたとは知らなかった。同室であり、学科も同じとなると俺たちは常に共にいる。そして、そのキルトは最近やたらと距離が近い。距離が近いのは、前々から変わりないが…、何と言うか、触り方がねっとり…? ベタベタくっついて離れないこの男の様子を見るに、どうやら甘えん坊らしい。きっと俺に心を開ききっているのだろう。ますます犬感が増してきている…。柴犬?、いや、プードルか。
「キルトくん、いい加減暑苦しいから離れてくれないか?」
「なんでぇ? 僕、フランドールくんに甘えたい気分なんだけど、ヨシヨシしてくれないの?」
「俺は、お前の飼い主じゃ無いぞ。」
「じゃあ、恋人だ♡」
「ばか言うな。」
ふざけるキルトの額にデコピンを食らわせてやる。すると、キルトは大げさに「いたーい!」と叫んだ。額を抑えて、こちらを睨んでくる。
「大げさだと思っているでしょう!」
ああ、もちろん。
どう見たって、大げさだ。
俺はジトーーっ、と薄目を向けてふんっと鼻で笑った。
「ーーーっ、君、普通の人間より力が強いこと忘れないでよね! そのうち可憐な少年たちを抱擁で潰しかねない!」
「へーへー。キルトは可憐な少年じゃないから大丈夫だろう? ほら、抱きしめてやる。」
「っ、ばーか!ばーか!」
「言語力が死んでるぞ、ははっ、あははっ。」
俺が腹を抱えて笑うと、キルトは顔を赤くして「ばーか!」と叫ぶ。
最近では、キルトをからかうのも楽しい。
キルトだって時々、俺をからかうのだから、おあいこ。
「ごめんごめん、痛かったな。」
「むっ、じゃあ、ココにキスしてよ。」
「へっ?」
ああ、あと、最近のキルトはアザといんだ。
「んっ!」と言いながら額を近づけてくるキルトに、しどろもどろになる。
キスしてくれるまで許さない、とか口を聞かない、とか言うものだから思わず眉が下がった。
まるで子どもが駄々をこねるみたいにキスをしろとしつこい。
早くしろと急かすキルトに、俺はとうとう、少し膝を折って背を屈めた。
どこを見たら良いのか分からず、瞼をぎゅっと固く閉じ額であろう場所に唇を押し当てた。
ふに………っ。
ふに?
「んふふっ、フランドールくんってば、どうしてそんなに騙されやすいのかな。」
「へっ、あ、な……っ‼」
「ごちそうさま。じゃ、僕、試合行ってくるね~。」
俺の唇を奪った男は、自分の唇をちろりと舐めると、試合場に向かって颯爽と走っていった。
俺は、呆然と唇を押えて立ち尽くした。
えっ、……ナニシテンノ??
それが、つい先程のこと。
そして俺は今、王子様に呼び出されていた。
事の発端は、リアゼルが誘拐されたことだった。
「リアゼルが誘拐された…⁉」
突然、そう告げられたのだ。
「ああ、リアゼルの消えた場所には、あの日と同じ魔法陣が残されていた。」
あの日とは、思い出したくもないあの日のことだろう。
おかしい、十分おかしいことは良くわかる。
「リアゼルを何のために…、もしかして、神子だからか? だとすると、怪しいのは教会……って、ありきたりすぎるか。」
ブツブツ呟いて、ありそうな展開を想像してみる。
ウェルは俺の見解を聞いて、淡く瞳を輝かせ、瞼を開いた。
「さすが、オレの愛しい人だ……。」
最近増えた、このようなウェルの俺に対する独り言は聞こえないふりをしている。
「まさにその通り、俺も教会を疑っている。」
リアゼルの誘拐について、王は動かないらしい。あれほど、自分と婚約させたがっていたのに様子がおかしいとウェルギリウスは思う。王が関与しているのか、はたまた王の近くに悪魔がいるのか…。こうなれば王に仕える全ての者たちは、使えないも同然。リアゼルがただの人間なら、ウェルギリウス自ら探したりなんて手間なことしない。だが、リアゼルにはこちら側についてもらわなきゃいけない理由がある。ここ数年の嫌な動き、その地底に潜む何かが顔を出しはじめたのだ。利用するようで悪いが、リアゼルの方も王国を利用する気でオレに近づいたのだろう。だからオレたちは、案外互いに好都合なわけだ。
「意外だったな。これを聞いたら、すぐ飛び出していくかと思っていた。」
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……薄情者だと思われただろうか?
でも、取り乱したって仕方がないのは事実で。
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「ふふっ、嬉しいことを言ってくれるね。ありがとう。」
はわぁ……っ。
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それに以前よりも色気が増している。
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「フラン!!」
「んぁー?」
「くっ、リリー!! フランはオレのだからな! その、何とも言えぬ空気を消せ! オレの嫁に毒が回る‼」
「そんなことを言われましても……。」
「この浮気者!!」
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は…? はぁ??
またそれか!
前にも同じことを言われた気がする。
そん時も、すげぇ~ムカついた!
「だからなぁ、お前にだけは言われたくないっ!」
ウェルの肩を掴み返し、戦闘態勢に入ろうとした時、リリーがパンパンと手を叩いた。
「さぁ、そろそろ本題に入りますよ。何せ、我が国の大切な国宝が盗まれたのですから。」
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