2 / 65
男だらけの異世界転生〜幼少期編〜
思い出せ!
しおりを挟む
ボンヤリとした夢の中。俺は心待ちにしていた、ジムへの入会をするべく、向かう道中に運動がてら走っている。もう、目の前にはジムがある。さあ、早く入会をしなければ! マッスルマッスル! そう自分を鼓舞し、走り続ける。信号機のない横断歩道、眼の前に現れたジムに夢中で気が付かなかった。車道は赤だから大丈夫、問題ない。そう思って、そのまま横断歩道を走り渡ったのが運の尽き。大きめのバイクが突っ込んできて見事に衝突した。原付なら、なんともなかったかもしれない。今更、そんなことを考えたって仕方がないのだが。すぐに救急車で運ばれる。けれど、一向に病院に着かない。救急隊員の話によると、受け入れ先の病院が無いらしい。
ああ、もうダメなんだろうな。
なんとなくだけど、わかる。
自分が死ぬということが。
闇に包まれる意識の中、思い出したのはBLで最近流行りの「異世界転生」妹のために夜なべして読んだBL小説はいつも異世界転生ものだった。妹の好みは悪役令息へ転生物語。チート能力での処刑回避と、真の主人公パワーで愛される、ざまぁ展開。まさか、死ぬ直前に思い出す走馬灯がBLのことだなんてな。
▼
まさか、まさかね……?
再度目覚めたその空間は、先程と変わらない派手な部屋。さっきの夢…、いや記憶とこの現状にヒヤリと嫌な汗が伝う。
心配そうに俺の手を握り、覗き込むのは、男らしく彫りの深い顔立ちとブラウンの髪。それから、揺蕩う美しい紺色の髪の女性のような男性。ブラウンの髪の男は、旦那様と呼ばれ、紺色髪の男は、奥様と呼ばれている。奥様の髪に光が当たると、青く輝いて神秘的だ。しばし、ぼんやりとその髪を眺めてしまう。
「フランっ、大丈夫なの?」
「気分はどうだ? フランドール。」
フランドール。
その名前を俺は、よくよく知っている。
「はぁ……。やっぱ、そういうことなのか…?」
こうなってしまえば、もう受け入れざるを得ない。自分が死んだのは確かで、今俺がフランドールという少年の身体になっていることも確か。そして、俺には前世の記憶がある…。
(つまりこれは、異世界転生。)
『うん! 大正解だよ!』
「は⁉」
俺が脳内で一人呟くと、どこからか声が聞こえてきた。少年のような声が、高らかに俺の脳内の呟きに返事をする。
『時間がないから簡単に説明するね。ちょっと天界の手違いで、君の人生を満期前に終了させてしまったので、この世界に飛ばした。ちなみに君は今、10歳。君が死ぬ間際に見ていた走馬灯から一番近しい世界を選んだんだ。喜ぶと良いよ! こんなこと、滅多に無いからね。天界からのお詫びと大サービス♡ じゃあ、もう二度と君とは話せないけれど、見守っているからね。くれぐれも僕に話しかけたりしないように! 頭のおかしい子だと思われて監禁されちゃうかもっ? 新しい人生、楽しんで!』
ちょ、ちょっと待て待て。
天界の手違い? 人生が満期前に終了⁉
天界からの大サービス♡とやらで俺は生きている。
んで、俺の走馬灯のせいでこの現状⁉
喜べって言われても、できないぞ!
つい、声を出して先程の声を呼び止めたくなったが、ぼんやり聞こえた「監禁されちゃうかもっ?」という恐ろしい言葉を思い出して留まる。おかげで、ひとりで百面相だ。そんな俺に旦那様、と呼ばれた男が心配そうに覗き込んでくる。
「フランドール、大丈夫か? 具合が良くないのなら、まだ眠っていると良い。パパもママも、君が高熱で三日も目を覚まさないから心配で…、心配でっ、フランちゃあああん。」
イケオジが突然、声を上げて泣き出した。涙で顔をグチョグチョにしながら、俺の頬にすり寄ってくる。折れそなほど強い力で抱きしめられ、俺が苦しげな声を漏らすと慌てて離れた。鼻水と涙で濡れた顔を、奥様とやらいう美しい男に真っ白なハンカチで拭われている。
「ああ、ありがとうダーリン。すまない。」
「まったく、お前はいつまで経っても子どもみたいだな。」
「ルルーシュ…。」
「フレンディ、んっ、ちょっとフランが見てる。やめろ!」
「良いじゃないか。見せつけてやろう。」
良くねぇです。
ご両親がラブラブなのは良いことだが、10歳の男の子には、いささか刺激的すぎるのではないだろうか? まぁ、中身は二十歳過ぎの男だけど。この通り、見てわかるようにフランドールのご両親は少々クセがある。
「父上、母上。もう少し、休みたいのですが……。」
この騒がしい夫夫は、一旦部屋から追い出してしまおう。でないと、ゆっくり考え事もできない。お二人のお部屋で仲良く楽しんで頂こう。そう思って、俺はBLゲームで覚えた貴族風の言葉で告げた。
が、それが失敗だった。
「ちちうえ…、ははうえ…、だと?」
「ふ、フラン…、どうしちゃったの?」
二人の顔が青褪めた。奥様こと、ルルーシュはふるふると手を震わし涙を浮かべはじめる。それを見た、旦那様ことフレンディはルルーシュをぎゅっと抱きしめた。悲痛な表情を浮かべて。
「だ、大丈夫だ。きっと大丈夫だ。」
「フレンディ…。どうしよぅ…。」
「一旦、医師に見てもらおう。フランドールも休みたいと言っているし、医師が来るまで寝かせてやろう。」
「そ、そうだな…。」
失敗した、そう思ったときには遅かった。
ああ、もうダメなんだろうな。
なんとなくだけど、わかる。
自分が死ぬということが。
闇に包まれる意識の中、思い出したのはBLで最近流行りの「異世界転生」妹のために夜なべして読んだBL小説はいつも異世界転生ものだった。妹の好みは悪役令息へ転生物語。チート能力での処刑回避と、真の主人公パワーで愛される、ざまぁ展開。まさか、死ぬ直前に思い出す走馬灯がBLのことだなんてな。
▼
まさか、まさかね……?
再度目覚めたその空間は、先程と変わらない派手な部屋。さっきの夢…、いや記憶とこの現状にヒヤリと嫌な汗が伝う。
心配そうに俺の手を握り、覗き込むのは、男らしく彫りの深い顔立ちとブラウンの髪。それから、揺蕩う美しい紺色の髪の女性のような男性。ブラウンの髪の男は、旦那様と呼ばれ、紺色髪の男は、奥様と呼ばれている。奥様の髪に光が当たると、青く輝いて神秘的だ。しばし、ぼんやりとその髪を眺めてしまう。
「フランっ、大丈夫なの?」
「気分はどうだ? フランドール。」
フランドール。
その名前を俺は、よくよく知っている。
「はぁ……。やっぱ、そういうことなのか…?」
こうなってしまえば、もう受け入れざるを得ない。自分が死んだのは確かで、今俺がフランドールという少年の身体になっていることも確か。そして、俺には前世の記憶がある…。
(つまりこれは、異世界転生。)
『うん! 大正解だよ!』
「は⁉」
俺が脳内で一人呟くと、どこからか声が聞こえてきた。少年のような声が、高らかに俺の脳内の呟きに返事をする。
『時間がないから簡単に説明するね。ちょっと天界の手違いで、君の人生を満期前に終了させてしまったので、この世界に飛ばした。ちなみに君は今、10歳。君が死ぬ間際に見ていた走馬灯から一番近しい世界を選んだんだ。喜ぶと良いよ! こんなこと、滅多に無いからね。天界からのお詫びと大サービス♡ じゃあ、もう二度と君とは話せないけれど、見守っているからね。くれぐれも僕に話しかけたりしないように! 頭のおかしい子だと思われて監禁されちゃうかもっ? 新しい人生、楽しんで!』
ちょ、ちょっと待て待て。
天界の手違い? 人生が満期前に終了⁉
天界からの大サービス♡とやらで俺は生きている。
んで、俺の走馬灯のせいでこの現状⁉
喜べって言われても、できないぞ!
つい、声を出して先程の声を呼び止めたくなったが、ぼんやり聞こえた「監禁されちゃうかもっ?」という恐ろしい言葉を思い出して留まる。おかげで、ひとりで百面相だ。そんな俺に旦那様、と呼ばれた男が心配そうに覗き込んでくる。
「フランドール、大丈夫か? 具合が良くないのなら、まだ眠っていると良い。パパもママも、君が高熱で三日も目を覚まさないから心配で…、心配でっ、フランちゃあああん。」
イケオジが突然、声を上げて泣き出した。涙で顔をグチョグチョにしながら、俺の頬にすり寄ってくる。折れそなほど強い力で抱きしめられ、俺が苦しげな声を漏らすと慌てて離れた。鼻水と涙で濡れた顔を、奥様とやらいう美しい男に真っ白なハンカチで拭われている。
「ああ、ありがとうダーリン。すまない。」
「まったく、お前はいつまで経っても子どもみたいだな。」
「ルルーシュ…。」
「フレンディ、んっ、ちょっとフランが見てる。やめろ!」
「良いじゃないか。見せつけてやろう。」
良くねぇです。
ご両親がラブラブなのは良いことだが、10歳の男の子には、いささか刺激的すぎるのではないだろうか? まぁ、中身は二十歳過ぎの男だけど。この通り、見てわかるようにフランドールのご両親は少々クセがある。
「父上、母上。もう少し、休みたいのですが……。」
この騒がしい夫夫は、一旦部屋から追い出してしまおう。でないと、ゆっくり考え事もできない。お二人のお部屋で仲良く楽しんで頂こう。そう思って、俺はBLゲームで覚えた貴族風の言葉で告げた。
が、それが失敗だった。
「ちちうえ…、ははうえ…、だと?」
「ふ、フラン…、どうしちゃったの?」
二人の顔が青褪めた。奥様こと、ルルーシュはふるふると手を震わし涙を浮かべはじめる。それを見た、旦那様ことフレンディはルルーシュをぎゅっと抱きしめた。悲痛な表情を浮かべて。
「だ、大丈夫だ。きっと大丈夫だ。」
「フレンディ…。どうしよぅ…。」
「一旦、医師に見てもらおう。フランドールも休みたいと言っているし、医師が来るまで寝かせてやろう。」
「そ、そうだな…。」
失敗した、そう思ったときには遅かった。
121
お気に入りに追加
1,961
あなたにおすすめの小説
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど?
お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる