魔王様は、子どもを拾って自分好みに育てるようです。

セイヂ・カグラ

文字の大きさ
上 下
6 / 9

※狡い人

しおりを挟む
「はっ︙ヴァル、スっ、やだっ、もう苦しいっ︙︙ひあっ。」

 天蓋の下りた魔王様の広いベッド。響き渡るのは悲鳴のような嬌声。薄暗い部屋には頭がくらくらするほど甘い匂いが立ち込める。どうにかなってしまいそうな疼き、けれど身を捩ることすらできない。男はただ苦しげに助けを求めていた。何故、こうなっているのかヴェルタルクには分からなかった。唯一分かるのは自分が拾い育てた愛子に、恋しい男に裏切られたのだということ。






 首輪を着けられた途端、体の力が抜け動けなくなった。悪魔を無抵抗にする天界の魔導具らしい。ベッドに倒れ動かない自分の身体に困惑しているうちに、いつの間にかヴァルスの手には華やかな硝子細工の香。なんだろうと、様子を見ているとその香の蓋が開けられた。一番に感じたのは甘い匂い、そして体の熱が高まる感覚がした。徐々に呼吸を荒げる魔王様に、ヴァルスは劣悪な笑みを浮かべて呟いた。

「本当に効くのか。」
 
 楽しげに香を眺めたあと、ヴァルスはあろうことかそれを、ヴェルタルクの喉に無理矢理流し込んだ。匂いだけでもクラクラとして呼吸すらままならないのに。飲み込んでしまった喉が熱い。次第に身体が疼きだし、ヴェルタルクは悶えた。

「はあっ︙︙なにっ、なんでぇ︙。」

 触れたこともない蕾が、奥が、何かを求めて収縮する。身体の熱が高まり、異常なほど心拍数が上がっている。胸の先端が張る感覚、そこはツンと立ち上がっていた。ただの毒ではない。ガウンの感触すらビクビクと感じてしまう。動かない身体では隠すことすら叶わないヴェルタルクの陰茎は腹に付きそうなほど反り立っていた。気が狂いそうなほどの疼き︙、これはきっと媚薬だ。

「ははっ、あんたのかわいい此処、何もしてないのに涎垂らしてますよ。」
「やっ︙、見るなぁっ︙︙。」
「恥ずかしいですね。魔王様ともあろう人が男の前でおっ勃てるなんて。ああ、乳首真っ赤になってる︙。」
「ひうっ︙! はっ︙あぁ!」
「へぇ、気持ち良いですか?」
「やだっ、やらぁ︙︙。」

 クスクスと笑いながらヴァルスは、ガウンの上から乳首を撫でた。布の上を指先がくるくるとなぞる。けれど、欲しい刺激は与えられない。先端の周りをただ焦らすように撫でていく。動かない身体は、自分で触れることを許さない。じれったい動きにヴェルタルクは涙を浮かべて唇を噛み締めた。陰茎は痛いほど張り詰めている。

 イきたいっ︙︙。触って欲しい、こんなんじゃ、おかしくなってしまう。

「ヴ、ヴァルス︙っ。」
「︙っ! そんな物欲しそうな声で呼ばないで下さい。」

 名前を呼ぶとヴァルスは何故か、ふいっと顔を背けてしまう。名前を呼ばれたのが嫌だったのだろうか。そんなにも、オレを嫌っていたのか。こんな風にオレを嘲るほどに。快楽や刺激を求める脳は、もはや落ち着きのある正常な思考を失っている。ジワジワと目頭が熱くなり、涙が溢れてきた。もう、感情を我慢できない。

「なんでっ、なんでこんなことをするんだ︙。ヴァルス︙︙ゔぁるすぅ︙、オレがそんなに嫌いか? オレは、お前を拾った日から、お前を我が子のように愛してきたつもりだ︙。」
「︙︙我が子、ね。僕はアンタのこと親だと思ったことなんて無い。」
「︙︙っ!」
「今更、飽きた邪魔だって捨てようとしたのはアンタでしょ。僕のこと嫌いになったのは、ヴェル様の方だ。」
「ちがっ︙︙うぐっ!」

 無表情でそう答えたヴァルスは、荒々しくガウンの紐を解くと、ヴェルタルクをうつ伏せにさせた。腰を高かかく上げさせられる。この体勢では、秘部がヴァルスに丸見えだ。それなのに、疼く後蕾は欲しがるようにパクパクとする。

「いあっ! ぁあっ、なにっ。」

 いきなり冷たい何かが垂らされたと思えば、ずぷりと中に何かが入り込んできた。容赦なく埋められた長く骨ばったそれは、おそらく指。まさかと思い、焦っていると、温かな肉の中で探るように動き出した。拡げるように円を描く、腹の中にはヌルヌルとした感覚。その指がとある一点を見つけ、止まった。そして、狙いを定めぐりぐりとそこを押しはじめた。

「やっ、ヴァ、ルスっ! だめ、ぁあっ、あっあっ︙、なんか変っ、そこっ押しちゃっ、やだっ。」
「使い込んでると思ってた割には、締りが良いな。あの男は、あんまり触ってくれなかったの? 可哀想に︙︙でもこれからは僕がいっぱい弄ってあげます。」
「やっ、こわいっ︙︙ゔぁるすっ、助けて、あっああっ、やっ、あっ。」
「怖い? じゃあ、抱きしめてあげる。気持ち良いよね? ヴェル様、ほら、『気持ち良い』だよ。言って、言ったら怖くなくなる。」
「はっ、ぁっ︙︙? きもち、いいっ︙。」
「うんっ、上手に言えたね。よしよし。」
「ああっ、ヴァルスっ! いいっ、イッちゃう︙はっ、ああっ、あっ、うんんんっ‼」

 甘く優しいヴァルスの声に頭がぼんやりとしているうちに、押され続けた腹の内側からびりびりとした快感が走った。きゅうきゅうと指を締め付け、身体が勝手に快楽を貪る。味わったことのない絶頂に身体が絶えずビクビクと痙攣する。はぁはぁと呼吸を整えていても余韻で震えてしまう。気が付けば三本もの指が入り込んでいた。

 指が抜かれ、ガチャリと音がする、どうやら首輪が外されたようだ。動けるようになったはずの身体はまだ重だるい。仰向けにされると、潤む瞳にヴァルスの金髪が映った。魔界ではほとんど見ることのない、その美しい髪にヴェルダルクは手を伸ばした。酷く眠たい︙︙。

 ああ、なんて良い男なのだろう。
 不器用だけど、優しくて、稀に見れる笑顔がかわいい。
 オレは、この天使が愛しかった。
 いつか自分の脅威になると分かっていた、それでも良かった。
 けれど、嫌われるなんて想像はしていなかった。
 恋はきっと呪いだ。
 だってこんなにも、苦しい。

 ゆっくりと穏やかにヴェルダルクは睡眠へと落ちていった。




「本当に、狡い人だ︙。
 ヴェル様、アンタが僕をどれだけ嫌っても僕は貴方を逃さない。もう他の誰にも、触れさない。全てはあの日、僕を拾って連れ去った貴方が悪い。だから、僕だけの魔王様になってもらう。一生、逃さない︙︙。」

 愛しげにヴェルダルクの黒髪を撫でながら、ヴァルスはそう言った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

じょうだんですよね?

66
BL
ヤンデレストーカー攻め×喋れない受け

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

メランコリック・ハートビート

おしゃべりマドレーヌ
BL
【幼い頃から一途に受けを好きな騎士団団長】×【頭が良すぎて周りに嫌われてる第二王子】 ------------------------------------------------------ 『王様、それでは、褒章として、我が伴侶にエレノア様をください!』 あの男が、アベルが、そんな事を言わなければ、エレノアは生涯ひとりで過ごすつもりだったのだ。誰にも迷惑をかけずに、ちゃんとわきまえて暮らすつもりだったのに。 ------------------------------------------------------- 第二王子のエレノアは、アベルという騎士団団長と結婚する。そもそもアベルが戦で武功をあげた褒賞として、エレノアが欲しいと言ったせいなのだが、結婚してから一年。二人の間に身体の関係は無い。 幼いころからお互いを知っている二人がゆっくりと、両想いになる話。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

平穏なβ人生の終わりの始まりについて(完結)

ビスケット
BL
アルファ、ベータ、オメガの三つの性が存在するこの世界では、αこそがヒエラルキーの頂点に立つ。オメガは生まれついて庇護欲を誘う儚げな美しさの容姿と、αと番うという性質を持つ特権的な存在であった。そんな世界で、その他大勢といった雑なくくりの存在、ベータ。 希少な彼らと違って、取り立ててドラマチックなことも起きず、普通に出会い恋をして平々凡々な人生を送る。希少な者と、そうでない者、彼らの間には目に見えない壁が存在し、交わらないまま世界は回っていく。 そんな世界に生を受け、平凡上等を胸に普通に生きてきたβの男、山岸守28歳。淡々と努力を重ね、それなりに高スペックになりながらも、地味に埋もれるのはβの宿命と割り切っている。 しかしそんな男の日常が脆くも崩れようとしていた・・・

処理中です...