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20話 黒ウサギ
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なんで、御曹司が忠犬のキスについて知っているんだ。
悟や悠馬と別れてから、蓮はまたイライラとしていた。頭の中で悟の言葉が何度も繰り返される。どうして最近はこんなにも苛立つんだろう。
“ぎんじろうくんは俺にいつか迎えに来てねと言ったよ”
“はじめての接吻をあげるってね”
自分を好きだと言ったくせに、他の男にそんなことを言う。最近の苛立ちは、確実に銀二郎のせいだ。結局、忠犬じゃなくて、あっちこっちに尻尾を振るただの犬だったんじゃないか?
ブーーブーー
どうしようもない苛立ちにモヤモヤしていると、スマホの着信音が鳴る。何気なく画面をみると“佐野銀二郎”と書いてある。今時フルネームで自分の名前を登録するやつが居るか、とツッコミたくなるが佐野銀二郎とはそう言う人間だ。
表示されている内容を見る、既読をすぐに付けてしまうのは何か嫌だった。
〈蓮くん、久しぶりです。この間、借りた上着を返したくて、今日会えるかな?返すだけだから、ちょっとの時間で構いません。〉
長ったらしい文。蓮の知る限り、セフレから送られてくるメッセージとは小刻みに切れていて、何度も着信音がうるさいほど鳴るもの...。彼のメッセージはいつも一度の送信に要点が収まっている。
忠犬から“会いたい”という連絡が来たのは、思い出す限り今日がはじめてじゃないか?蓮は胸の苛立ちが薄くなったことに気が付かないまま、返信の内容を考える。
しばらくして、アプリを開くと短い文を分けて送った。
〈今日3講までだから〉
〈終わったらいつものとこ〉
あの日から、何となく距離を取っていたことを忘れて。訳もなく過剰に女と遊んでいたことも忘れて。何となく募った苛立ちも忘れて。
∇
蓮からの返信に銀二郎は安堵する。上着を返すだけとは言え、自分から会いたいと連絡をしたことに今さら恥ずかしくなって後悔した。
蓮は行きなれたホテルへ向かう道を歩いていた。途中、いつも見るアニメグッズの小さなショップが目に入る。
ショップの前にはズラリとガチャが並べられている。蓮にアニメを見る趣味はないし、漫画も人気な作品くらいしか知らない。かと言って、別に嫌いという訳でもない、興味がないだけだ。
だから、並べられたガチャの内容も全く分からない。
ただ、何となく目に入ったウサギが気になった。何のアニメキャラかなんて知らないし、かわいいと思うわけでもない。
「うわ、400円もすんの?ガチャってこんな高かったけ」
ガラガラ、ガラガラ、、、ゴトッ
懐かしい音と手触りがする、気が付けば回していた。落ちてきた、カプセルを取り出して開ける。わりとリアルな形をした黒いウサギのストラップ、身体は固いが尻尾の毛だけファーが付いておりモフモフしている。
ふと、銀二郎の黒髪を思い出す。
それを掻き消すように黒ウサギをポケットに突っ込んで、また歩き出す。自然と早足になって、気が付けばいつものホテルだ。部屋を選ぶと、その番号を銀二郎へメッセージで送る。
何度もここで銀二郎を弄んできたのに、、、そわそわとする自分の胸。蓮は困惑をシャワーで洗い流そうと冷たい水を浴びた。
悟や悠馬と別れてから、蓮はまたイライラとしていた。頭の中で悟の言葉が何度も繰り返される。どうして最近はこんなにも苛立つんだろう。
“ぎんじろうくんは俺にいつか迎えに来てねと言ったよ”
“はじめての接吻をあげるってね”
自分を好きだと言ったくせに、他の男にそんなことを言う。最近の苛立ちは、確実に銀二郎のせいだ。結局、忠犬じゃなくて、あっちこっちに尻尾を振るただの犬だったんじゃないか?
ブーーブーー
どうしようもない苛立ちにモヤモヤしていると、スマホの着信音が鳴る。何気なく画面をみると“佐野銀二郎”と書いてある。今時フルネームで自分の名前を登録するやつが居るか、とツッコミたくなるが佐野銀二郎とはそう言う人間だ。
表示されている内容を見る、既読をすぐに付けてしまうのは何か嫌だった。
〈蓮くん、久しぶりです。この間、借りた上着を返したくて、今日会えるかな?返すだけだから、ちょっとの時間で構いません。〉
長ったらしい文。蓮の知る限り、セフレから送られてくるメッセージとは小刻みに切れていて、何度も着信音がうるさいほど鳴るもの...。彼のメッセージはいつも一度の送信に要点が収まっている。
忠犬から“会いたい”という連絡が来たのは、思い出す限り今日がはじめてじゃないか?蓮は胸の苛立ちが薄くなったことに気が付かないまま、返信の内容を考える。
しばらくして、アプリを開くと短い文を分けて送った。
〈今日3講までだから〉
〈終わったらいつものとこ〉
あの日から、何となく距離を取っていたことを忘れて。訳もなく過剰に女と遊んでいたことも忘れて。何となく募った苛立ちも忘れて。
∇
蓮からの返信に銀二郎は安堵する。上着を返すだけとは言え、自分から会いたいと連絡をしたことに今さら恥ずかしくなって後悔した。
蓮は行きなれたホテルへ向かう道を歩いていた。途中、いつも見るアニメグッズの小さなショップが目に入る。
ショップの前にはズラリとガチャが並べられている。蓮にアニメを見る趣味はないし、漫画も人気な作品くらいしか知らない。かと言って、別に嫌いという訳でもない、興味がないだけだ。
だから、並べられたガチャの内容も全く分からない。
ただ、何となく目に入ったウサギが気になった。何のアニメキャラかなんて知らないし、かわいいと思うわけでもない。
「うわ、400円もすんの?ガチャってこんな高かったけ」
ガラガラ、ガラガラ、、、ゴトッ
懐かしい音と手触りがする、気が付けば回していた。落ちてきた、カプセルを取り出して開ける。わりとリアルな形をした黒いウサギのストラップ、身体は固いが尻尾の毛だけファーが付いておりモフモフしている。
ふと、銀二郎の黒髪を思い出す。
それを掻き消すように黒ウサギをポケットに突っ込んで、また歩き出す。自然と早足になって、気が付けばいつものホテルだ。部屋を選ぶと、その番号を銀二郎へメッセージで送る。
何度もここで銀二郎を弄んできたのに、、、そわそわとする自分の胸。蓮は困惑をシャワーで洗い流そうと冷たい水を浴びた。
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