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19話 小さな焦り
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「女の子達から助けてあげたのになんだよ、その目は」
ちくちくと睨む蓮の視線に悟は目を細めて小言を言う。
「別に。つーか、遊び人の御曹司様が本命できたって?まさか︙あの馬鹿犬って言う訳じゃないだろ?」
蓮の挑発的な言い方に悟は苛立つことなく、ただ楽しくなる。
「うん、そのまさか。俺、ぎんじろうくんに本気なの」
一瞬、眉を寄せた蓮だったが、すぐに「へぇ」と笑って見せた。
あの、馬鹿な忠犬が自分以外に余所見をするなどありえない。自分からの連絡が途絶えただけで、銀二郎はあきらかに落ち込んでいる。だが︙銀二郎からの連絡も来ていない、思い返せば誘うのはいつも自分だった。
なにやら考え込んでいる蓮に悟は追い討ちをかけるように言う。
「ぎんじろうくんとキスした」
「は?」
視線が明らかに動揺する。その反応に蓮もファーストキスについて、何かしら知っているのを確信する。キスを嫌がる銀二郎に疑問があったか、もしくはキスについて何か言われたか、大方そんなところだろう。少なくとも銀二郎とのキスに蟠りがあることは確実だ。
「ま、未遂だけど。」
「・・・ふざけんなよ、悟。」
わかりやすく苛立ちを露にする蓮。
「何? 蓮には関係ないでしょ。俺、本気なんだよ。だからもう、ぎんじろうくんと遊ぶのは、このまま終わりにして欲しい。」
御曹司様は随分と自信ありげなものだ、と蓮は心の中で悟を笑った。“銀二郎は自分に夢中”蓮にはそれに関して絶対的自信がある。それに銀二郎は金で靡くような人間でもない。銀二郎は蓮のいいなりだ、寄りによって自分ではなく悟を選ぶなんてことはありえない。だから、焦る必要などないはずだ。
蓮は拳を握りしめた、相手へのマナーとして爪はいつでも整えられているが、それでも強く握り込めば掌に刺さる。関係ない・・・、たしかにそうだ。
「ぎんじろうくんが俺に“いつか迎えに来てね”ってさ。“はじめての接吻をあげる”って言ってくれたんだ。俺は本気で、ぎんじろうくんの恋人になるつもりだよ。俺なら、ぎんじろうくんを傷付けない。」
大分、大袈裟に切り貼りをして言ってしまったが別に構わないだろう。遠回しに伝えても自分の本気さは、この男には分からない。
あの子が欲しい。
突然、ふわりと大きな男に肩を組まれる。悟は情けなくビクッと肩を震わせた。しっかりとした肉付き︙いや筋肉のある腕に締め付けられる。けして、自分の背が低いと言うわけではない。この男の背が高すぎるだけだ。
「ギンジはたしかにそう言ってたけど、ちょっと盛りすぎじゃないか? 荻野くん。」
でた、銀二郎くんの保護者!
あの日、御曹司である自分にパフェを奢った上、怒りながらも律儀にお礼を言って帰って行った、悟にとって珍しいタイプの人間2号。なんだかんだ、悟は悠馬のことも気に入っている。
ああ、もちろん友人としてね?
「あ、おはようございます。お義母さん」
「お義母さんじゃねぇわ!」
何やらお怒りな悠馬に冗談で返す。別に悟は蓮をよく思っているわけでもないのに︙自分の本気さが、伝わっていないのだろうか?と悟は不思議に思った。
しかし、疑問はすぐに解かれる。
「ギンジの居ないところで、変なこと吹き込むな。そもそもの現状を掻き乱すな、またギンジが落ち込んだらどうする!」
「すみません、お義母さん」
だから、お義母さんじゃねぇ!!とまたプリプリする悠馬に悟は感心する、本当に銀次郎のことを大事にしているんだと。悟の目に悠真は、ますます銀二郎の母のように見えてくるのだった。
ちくちくと睨む蓮の視線に悟は目を細めて小言を言う。
「別に。つーか、遊び人の御曹司様が本命できたって?まさか︙あの馬鹿犬って言う訳じゃないだろ?」
蓮の挑発的な言い方に悟は苛立つことなく、ただ楽しくなる。
「うん、そのまさか。俺、ぎんじろうくんに本気なの」
一瞬、眉を寄せた蓮だったが、すぐに「へぇ」と笑って見せた。
あの、馬鹿な忠犬が自分以外に余所見をするなどありえない。自分からの連絡が途絶えただけで、銀二郎はあきらかに落ち込んでいる。だが︙銀二郎からの連絡も来ていない、思い返せば誘うのはいつも自分だった。
なにやら考え込んでいる蓮に悟は追い討ちをかけるように言う。
「ぎんじろうくんとキスした」
「は?」
視線が明らかに動揺する。その反応に蓮もファーストキスについて、何かしら知っているのを確信する。キスを嫌がる銀二郎に疑問があったか、もしくはキスについて何か言われたか、大方そんなところだろう。少なくとも銀二郎とのキスに蟠りがあることは確実だ。
「ま、未遂だけど。」
「・・・ふざけんなよ、悟。」
わかりやすく苛立ちを露にする蓮。
「何? 蓮には関係ないでしょ。俺、本気なんだよ。だからもう、ぎんじろうくんと遊ぶのは、このまま終わりにして欲しい。」
御曹司様は随分と自信ありげなものだ、と蓮は心の中で悟を笑った。“銀二郎は自分に夢中”蓮にはそれに関して絶対的自信がある。それに銀二郎は金で靡くような人間でもない。銀二郎は蓮のいいなりだ、寄りによって自分ではなく悟を選ぶなんてことはありえない。だから、焦る必要などないはずだ。
蓮は拳を握りしめた、相手へのマナーとして爪はいつでも整えられているが、それでも強く握り込めば掌に刺さる。関係ない・・・、たしかにそうだ。
「ぎんじろうくんが俺に“いつか迎えに来てね”ってさ。“はじめての接吻をあげる”って言ってくれたんだ。俺は本気で、ぎんじろうくんの恋人になるつもりだよ。俺なら、ぎんじろうくんを傷付けない。」
大分、大袈裟に切り貼りをして言ってしまったが別に構わないだろう。遠回しに伝えても自分の本気さは、この男には分からない。
あの子が欲しい。
突然、ふわりと大きな男に肩を組まれる。悟は情けなくビクッと肩を震わせた。しっかりとした肉付き︙いや筋肉のある腕に締め付けられる。けして、自分の背が低いと言うわけではない。この男の背が高すぎるだけだ。
「ギンジはたしかにそう言ってたけど、ちょっと盛りすぎじゃないか? 荻野くん。」
でた、銀二郎くんの保護者!
あの日、御曹司である自分にパフェを奢った上、怒りながらも律儀にお礼を言って帰って行った、悟にとって珍しいタイプの人間2号。なんだかんだ、悟は悠馬のことも気に入っている。
ああ、もちろん友人としてね?
「あ、おはようございます。お義母さん」
「お義母さんじゃねぇわ!」
何やらお怒りな悠馬に冗談で返す。別に悟は蓮をよく思っているわけでもないのに︙自分の本気さが、伝わっていないのだろうか?と悟は不思議に思った。
しかし、疑問はすぐに解かれる。
「ギンジの居ないところで、変なこと吹き込むな。そもそもの現状を掻き乱すな、またギンジが落ち込んだらどうする!」
「すみません、お義母さん」
だから、お義母さんじゃねぇ!!とまたプリプリする悠馬に悟は感心する、本当に銀次郎のことを大事にしているんだと。悟の目に悠真は、ますます銀二郎の母のように見えてくるのだった。
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