【本編完結】君に都合のいい体

セイヂ・カグラ

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11話 確信犯 (モブ微※)

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「ぃ...いえっ!そんな、毎回ありがとうございます。でも今日は、もうお腹がいっぱいで、、」
 一応、一度お断りをするけど、仲田さん僕が何か食べない限り帰らないし・・・。
 そう思っていたら、今日は仲田さんが選ぶと言った。

「この生クリームとはちみつのクレープにするよ」

 ありがとうございます、と言って伝票に書き込む。それから仲田さんは、ウィンナーコーヒーと日替りパスタを頼んだ。





「・・・はぁ」少し、疲れてしまった。仲田さんの相手を終える頃には、6時かな。今日は蓮くんが来てくれたし、頑張ろう!ため息を吐いてしまった自分の頬をペチッと叩く。

「大丈夫?仲田さんの接客、俺が変わるよ。何だったら、出禁にしたって良いんだから」
 “お客様は神様”なんて時代は疾うに終わっている。高木の店にとって、第一に大切なのは従業員だ。仲田の銀二郎への様子に、危機感を感じはじめている。

「いえ、そんな!大丈夫です。ありがとうございます」
 銀二郎は首を振って、笑顔を作る。

「何かあったら、すぐ言うんだよ」

「はい」

 ギンチャンのおっとりした、なんというか騙されやすそうな感じが人気の理由なんだけど・・・危機感が無さすぎて、ちょっと心配になるんだよな。

 銀二郎は、クレープとコーヒーを持って仲田の席へ向かった。蓮は二人の会話に、スマホをいじりながら興味のない振りをした。



「お待たせ致しました、生クリームとはちみつのクレープとウィンナーコーヒーです。日替りパスタはもう少々お待ちください、、あっ」
  
 そう言いながら、テーブルに並べる銀二郎の手を掴むように仲田が触れた。背筋にゾワりと寒気が走る。緊張により、顔が熱くなる。

「お客様、うちの子たちはお触り厳禁なんですっ。ね、何だったら、店長の俺が手を握って差し上げますよ~?」
 すかさず、冗談目かして高木が間に入り制止する。仲田は一瞬、苛立ちを見せたが、すぐに笑顔を戻し「わるかったね」と言った。

「高木店長!オーダー入ります」

「今行くー!」と大きな声で返事をしたあと、高木は銀二郎の肩に手を置く。
「ごめんね、、何かあったらすぐ行くから。嫌なことされたら、呼ぶんだよ」
 耳元で小さく、そう言い走って行った。



「そこに座りなさい」

 施され、仲田の前のイスに座る。銀二郎が長袖のシャツを捲ると、鍛えられた腕が露になる。血管の浮き出るその腕に周囲の客も夢中になった。

「ぎんじろうくんの口は大きいから、一口で食べれるんじゃないか?ほら、一口で食べてみて」

「そんな、さすがにちょっと、無理だと、、」
 生クリームのたくさん入ったクレープは、筒状に丸められ、結構な分厚さがある。とても一口では入りそうにない。

「無理??ぎんじろうくんのために頼んだんだよ」銀二郎に苛立ちが向けられる。

「っ...あっ、ダメです、、」
 脚に嫌な感覚が走る。布が掛けられたテーブルの下は見えにくい。撫でる手が、腿の内側に伸びる。

「できるよね?」
「・・・はい」

 それを聞いた仲田の手は、ぱっ、と離れ「嬉しいな」と笑顔が向けられた。


「はっ...むっ、んっぐっ、」
 こんなことなら、はじめから仲田さんのお願いを聞いておけば良かった・・・。大きなクレープを口いっぱいに頬張りながら、銀二郎は後悔する。触られた感覚が、まだ残っている。

「な、...仲田ふぁ..ん...やっはり、むり...ほぅっ、で、」
 
 このクレープを一口で食べるのには、やっぱり無理がある。銀二郎の口端から生クリームが漏れる。頬張る苦しさに潤む瞳、口の周りに付く白いクリームと大きく開けられた口に咥えられる筒状のクレープ。それを見た客たち、そして仲田がは言うまでもないだろう。


「無理?ダメだよ、ぎんじろうくん。」

「はふっ...ふぁい...むっぐっ、、」

「ちゃんと...食べないと」

「...んっっ...?!..はぅ、はっ、やっ」

 ま、また、!仲田さん、また僕の脚触ってる。でも、どうしよ...、高木さん、忙しそうだ、迷惑かけたくない。それに、周りのお客さん、、、蓮くんに知られるの嫌だ。自分でちゃんと言わなきゃ。

「や、です...な、仲田さっ」



「おい」
 低い声が聞こえ、仲田の手が途端に止まった。腕を捕まれ、高く引き上げられている。

「気持ち悪ィんだけど、オッサン」

「・・・蓮くん」
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