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3話 三本木 蓮

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 俺にとってセックスは娯楽だ。

 カラオケ行ったり、映画見たり、本読んだり、酒飲んだり、そういうのと同じ。

 俺は楽しいからセックスする。
 

 「抱かれたい」と言われて面白そうだったから、気まぐれに男を抱いてみた。そしたら、すぐに噂が広まって、何人かの男が俺に「自分も抱かれたい」と言い寄ってきた。それから一週間も経たないうちに、俺のセフレには男が増えた。

 ある日、俺より図体のデカイ男が見下ろしながら顔を真っ赤にして「セフレにしてください」と言ってきた。
 
 俺は「おもしろそうだから、良いよ」と思ったままを口にする。

 図体のデカイ男は、たかがセフレなのに嬉しそうだった。セフレになったくらいで「ありがとうございます」なんてあんまり言われたことない。抱いたら彼女ヅラ?してくるかな、めんどくさいタイプだったら切ればいいかと連絡先を交換した。

 男の名前は佐野 銀二朗。
 
 ホテルに呼べばどんな時でも絶対に来る、忠犬だ。

 めんどくさいタイプになるかと思ったが、自分の立場をわきまえているらしい。忠犬はプライベートで一切関わってこない。ただ、暑苦しい視線を俺に向けてくるだけだ。

 そんな忠犬が今日はいつも一緒にいる、更にデカイ男に尻尾を振っていた。そのデカイ男が忠犬の頬に触れる。

 なついた犬が他のヤツにまで尻尾振ってたら、おもしろくないだろ? 

 だから、俺は声を掛けてみることにした。肩を抱き、ソイツに見せつける。ソイツは有田 悠馬というらしい。俺を完全に警戒してる・・・過保護だな。

 忠犬はいつものように「蓮くん」とは呼ばなかった。「三本木くん」なんて、よそよそしくて、少し苛立った。
 困らせてやろうと思い「俺たちトモダチだろー?」と話しかける。

「あ、その、気が付かなくて」なんてシラを切るのがつまらねー。

「俺のこと見てたでしょ?」というとあっという間に顔を赤くする。ほら、見ろ。俺のこと好きでしょうがないんだよ、銀二朗は。

 俺はわざと有田の前で「いつもの所で待ってるから」と忠犬に言った。すぐに顔が赤くなるのはコイツの癖なんだろ、そういうところは気に入っている。



 そのあと、遠くから見ていると忠犬が有田に唇を撫でられて頬を染めていた。


 気に入らねぇ。

 

 いつも通りちゃんとホテルに来た忠犬にキスをしようとする。銀二朗は、いつもキスを拒む。単に嫌いなのだと思っていた...。

「キス、嫌いなの?」と聞くと

「初めてのキスは好きな人としたい」と返ってきた。意味わかんねぇ、お前、俺のこと大好きじゃん。

 俺のこと好きって感情、駄々漏れで...。

 は?

 何?俺を誰かの代わりにしてるってこと?

 ...誰かって、もしかして、有田か..?


 犬のくせにムカつく。


 俺はその日、銀二朗をイかせなかった。「相手も自分も気持ち良く」をモットーにしている俺なのに。なんか無性にイライラして、イかせる気になれなかった。

 そのまま、いつも通り先に帰る。

 ホテル代はアイツが払いたいというので、払わせている。俺の金は減らないし、アイツもそれで満足している様子、WinWin。

 
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