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有田悠馬②
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次の日
講義が終わり、お昼を食べようと食堂に向かった。安くてボリューミーな学食は、体格の大きい二人にとって最高の食事だ。
「お前さ、男を好きになるつっても、もっとマシなやつ選べなかったの?」と、悠馬は眉を寄せて言う。あんな、ヤリチンのどこが良いのか、俺にはサッパリ分からない。
「マシって...僕は蓮くんが好きだから、、」
「おいおい、そんな落ち込むなよ」
銀二郎より少し背の高い珍しい友人は、落ち込む青年の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「あっ、ちょっ悠馬くんっ、髪の毛、」
「お前が利用されたり傷付いたりしないか心配なんだよ。ま、相手が良い人なら、誰を好きになってもいいけど」
「...?悠馬くんは、やさしいね」
「別にそんなんじゃねーよ」
本当に、ギンジはどこまでも鈍感だ。
「銀二朗っ」
聞き覚えのある声がする。肩を組むように、声の主が銀二郎を引き寄せた。その青年を見て銀二郎は驚いて、動揺のまま声を出した。
「...れ、三本木くん、、、?」
蓮くん、なんで急に...?!
「なんで、俺に声掛けてくんねーの?」
「...え?」
「俺たちトモダチだろー?」
どうしたんだろうか、大学で話したことなど、ほとんど無い。突然、話しかけられた銀二郎は戸惑いを隠せない。
「あ、その、気が付かなくて」と咄嗟に、そう誤魔化してみる。悠馬に対しても蓮に対しても、どうすべきか、頭が真っ白でパニックしそうだ。
「えー?嘘だ、俺のこと見てたでしょ?」
バレてる...!また、顔が熱くなる。訳もわからずオドオドとしていると、悠馬が蓮から銀二郎を引き剥がした。大きな力強い手に掴まれた蓮の身体は、安々と移動させられる。
「おい。ギンジ、いつからコイツと話すようになったんだよ」問い詰めるような声が、銀二郎を現実に引き戻す。
「えっ?...あ、そのっ」
銀二郎は重なる隠し事を思い出して、しどろもどろになった。一体、何からどこまで話せばいいのか。
「最近だよねー、ぎんじろーくんから話しかけてくれて」と蓮くんが言う。
お願いだからもう喋らないで、なんて思っていると、再び蓮に引き寄せられた。鼓動が早くなり、逃げようとするが、蓮は銀二郎の肩を抱いたまま離さない。身長差から、少し前屈みになる。
「、、、ギンジから?」と悠馬が訝しげに、恐ろしい表情を向けた。警戒や威嚇、と言ったところだろうか。
「そ、そうなんだっ。悠馬くん、その、隠しててごめんね...?」
そんな雰囲気に気が付いた銀二郎は蓮を庇うようにそう言った。
「それは別にいいけど」
悠馬くん、すっごく怪しんでいる!
いや、確かにやましい関係だけどっ!そんな、本当のこと全部なんて絶対に言えない。
「俺、三本木 蓮。法学部」
蓮が手を差し出す、それを悠馬が握り返す。
「知ってる。俺は有田佑馬、同じ法学部だ」
よろしく、と言って手を離す。
「ぎんじろーくん、授業終わったら、いつもの所で待ってるから」
“いつもの所”ってホテル...っ!
銀二郎は、より一層頬を赤らめると、親友に表情を隠すため下を向く。それから「わかった」と小さく返した。
嵐のようにやってきた蓮は、じゃーね、と笑顔で言って去って行った。
_________
蓮に会ってから、悠馬はとても不機嫌になってしまった。なんとも言えない、空気がチクチクと刺す。まるで、親にイタズラがバレて叱られた時のような気持ちで銀二郎は恐る恐る声帯を震わせた。
「ゆ、悠馬くん...」
「あ?」
ひぃぃぃ!!僕が大きいのは図体だけなんだ...!怒った悠馬くんってすごく怖い。
「ごめんなさい」と反射的に謝る。
「はぁ・・・、隠してた理由は?」
「僕と友達だとか大学で知られたら、れ、三本木くんに迷惑掛かっちゃうかなって」
「迷惑?」
「その、あんまり知られたくない?みたいで」
「はぁ?!なんだよ!そんなの友達って言えんの?」
悠馬が大きな声で叫ぶ。怒りが頂点に達してしまったようだ。なんとも語弊のある言い方になり、失敗したと後悔する。
「悠馬くん、声っ」
「ありえねぇ。なぁ、お前やっぱ何か悪いことに巻き込まれてんじゃねーの?」
「そ、そんなことないよ!!」
悪いことしてる、、って気持ちはあるけど。
「嘘だな」
「え?」
「ギンジ、嘘付くとき下唇噛むんだよ。気付いてねーの?」
銀二郎は無意識に噛んでいた唇に痛みを覚える。気が付かなかった、自分にこんな癖があるなんて。
「あーあ、内出血になってる」
悠馬は不意に手を伸ばし、銀二郎の唇を指先で撫でた。
「っ...!」
悠馬くんって、僕より背高いし、かっこよくて...なんかちょっと、ドキドキしちゃう。こういう人間をチョロいと言うのだろうか。
「っギンジ、顔!俺にそんな顔すんなっ」
唇から指先が離れる。
「ご、ごめん!気持ち悪かったよね・・・!」
「そうじゃねーよ、俺が勘違いしそうになんの」
「?」何か変な言い方だ。
「とにかく、何かされたり、言われたりしたら俺にすぐ言えよ!」
「うん、ありがとう」
悠馬くんは心配性だ、でも優しくて。なんだか、そう、まるでお母さんみたい。
講義が終わり、お昼を食べようと食堂に向かった。安くてボリューミーな学食は、体格の大きい二人にとって最高の食事だ。
「お前さ、男を好きになるつっても、もっとマシなやつ選べなかったの?」と、悠馬は眉を寄せて言う。あんな、ヤリチンのどこが良いのか、俺にはサッパリ分からない。
「マシって...僕は蓮くんが好きだから、、」
「おいおい、そんな落ち込むなよ」
銀二郎より少し背の高い珍しい友人は、落ち込む青年の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「あっ、ちょっ悠馬くんっ、髪の毛、」
「お前が利用されたり傷付いたりしないか心配なんだよ。ま、相手が良い人なら、誰を好きになってもいいけど」
「...?悠馬くんは、やさしいね」
「別にそんなんじゃねーよ」
本当に、ギンジはどこまでも鈍感だ。
「銀二朗っ」
聞き覚えのある声がする。肩を組むように、声の主が銀二郎を引き寄せた。その青年を見て銀二郎は驚いて、動揺のまま声を出した。
「...れ、三本木くん、、、?」
蓮くん、なんで急に...?!
「なんで、俺に声掛けてくんねーの?」
「...え?」
「俺たちトモダチだろー?」
どうしたんだろうか、大学で話したことなど、ほとんど無い。突然、話しかけられた銀二郎は戸惑いを隠せない。
「あ、その、気が付かなくて」と咄嗟に、そう誤魔化してみる。悠馬に対しても蓮に対しても、どうすべきか、頭が真っ白でパニックしそうだ。
「えー?嘘だ、俺のこと見てたでしょ?」
バレてる...!また、顔が熱くなる。訳もわからずオドオドとしていると、悠馬が蓮から銀二郎を引き剥がした。大きな力強い手に掴まれた蓮の身体は、安々と移動させられる。
「おい。ギンジ、いつからコイツと話すようになったんだよ」問い詰めるような声が、銀二郎を現実に引き戻す。
「えっ?...あ、そのっ」
銀二郎は重なる隠し事を思い出して、しどろもどろになった。一体、何からどこまで話せばいいのか。
「最近だよねー、ぎんじろーくんから話しかけてくれて」と蓮くんが言う。
お願いだからもう喋らないで、なんて思っていると、再び蓮に引き寄せられた。鼓動が早くなり、逃げようとするが、蓮は銀二郎の肩を抱いたまま離さない。身長差から、少し前屈みになる。
「、、、ギンジから?」と悠馬が訝しげに、恐ろしい表情を向けた。警戒や威嚇、と言ったところだろうか。
「そ、そうなんだっ。悠馬くん、その、隠しててごめんね...?」
そんな雰囲気に気が付いた銀二郎は蓮を庇うようにそう言った。
「それは別にいいけど」
悠馬くん、すっごく怪しんでいる!
いや、確かにやましい関係だけどっ!そんな、本当のこと全部なんて絶対に言えない。
「俺、三本木 蓮。法学部」
蓮が手を差し出す、それを悠馬が握り返す。
「知ってる。俺は有田佑馬、同じ法学部だ」
よろしく、と言って手を離す。
「ぎんじろーくん、授業終わったら、いつもの所で待ってるから」
“いつもの所”ってホテル...っ!
銀二郎は、より一層頬を赤らめると、親友に表情を隠すため下を向く。それから「わかった」と小さく返した。
嵐のようにやってきた蓮は、じゃーね、と笑顔で言って去って行った。
_________
蓮に会ってから、悠馬はとても不機嫌になってしまった。なんとも言えない、空気がチクチクと刺す。まるで、親にイタズラがバレて叱られた時のような気持ちで銀二郎は恐る恐る声帯を震わせた。
「ゆ、悠馬くん...」
「あ?」
ひぃぃぃ!!僕が大きいのは図体だけなんだ...!怒った悠馬くんってすごく怖い。
「ごめんなさい」と反射的に謝る。
「はぁ・・・、隠してた理由は?」
「僕と友達だとか大学で知られたら、れ、三本木くんに迷惑掛かっちゃうかなって」
「迷惑?」
「その、あんまり知られたくない?みたいで」
「はぁ?!なんだよ!そんなの友達って言えんの?」
悠馬が大きな声で叫ぶ。怒りが頂点に達してしまったようだ。なんとも語弊のある言い方になり、失敗したと後悔する。
「悠馬くん、声っ」
「ありえねぇ。なぁ、お前やっぱ何か悪いことに巻き込まれてんじゃねーの?」
「そ、そんなことないよ!!」
悪いことしてる、、って気持ちはあるけど。
「嘘だな」
「え?」
「ギンジ、嘘付くとき下唇噛むんだよ。気付いてねーの?」
銀二郎は無意識に噛んでいた唇に痛みを覚える。気が付かなかった、自分にこんな癖があるなんて。
「あーあ、内出血になってる」
悠馬は不意に手を伸ばし、銀二郎の唇を指先で撫でた。
「っ...!」
悠馬くんって、僕より背高いし、かっこよくて...なんかちょっと、ドキドキしちゃう。こういう人間をチョロいと言うのだろうか。
「っギンジ、顔!俺にそんな顔すんなっ」
唇から指先が離れる。
「ご、ごめん!気持ち悪かったよね・・・!」
「そうじゃねーよ、俺が勘違いしそうになんの」
「?」何か変な言い方だ。
「とにかく、何かされたり、言われたりしたら俺にすぐ言えよ!」
「うん、ありがとう」
悠馬くんは心配性だ、でも優しくて。なんだか、そう、まるでお母さんみたい。
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