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はじまり
9話
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▼side ポルクス
メソ様は思春期なんだと思う。
最近のメソ様のおかしな行動にはもう慣れた…と言いたいところだけど正直、目に余る。
行動の何もかもが突飛で、僕たちは今まで以上に振り回されてばかり。
あの面倒くさい潔癖馬鹿真面目のメソ様が、最近では可愛げのある変態に成り果てている…。
僕たちはメソ様のこれを『思春期』と『反抗期』としてなんとか納得することにした。
「半径1メートル以内に入るな」と言ってみたり、髪を下ろしてみたり、かと思えば僕たちとの距離をやたら詰めてきたり。以前と比べて、表情以外は豊かだ。僕たちを卑下して笑うことは無くなり、メソ様の言動で苛立つことも減った。人付き合いや関わり方も変わり、以前と比べて人から嫌われていない。本人が人とあまり関わりたがらないので友人は少ない…まぁ、ほぼいないけれど、前のように悪い孤立の仕方じゃなくなったと思う。
メソ様は最近、スピカと言う名の少年にやたらと絡んでいる。
スピカは成績優秀者として年に数人選ばれる平民のひとり。
メソ様はそんなことに興味などなく、気にしてないからスピカの成績や出生、地位なんてものは知らないんじゃないかな?
彼が優秀であることなど一目瞭然。けれども、ここだけのはなし、スピカは成績上位者であるがランキングからは外されているんだ。理由は平民が王族貴族より優秀であってはならないから。くだらない理由だよ。でも、ここではそういうもん。それにスピカは、メソ様がご執心になるほど美しい顔立ちをしている。正直、最近の彼は目立ちすぎていると思う。あの風紀委員のメソ様が追いかけている相手だし、優秀で美しい平民で、白魔術が得意。その魔力と白魔術による適性から教会にも気に入られている様子。上部に目をつけられても仕方がない。まぁ、僕が知ったことじゃないけど、こちらに何か不利益をもたらす可能性があるならば少し慎重になるかなってところ。
「ふたりは…嫉妬してくれていますか?」
あたたかな陽射しの校庭。
ここ数日、やたらと僕たちに甘えたがるメソ様がそう言った。
大方、ご執心のスピカに見せつけるための行為だろうと思っていたけれど。
今の言い方だと、まるで僕らに嫉妬してほしいみたいだ。
「な、なんておっしゃいましたか?」
「だから…その…、白状してしまうけど、俺は、わざとしているんです……でも、ふたりとも全然反応ないからさ…」
いつもは見上げてばかりの彼の頭が今日は僕の肩にもたれ掛かっている。どこか寂しげに遠くを見るメソ様から紡がれる言葉。牛乳瓶の底みたいなグルグル眼鏡の下を知っているのは僕たちぐらいだと、少しだけ優越感があるのは事実。誰も知らないメソ様の素顔。好きな食べ物、好きな本、嫌いなもの、寝相が悪いこと、夢中になると止まらないこと、ほっておくと部屋がすぐに散らかること。僕らは、メソ様のことをなんでも知っている。学園にいる誰よりも知っている。でも、知らないこともある。本人の口から聞かないと分からないこと。
「……そ、それは、どういう意味?」
胸に広がったのは、まるで期待するみたいな熱だった。
「そのまんまの意味。俺はただ、君たちに嫉妬してほしいだけ、…です」
少し赤らんだ頬。むっと口先を尖らせて胸が動くほど深い呼吸を数度する。聞こえるか聞こえないかの小さな声だったけれど、その言葉は兄、カストルの耳にも届いていたようだった。
「メソ様は、僕たちのこと、どのようにお思いですか…?」
媚薬を作ることに必死になっているメソ様は、もう何日も数時間ほどしか睡眠を取っていない。こういうことでも馬鹿真面目なところは変わらないみたい。瞼は眠たそうに瞬かれ、うとうととして肩に乗る頭の重力が少しずつ増してくる。メソ様の声を紡ぐための呼吸に僕ら双子は馬鹿みたいに耳を澄ませた。
「ふふっ………そりゃあ、好き………大好き……」
久しぶりに見た微笑み。
それっきり、子どものように寝息をたてて眠ってしまった。
兄さんも僕もメソ様から目が離せない。
ずっと長く彼に仕えてきたけれど、こんな気持ちははじめてで戸惑うばかりだ。
僕らは双子、互いにメソ様に何を想っているかなんてすぐに分かる。
僕らは何でも分け合ってきたけれど、こればかりは分け合える気がしない。
「カストル兄さん、悪いけど僕に譲ってよね」
僕の肩にもたげたメソ様の頭を抱いて、チャコールグレーの髪を撫でる。兄さんに歯向かうなんて、対抗するなんて、今までしてこなかった。僕らはふたりでひとつの双子座。だから心の向く方向もおんなじになっちゃう。
「わかっているでしょう、ポルクス。こればっかりは譲れないんですよ」
「ははっ、やっぱり僕らって双子だ」
「ええ、そうですね」
その数時間後、生物の体液(主に精液)を主食とする触手系の魔物、テンタルクを生け捕りにせよと命ぜられるのを僕たちはまだ知らない。
▽
「うわぁ~~!なんか付いたっキモっ!」
「こらっ、ポルクス!生け捕りにと言ったじゃないか、傷はあまりつけないで下さい!」
「メソ様の無茶振り眼鏡ぇーー!」
「何とでも言うがいいです」
「服が溶けちゃったよぉっ! これ、ホントに大丈夫なの?! 僕、死なない!?」
「何度も言うけど大丈夫だ!その体液は肉を溶かしません。それにテンタルクは毒もないです。懐けば可愛いかもしれませんよ!」
「そんなわけありますかっ!飼うのはだめですよ。絶対に!」
「………はいはい(ボソッ)」
「ぁあ⁉ その言い方、生け捕りにして飼う気ですね?! 許しませんよ! ぁあ!ぎゃっ!僕にも液体がっ…!ねちょねちょして、気持ち悪いぃ」
「さぁ、早く!この袋に入れて捕獲してください!」
「もぉ!メソ様、無茶言わないでよっ」
「文句はあとで聞きます」
「絶対ですよっ!メソ様!」
「……うぃ~す。」
あ~あ、そろそろ嫉妬して欲しいな。
だって俺、好きなんだもん。嫉妬に駆られて受けを犯しちゃう攻め…♡
あの双子の嫉妬で快楽という名の責め苦に合うスピカを見たい…!
見たいんだぁ~~~~!
メソ様は思春期なんだと思う。
最近のメソ様のおかしな行動にはもう慣れた…と言いたいところだけど正直、目に余る。
行動の何もかもが突飛で、僕たちは今まで以上に振り回されてばかり。
あの面倒くさい潔癖馬鹿真面目のメソ様が、最近では可愛げのある変態に成り果てている…。
僕たちはメソ様のこれを『思春期』と『反抗期』としてなんとか納得することにした。
「半径1メートル以内に入るな」と言ってみたり、髪を下ろしてみたり、かと思えば僕たちとの距離をやたら詰めてきたり。以前と比べて、表情以外は豊かだ。僕たちを卑下して笑うことは無くなり、メソ様の言動で苛立つことも減った。人付き合いや関わり方も変わり、以前と比べて人から嫌われていない。本人が人とあまり関わりたがらないので友人は少ない…まぁ、ほぼいないけれど、前のように悪い孤立の仕方じゃなくなったと思う。
メソ様は最近、スピカと言う名の少年にやたらと絡んでいる。
スピカは成績優秀者として年に数人選ばれる平民のひとり。
メソ様はそんなことに興味などなく、気にしてないからスピカの成績や出生、地位なんてものは知らないんじゃないかな?
彼が優秀であることなど一目瞭然。けれども、ここだけのはなし、スピカは成績上位者であるがランキングからは外されているんだ。理由は平民が王族貴族より優秀であってはならないから。くだらない理由だよ。でも、ここではそういうもん。それにスピカは、メソ様がご執心になるほど美しい顔立ちをしている。正直、最近の彼は目立ちすぎていると思う。あの風紀委員のメソ様が追いかけている相手だし、優秀で美しい平民で、白魔術が得意。その魔力と白魔術による適性から教会にも気に入られている様子。上部に目をつけられても仕方がない。まぁ、僕が知ったことじゃないけど、こちらに何か不利益をもたらす可能性があるならば少し慎重になるかなってところ。
「ふたりは…嫉妬してくれていますか?」
あたたかな陽射しの校庭。
ここ数日、やたらと僕たちに甘えたがるメソ様がそう言った。
大方、ご執心のスピカに見せつけるための行為だろうと思っていたけれど。
今の言い方だと、まるで僕らに嫉妬してほしいみたいだ。
「な、なんておっしゃいましたか?」
「だから…その…、白状してしまうけど、俺は、わざとしているんです……でも、ふたりとも全然反応ないからさ…」
いつもは見上げてばかりの彼の頭が今日は僕の肩にもたれ掛かっている。どこか寂しげに遠くを見るメソ様から紡がれる言葉。牛乳瓶の底みたいなグルグル眼鏡の下を知っているのは僕たちぐらいだと、少しだけ優越感があるのは事実。誰も知らないメソ様の素顔。好きな食べ物、好きな本、嫌いなもの、寝相が悪いこと、夢中になると止まらないこと、ほっておくと部屋がすぐに散らかること。僕らは、メソ様のことをなんでも知っている。学園にいる誰よりも知っている。でも、知らないこともある。本人の口から聞かないと分からないこと。
「……そ、それは、どういう意味?」
胸に広がったのは、まるで期待するみたいな熱だった。
「そのまんまの意味。俺はただ、君たちに嫉妬してほしいだけ、…です」
少し赤らんだ頬。むっと口先を尖らせて胸が動くほど深い呼吸を数度する。聞こえるか聞こえないかの小さな声だったけれど、その言葉は兄、カストルの耳にも届いていたようだった。
「メソ様は、僕たちのこと、どのようにお思いですか…?」
媚薬を作ることに必死になっているメソ様は、もう何日も数時間ほどしか睡眠を取っていない。こういうことでも馬鹿真面目なところは変わらないみたい。瞼は眠たそうに瞬かれ、うとうととして肩に乗る頭の重力が少しずつ増してくる。メソ様の声を紡ぐための呼吸に僕ら双子は馬鹿みたいに耳を澄ませた。
「ふふっ………そりゃあ、好き………大好き……」
久しぶりに見た微笑み。
それっきり、子どものように寝息をたてて眠ってしまった。
兄さんも僕もメソ様から目が離せない。
ずっと長く彼に仕えてきたけれど、こんな気持ちははじめてで戸惑うばかりだ。
僕らは双子、互いにメソ様に何を想っているかなんてすぐに分かる。
僕らは何でも分け合ってきたけれど、こればかりは分け合える気がしない。
「カストル兄さん、悪いけど僕に譲ってよね」
僕の肩にもたげたメソ様の頭を抱いて、チャコールグレーの髪を撫でる。兄さんに歯向かうなんて、対抗するなんて、今までしてこなかった。僕らはふたりでひとつの双子座。だから心の向く方向もおんなじになっちゃう。
「わかっているでしょう、ポルクス。こればっかりは譲れないんですよ」
「ははっ、やっぱり僕らって双子だ」
「ええ、そうですね」
その数時間後、生物の体液(主に精液)を主食とする触手系の魔物、テンタルクを生け捕りにせよと命ぜられるのを僕たちはまだ知らない。
▽
「うわぁ~~!なんか付いたっキモっ!」
「こらっ、ポルクス!生け捕りにと言ったじゃないか、傷はあまりつけないで下さい!」
「メソ様の無茶振り眼鏡ぇーー!」
「何とでも言うがいいです」
「服が溶けちゃったよぉっ! これ、ホントに大丈夫なの?! 僕、死なない!?」
「何度も言うけど大丈夫だ!その体液は肉を溶かしません。それにテンタルクは毒もないです。懐けば可愛いかもしれませんよ!」
「そんなわけありますかっ!飼うのはだめですよ。絶対に!」
「………はいはい(ボソッ)」
「ぁあ⁉ その言い方、生け捕りにして飼う気ですね?! 許しませんよ! ぁあ!ぎゃっ!僕にも液体がっ…!ねちょねちょして、気持ち悪いぃ」
「さぁ、早く!この袋に入れて捕獲してください!」
「もぉ!メソ様、無茶言わないでよっ」
「文句はあとで聞きます」
「絶対ですよっ!メソ様!」
「……うぃ~す。」
あ~あ、そろそろ嫉妬して欲しいな。
だって俺、好きなんだもん。嫉妬に駆られて受けを犯しちゃう攻め…♡
あの双子の嫉妬で快楽という名の責め苦に合うスピカを見たい…!
見たいんだぁ~~~~!
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