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パン屋と最推しと俺
23話 王子様の遊戯
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▼side ユピテル
最近、好い玩具を見つけた。取っ替え引っ替えしていても、令息達にはすっかり飽きていたし、つまらぬ学問と学園での日々も、金を使って豪遊するのも、買い物も、下街に行くのも、城を抜け出すのも、全て飽き飽きしていた。あとは適当に公務を片付ける、同じ毎日。何をしてもつまらない。だが、オレの前に突如として現れた玩具に今はすっかり夢中になっている。はじめは、ただの暇つぶしだったが今では毎日の彩りとなっている。
メソという男は、今まで出会ったことのない変わった人間だった。従順なようで、反抗的。奴は、頭が良いが阿呆らしい。家はそれなりに良く、いつも双子が金魚のフンのようにくっついている。科学と魔法が得意で、誰も想像ができないような、ましてやそれを現実化するなど到底できないものをいとも簡単に生み出す。そして何よりも、しょうもなくて面白いものを作る。メソの不可解な動きは、早々に国に目を付けられていた。クーデターや暗殺などの何か大きな悪巧みだと疑われたのだ。だが、実際は違った。奴は、ただ自分の欲を満たすために阿呆なもの(発情誘発ボンボンなるもの)を作っていたのだ。自分勝手、自己中心的、自分の欲求に素直な様が気に入った。国は警戒をしていたが、オレが直々に監視をすると言って、邪魔者は排除してやった。なぜなら、メソの創るモノがもっと見てみたくなったから。
オレは人の心で遊ぶことが好きだ。魔法や薬を使うんじゃあない。オレの言葉や行動で相手を動かし、弄ぶんだ。それが上手くいくと最高の気分になる。せっかく創ってきたものをぞんざいに扱えば、メソは俯いて部屋から出ていった。その様子に、まるでドラッグでトんだような快感が走る。奴は、本当にオレを最高の気分にするんだ。『遠隔ローター』と書かれた紙と不思議な塊。その玩具の使い方を知ったときは、久しぶりにワクワクした。メソがいなくなってから、もちろんすぐに試したよ。奴は、やはり天才のようだった。
次はどのように遊んでやろうかと、ぼんやり考えているうちに、オレは一つの素晴らしい物語を考え付いた。メソは、どうやらオレのことが好きらしい。いつもいつも熱っぽい視線を向けてくる。遠くにいても、人混みでも、のっぽな奴の視線は気持ち悪いくらいに分かるのだ。オレを慕う者、好きだと言う者や欲しがる者は、うざったくて腐るほどウジのように湧く。そいつらは皆、オレが好きなんじゃない「王子」が好きなんだ。くだらない奴らばかりで呆れるよ。だが、メソは何か違うような気がする。今まで向けられてきた恋心とはどこか違うのだ。今までとは違うもの、そういうものを使ったらどれほど面白いか! オレは物語をはじめるべく早々に動いた。派手に使わなくなった金は、余るほどある。下街に遊びに出かけていたおかげで、それなりに土地にも詳しいし、町民を手っ取り早く洗脳するのも魔法を使えば俺にとっては簡単なこと。舞台は整い、役者が揃う、そうして幕が上がる。
何日も何週間も何ヶ月もかけて、その物語を創り上げていくのだ。
その物語が現実になるまで、ゆっくりと時間をかけて…。
そして、ついに時は近づいた。
メソは…、オレたちは、もうすぐ最高の瞬間を迎える。
オレの創り出した、この素晴らしい物語の最終章。
最高のフィナーレが、もうすぐやってくる。
気持ちが少しだけ焦燥にかられていた。
ああ、いけない。
慎重にならなければね…、最高の終わりを見たいのだから。
最近、好い玩具を見つけた。取っ替え引っ替えしていても、令息達にはすっかり飽きていたし、つまらぬ学問と学園での日々も、金を使って豪遊するのも、買い物も、下街に行くのも、城を抜け出すのも、全て飽き飽きしていた。あとは適当に公務を片付ける、同じ毎日。何をしてもつまらない。だが、オレの前に突如として現れた玩具に今はすっかり夢中になっている。はじめは、ただの暇つぶしだったが今では毎日の彩りとなっている。
メソという男は、今まで出会ったことのない変わった人間だった。従順なようで、反抗的。奴は、頭が良いが阿呆らしい。家はそれなりに良く、いつも双子が金魚のフンのようにくっついている。科学と魔法が得意で、誰も想像ができないような、ましてやそれを現実化するなど到底できないものをいとも簡単に生み出す。そして何よりも、しょうもなくて面白いものを作る。メソの不可解な動きは、早々に国に目を付けられていた。クーデターや暗殺などの何か大きな悪巧みだと疑われたのだ。だが、実際は違った。奴は、ただ自分の欲を満たすために阿呆なもの(発情誘発ボンボンなるもの)を作っていたのだ。自分勝手、自己中心的、自分の欲求に素直な様が気に入った。国は警戒をしていたが、オレが直々に監視をすると言って、邪魔者は排除してやった。なぜなら、メソの創るモノがもっと見てみたくなったから。
オレは人の心で遊ぶことが好きだ。魔法や薬を使うんじゃあない。オレの言葉や行動で相手を動かし、弄ぶんだ。それが上手くいくと最高の気分になる。せっかく創ってきたものをぞんざいに扱えば、メソは俯いて部屋から出ていった。その様子に、まるでドラッグでトんだような快感が走る。奴は、本当にオレを最高の気分にするんだ。『遠隔ローター』と書かれた紙と不思議な塊。その玩具の使い方を知ったときは、久しぶりにワクワクした。メソがいなくなってから、もちろんすぐに試したよ。奴は、やはり天才のようだった。
次はどのように遊んでやろうかと、ぼんやり考えているうちに、オレは一つの素晴らしい物語を考え付いた。メソは、どうやらオレのことが好きらしい。いつもいつも熱っぽい視線を向けてくる。遠くにいても、人混みでも、のっぽな奴の視線は気持ち悪いくらいに分かるのだ。オレを慕う者、好きだと言う者や欲しがる者は、うざったくて腐るほどウジのように湧く。そいつらは皆、オレが好きなんじゃない「王子」が好きなんだ。くだらない奴らばかりで呆れるよ。だが、メソは何か違うような気がする。今まで向けられてきた恋心とはどこか違うのだ。今までとは違うもの、そういうものを使ったらどれほど面白いか! オレは物語をはじめるべく早々に動いた。派手に使わなくなった金は、余るほどある。下街に遊びに出かけていたおかげで、それなりに土地にも詳しいし、町民を手っ取り早く洗脳するのも魔法を使えば俺にとっては簡単なこと。舞台は整い、役者が揃う、そうして幕が上がる。
何日も何週間も何ヶ月もかけて、その物語を創り上げていくのだ。
その物語が現実になるまで、ゆっくりと時間をかけて…。
そして、ついに時は近づいた。
メソは…、オレたちは、もうすぐ最高の瞬間を迎える。
オレの創り出した、この素晴らしい物語の最終章。
最高のフィナーレが、もうすぐやってくる。
気持ちが少しだけ焦燥にかられていた。
ああ、いけない。
慎重にならなければね…、最高の終わりを見たいのだから。
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