デリヘルで恋を終わらせたい。

セイヂ・カグラ

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本編

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 何を言われたか、よく分からなくて思わず素っ頓狂な声で聞き返してしまう。
 そうしたら、奏は「じゃあ、それだけだから」と言って逃げるみたいに踵を返した。

「待って! 待てよ…!」

 咄嗟に奏の腕を掴んで引き留める。
 でも、引き留めたはいいが言葉が出てこない。
 けれどそれでも、今ここで奏を帰しては行けない気がした。

「好きで、ごめん…」

 俯いたままの奏が小さく言う。
 なぜ謝るんだと問う気持ちが引き留めた腕をぎゅっと握る。

「オレ、ちょっとおかしくて。司のこと、苦しめちゃうんだよ。司が泣いてると興奮する。オレが女遊びをすると司が悲しんでくれるから…オレが女を連れ込む度に司が辛そうな顔をしてくれるから…そういうの全部が俺に執着してるみたいに感じて嬉しくてっ…! でも司、どんどん顔色が悪くなって、それで、怖くなって、、。なのに、男に抱かれようとして、オレ以外に触れさせようとしてる司に勝手に腹立って」

 タガが外れたみたいに喋りだした奏の声は震えていた。俺は溢れ出る奏の言葉をやっとの思いで拾い上げていく。次第に腕を掴む力は緩み、自分の胸に広がる悦びに困惑した。なんだ、彼は一体何を言おうとしている?

「執着しているのは、オレの方だったんだ…。司ぁっ、オレを捨てないで。オレ、司が居ないと生きていけない。」
「……っ」
「情けないのは分かってる、でもっ、お願いっ、オレ以外の男なんて選ばないで」
「わっ、ぁっ」

 突然、振り返った奏は泣いていて、それからすぐに俺を強く抱きしめた。いや、俺に抱きついてきた。子どものようにメソメソと泣きながら奏は俺にしがみついた。ぅぅ~となく声と鼻を啜る音。俺は子どもをあやすみたいにそっと背をさすった。

「あ、あのな、奏…、俺の初恋の人なんだけど」
「いやだっ!聞きたくない!」
「っ、奏だから聞いて欲しいんだが」
「いや」
「…っ、ははっ。俺の初恋の人が奏だって言ったら、お前どうする?」





  終



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