デリヘルで恋を終わらせたい。

セイヂ・カグラ

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本編

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 どんなことがあろうと、次の日は必ずやってくる。そして、仕事も当たり前にある。休む暇なんてない。人間の心模様なんて気にすることなく日々は永遠と続く。死ぬまで、永遠。はぁ、と深く溜息を吐いて司は、自分で作った弁当をちびちびと食べる。こんな日は、腹も大して空かない。

 ブーブー。

 ポケットに入れていたスマホが鳴り、取り出す。いつも来るのは、広告か会社か奏くらい。まぁ、しばらく奏から連絡が来ることはないだろうけれど…。

「えっ、、」

 表示されている名前に目を見開く。
 それは、絶対に来ないだろうと思っていた奏からのメッセージだった。

〈今夜、行く〉

 そっけなくも思える、短い文。
 なんと返せばいいのか、分からなかった。しばらく悩んだが、いつの間にか昼休憩の時間も終わり。残してしまった弁当をしまって、スマホの画面を閉じた。結局、メッセージには既読だけ付ける形となり返信はできないまま。気が付けば、業務を終えて帰路に着いていた。

 一歩一歩が重い。
 帰れば、奏がいる。どんな顔をして会えばいいのだろう。
 
「あっ……」

 奏が家に来るということばかりに頭が回っていたが、司は重要なことを思い出した。

『オレがやりたいときに司のこと犯していいってこと?』



「…せっくす、するのか、、」

 そのことに気が付いて、司はふらふらとしゃがみこんだ。大きな体で小さくうずくまり、ぅ~~と呻く。一体、どうすれば良いんだ。そうやって、しばらくしゃがみこんだ。

「司…? どうしたの?具合、悪い?」

 声をかけられ顔を上げると、そこには心配そうな顔をした奏が立っていた。
 あ、隈ができてる…、めずらしい。
 具合悪い?と聞いてきた奏の方が、あまり体調がよくなさそうだった。
 俺は、予期せず現れた奏に驚きつつもふるふると首を横に振って立ち上がった。

 覚悟を決めろ俺、男だろ。
 
「ちょっと、仕事で疲れただけだ」

 よく考えてみろ。
 好きな相手に、好きな男に、奏に抱いてもらえるなんて、こんな幸運なことないだろ。
 むしろ、楽しむんだ。
 そうだ、これから俺はこの関係を楽しむべきなんだ。

「うん、行こう」
「え、あっ、つかさっ、」

 司は、奏の腕を掴んでズンズンとアパートまで歩き出した。
 司の大きな歩幅で、あっという間に部屋までたどり着く。
 そうして寝室の扉まで開けた司は、奏をベッドの上に押し倒した。

「悪いが、このままじゃできないから準備してくる。すぐ終わらせる、待っててくれ」
 
 そう言って足早に風呂場へ向った司を奏は慌てて引き止めた。

「待って!待ってよ…、そういうんじゃない!」

 ピタリと動きを止めた。
 二人の視線が互いに木材でできた床を見る。

「そういうんじゃなくて、、その、ごめん」

 ああ、やっぱり、あの日はどうかしていたんだ。俺みたいな男を誰が好き好んで抱いたりなんかする。自惚れも良いところじゃないか。司は小さく自嘲的な笑みを浮かべて、そっと掴まれた腕を引き離した。

「ごめん、俺の方こそ。そういうんじゃないよな」

 自分で言って、余計に胸が苦しくなる。

「その、オレ、知らなくてッ! 司が初めてだったのとか、ってっきり慣れてるのかと思ったからっ。ほんと、ごめん…。身体、辛く、ない、、?」

 司は、ああそんなことか、と顔を上げた。
 俺の好きな人は、優しい人なんだ。
 そんなことを聞くためにわざわざ会いに来てくれたんだ。

「みての通り、俺は丈夫だからな」
「そっか、、なら安心した」
「おう、それだけか?」
「…えっと」
「なんだ、まだ何かあるのか」
「司の初恋って、誰なの?」

 真っ直ぐに見据えられて目が合う。奏は何故こんなことを聞くのだろう。わからない。それに、答えることはできない。本人眼の前にして言えるわけがない。

「どうして、そんなことを聞くんだ」
「それは…、その、」
「よくわからないが、まぁ良い。今日は悪いが帰ってくれ。少し疲れているから休みたい」
「オレが………だから…」

 ボソボソと言うものだから何と言ってるのか聞き取れない。

「ごめん、聞こえない」
「っ、オレが、司のこと、好き、だから」
「…は?」
「だから、知りたい、、ごめん、、あんな事しておいて、、色々、傷つけることしたのに、、」

 



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