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第3話 命を笑う平和
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「黙れ。」
裸と言っても過言ではない美女が向いた方向に塔があると予想したリューマは、再び等に辿り着くことができた。
「きたぞぉ! ってあれ、なんだこの穴。」
それは爆発によるものなのか、塔が建っていた真下に、底の見えない大きくて深い空洞。
「アァアッ! ん? 足がつかないぞ? まさ…かぁああ!?」
すると四足歩行の謎のイケメンは尻に噛み付いた二足歩行のヤギを連れて焦り走っていたが、その先に大きな空洞があるとは考えもしなかっただろう。ヤギと共に底の見えない深い空洞の中に飛び込んだ。
「ギェエエエエエ!?」
「ニッハハハ! あのイケメンアホなのか? ヤギを背負って飛び降りたぞ!」
リューマはその姿に涙浮かべながらお腹をおさえて大爆笑していた。
「さぁ、私たちも行くわよ。」
お、そうだな。
謎のイケメンの跡を追う形でリューマも飛び降りた。
「イヤッホォ! いっくぜぇ!」
「馬鹿!? 飛び降りてどうすんのよ!」
アイラは焦っている様子。
ん? おめぇが行くわよって言ったんじゃないか。
「飛び降りろとは言ってないでしょ!? 下に衝撃を和らげるものがなかったらどうすんのよ? それこそ死ぬわよ。」
「ガァアッ!? 先に言えよぉ!」
「君はアホかぁ!」
リューマは底の知れない空洞を落ちる中、胡座をかき、腕を組んだ。
んー、なるようになれ。死んだら死んだ。うん!
「その冷静さはどこから来るのよぉ!?」
そしてリューマは胡座をかいたまま、固すぎず柔らかすぎず、謎の物体の上に落ちた。
「「グハッ!?」」
そのしたの物体から何かを痛がる声を放たれていた。しかしそれは2人の声だった。
「ん!? ヤギだ。ってことはイケメンさん…おぉ! やっぱイケメンさんだ!」
「痛て。ん? お前かよ! ぶった斬るぞ!?」
「またまたぁ。そういえばヤギってグハッって声出すっけ?」
リューマとそのヤギはお互いの目を見つめ合っていた。やがてヤギは勘違いを解くためなのか、ただ単にリューマが重いからなのか、鳴き声を放った。
「メェエエ!!」
「うん、メェだ! おっかしいな。」
「俺の下にも誰かいるのか?」
オールのノラが使える謎のイケメンは、リューマの存在とそれとは別の存在、謎の男に気づいていた。
「重いんだよ貴様ら!!」
すると2人の下敷きになっていた謎の男は馬鹿力でリューマと謎のイケメンを投げ飛ばした。
「うわ、なんだ!? ほぇ、やっぱもう1人いたのか?」
「誰だ貴様ら!? この爆発は貴様らの仕業か!?」
「おめぇこそ誰だ!? あの爆発のど真ん中なのになんで生きてるんだ? 神様か!」
「ザッハハ、僕は石の灰龍はいりゅうと契約を交わして力を得たんだ。そう、僕の体は岩石そのもの! 爆発ごときにやられる訳がない!」
気の強い男なのに対して僕を使うそのギャップは場の空気を静めた。
「ばっかじゃねぇの?」
「は!?」
「うん。」
「ぶっ潰すぞ貴様ぁ!」
空気の読めないリューマは思わず喧嘩を売ってしまっていた。
そして真っ暗な空間はキラキラ輝く霧によって照らされてゆく。
「なんだこれ?」
「氷の霧だよ。氷はグラスのような性質を持っていて、光を屈折させることができる。それを利用して外の明かりを屈折させたのよ。」
やるじゃん、アイラ。流石は俺の大賢者。
「黙れ。」
「おぉ、なんか知らないけど明るくなったな。って、えぇえ!?」
謎の男は驚きを隠せなかったのか、思わず叫んでしまっていた。その視線の向こうにはリューマ。そしてリューマもまたその姿を見て驚いていた。
「えぇえ!? スネーキ?」
それはゲームが現実化する前、同じ学級の世界中で知られている超有名人、スネーキ。彼はゲーム実況者である。
「貴様もこのゲームの中に転生されたのか?」
「うん、まぁ、そゆことだ。って、おめぇのせいで現実化したようなもんじゃないか!?」
「それは、すまない。だがこれで良かった! 見よ、この非常人的な力を! イリュージョンストーン!」
スネーキは壁の石を自由自在に動かしてみせた。
「おぉ、すっげぇな! うらやますぃ!」
「君も力が使えるわよ。」
あ、そうだった。でも見せる訳にもいかないしな。
「君にしては賢い選択だわ。」
「ところでリューマ、貴様ここで何しに来たんだ?
「え、そりゃ、この塔で暴れてる奴をぶん殴りに来た。おめぇもそうじゃねえのか?」
スネーキは顔に微笑みを浮かべた。
「それは残念だ、この塔で暴れていたのは僕だ。だが君に僕は倒せない。諦めたまえ。」
「んだとこら!? ギャフンと言わせてやる。」
「実際にギャフンと言う人はいませんが?」
うるせぇ、アイラ。ちなみに、今の俺はこいつに勝てるのか?
「あの爆発を食らっても無傷という石のような頑丈な体と、周囲の壁を自由自在に操られるこの状況、さらに氷との相性を考えると、勝てる確率は0,941%と言ったところでしょう。」
いやだからなんでそんなパッときもい数字を出すんだよ。理系ドラゴンめ。
「ま、ちょうどいい、イケメンさん、こいつをぶった斬ってくれ。」
謎のイケメンの方に目をやるが、ヤギに刀を喰われ、その受け難い事実から現実逃避して地面に伏せていた。
「…だめだあいつ。」
「ヤギが苦手みたいだね。」
「余所見は禁物だぜ?」
そうしてるリューマにスネーキは容赦なく飛びかかり、石のような硬い拳で一撃を食らわせた。
「グッ!」
壁には殴り飛ばされたリューマの体の跡ができていた。
痛ぇ! これ死ぬぞ、アイラ。
「死ぬわね。」
床を凍らせることは可能なのか?
「君が想像すれば、実力さえあれば可能だわ。」
想像か、簡単だな。んー。
「ダッ!?」
壁に貼り付けにされていたリューマをスネーキはもう1発殴った。
リューマの顔は変形していてもおかしくないはずが、非常人的な超回復力により、なんとか形を保っているようだが、顔は文字通り血で染まっていた。
「ほぉ、2発殴っても死なないとはな。褒めてやるぜ、リューマ。ついでだ。石の能力の真の力を拝めさせてあげよう。」
「何してるのよ、さっさと地面を凍らして!」
リューマは考え事をしてる模様。
ちょっとな、技名を考えていてよ。ちょっと待っとけ。
「技名? そんなの後でいいじゃない!本当に死ぬわよ?」
お、いいの思いついた!
「アイスフ…グハッ!?」
なんだ!? 地面から!?
地面や壁からスネーキが現れ、あらゆる方向からリューマを殴って殴って殴り続けた。
「どうしたどうした? せっかくゲームが現実化したんだ、何もできずに死ぬのか? まぁ、それが貴様の運命ってものだろうよ。ザッハハ!」
スネーキは慈悲深い感情は微塵もなく、時には下から、時には横からとリューマの全身の骨を砕け続けた。
ダァアア! 痛ぇ痛ぇ痛ぇ! 10階の高さから落ちた気分だぁ。
「10階から落ちたことあるの?」
いや、ねぇ。
「いい加減にしろぉ! アイスフロア!」
リューマは床に両手を当て、技を放った。
痛みと怒り、焦りが混じり合ったその勇気ある行動は床や壁、全てを凍らせて見せた。それは紫色に輝く氷。こんな状況でなければ誰もが魅了されていたであろう美しさ。
「想像以上にすごいじゃない。」
「おい、スネーキ。これでお前はもう、好き勝手に暴れることはできないぞ!」
「んな!? 地面に潜り込めない、貴様も能力者だったのか!」
「ニッヒヒ、これで正々堂々と勝負ができるってわけだ。」
「何自信満々な面こいてんだよ。ザッハハハ! ザッハハ!」
だがスネーキは今までにない程の笑いを見せた。
「何がおかしい!?」
「確かにこれで俺は石を自由自在に操れないし、石を通して移動もできない。だが、俺自身の力を忘れたわけでは、ないだろうな?」
そうだった、こいつは石の能力者。岩石のように硬い。アイラ、こいつも凍らせることができないのか?
「生物自体を凍らせることは不可能だが、その周辺の空気を凍らせることで動きを止めることは可能だわ。」
お、それいいね。んー、フローズンってのはどうだ?
「勝手にしなさい。」
ケチだな。
「よし、フローズン!…って、あれ?」
何も起きないぞ、アイラ。
「馬鹿なのか君は? 君が床を凍らせたのは触れたから。これもまたその物体に触れないと意味がない。」
先に言ってくれよ。
「そこまで馬鹿だとは思っていなかったわ。」
「どうした? 実力が足りないのか? 残念な奴だな。ではこっちから仕掛けるぞ!」
勢い良く飛びかかったスネーキは、凍っていた床により、滑りこけた。
「痛て。なんだよ、卑怯だぞ貴様!」
「正々堂々じゃないわね。」
「ニッヒヒ、氷の上を滑れないのか? アホだな。」
「んじゃ貴様は歩けれるのか?」
「歩く? 氷の上は滑るもんさ。」
元々スケートを習っていたリューマ。それがここで役立つとは誰が予想したのだろうか。リューマは滑りを楽しみながら立つこともできないスネーキに近づき、やがて触れた。
「フローズン。」
するとスネーキの周囲の空気は瞬時に凍り、スネーキは生きたまま氷漬けにされた。
「よし、これでギャフンと言わせ…っておい! これじゃギャフンと言わせられないじゃないか!」
「問題はそこかよ!」
アイラも流石に驚きを隠せない程、リューマの思考は解せないものであった。
これで静穏が戻ると思われたその瞬間、スネーキの身動きを止めた氷は砕け、スネーキが出てきた。
「んだぁ!? お前どうやって? って、イケメンさん!? 何やってんだよ!?」
謎のイケメンは刀と共にヤギを凍っていたスネーキに投げ飛ばしていた。
「ハァ、ハァ、焦ったぜ。生きたまま凍らせてたまるか!」
息ができなかったせいか、スネーキは息が荒い。
「おめぇ! 邪魔するなイケメンさん!」
と、謎のイケメンを引かせるように言いかけるものの、謎のイケメンは聞こえやしない。
「視覚の次は聴覚かよ。」
「爆発のせいかもね。それにしても、厄介なことになりましたわね。さぁ、次はどうする、リューマ?」
どうするって、また凍らせればいんじゃないか?
「そうだね。」
スネーキは真正面から飛にかかった。リューマの顔面や腹、肩を殴った。
「グッ!」
痛い痛い痛い! 死ぬ死ぬ死ぬ!
「なるほどな、貴様はとんでもない回復力の持ち主って訳か! だが回復する暇も与えなければただのゴミ! さぁどうする? どうする!? ザッハハ! ケンをいじめていたあのリューマはどぉした!?」
言葉もまた強力な武器。リューマは身体だけでなく、精神的にも相当なダメージを受けているだろう。
「ザッハハハ!!」
裸と言っても過言ではない美女が向いた方向に塔があると予想したリューマは、再び等に辿り着くことができた。
「きたぞぉ! ってあれ、なんだこの穴。」
それは爆発によるものなのか、塔が建っていた真下に、底の見えない大きくて深い空洞。
「アァアッ! ん? 足がつかないぞ? まさ…かぁああ!?」
すると四足歩行の謎のイケメンは尻に噛み付いた二足歩行のヤギを連れて焦り走っていたが、その先に大きな空洞があるとは考えもしなかっただろう。ヤギと共に底の見えない深い空洞の中に飛び込んだ。
「ギェエエエエエ!?」
「ニッハハハ! あのイケメンアホなのか? ヤギを背負って飛び降りたぞ!」
リューマはその姿に涙浮かべながらお腹をおさえて大爆笑していた。
「さぁ、私たちも行くわよ。」
お、そうだな。
謎のイケメンの跡を追う形でリューマも飛び降りた。
「イヤッホォ! いっくぜぇ!」
「馬鹿!? 飛び降りてどうすんのよ!」
アイラは焦っている様子。
ん? おめぇが行くわよって言ったんじゃないか。
「飛び降りろとは言ってないでしょ!? 下に衝撃を和らげるものがなかったらどうすんのよ? それこそ死ぬわよ。」
「ガァアッ!? 先に言えよぉ!」
「君はアホかぁ!」
リューマは底の知れない空洞を落ちる中、胡座をかき、腕を組んだ。
んー、なるようになれ。死んだら死んだ。うん!
「その冷静さはどこから来るのよぉ!?」
そしてリューマは胡座をかいたまま、固すぎず柔らかすぎず、謎の物体の上に落ちた。
「「グハッ!?」」
そのしたの物体から何かを痛がる声を放たれていた。しかしそれは2人の声だった。
「ん!? ヤギだ。ってことはイケメンさん…おぉ! やっぱイケメンさんだ!」
「痛て。ん? お前かよ! ぶった斬るぞ!?」
「またまたぁ。そういえばヤギってグハッって声出すっけ?」
リューマとそのヤギはお互いの目を見つめ合っていた。やがてヤギは勘違いを解くためなのか、ただ単にリューマが重いからなのか、鳴き声を放った。
「メェエエ!!」
「うん、メェだ! おっかしいな。」
「俺の下にも誰かいるのか?」
オールのノラが使える謎のイケメンは、リューマの存在とそれとは別の存在、謎の男に気づいていた。
「重いんだよ貴様ら!!」
すると2人の下敷きになっていた謎の男は馬鹿力でリューマと謎のイケメンを投げ飛ばした。
「うわ、なんだ!? ほぇ、やっぱもう1人いたのか?」
「誰だ貴様ら!? この爆発は貴様らの仕業か!?」
「おめぇこそ誰だ!? あの爆発のど真ん中なのになんで生きてるんだ? 神様か!」
「ザッハハ、僕は石の灰龍はいりゅうと契約を交わして力を得たんだ。そう、僕の体は岩石そのもの! 爆発ごときにやられる訳がない!」
気の強い男なのに対して僕を使うそのギャップは場の空気を静めた。
「ばっかじゃねぇの?」
「は!?」
「うん。」
「ぶっ潰すぞ貴様ぁ!」
空気の読めないリューマは思わず喧嘩を売ってしまっていた。
そして真っ暗な空間はキラキラ輝く霧によって照らされてゆく。
「なんだこれ?」
「氷の霧だよ。氷はグラスのような性質を持っていて、光を屈折させることができる。それを利用して外の明かりを屈折させたのよ。」
やるじゃん、アイラ。流石は俺の大賢者。
「黙れ。」
「おぉ、なんか知らないけど明るくなったな。って、えぇえ!?」
謎の男は驚きを隠せなかったのか、思わず叫んでしまっていた。その視線の向こうにはリューマ。そしてリューマもまたその姿を見て驚いていた。
「えぇえ!? スネーキ?」
それはゲームが現実化する前、同じ学級の世界中で知られている超有名人、スネーキ。彼はゲーム実況者である。
「貴様もこのゲームの中に転生されたのか?」
「うん、まぁ、そゆことだ。って、おめぇのせいで現実化したようなもんじゃないか!?」
「それは、すまない。だがこれで良かった! 見よ、この非常人的な力を! イリュージョンストーン!」
スネーキは壁の石を自由自在に動かしてみせた。
「おぉ、すっげぇな! うらやますぃ!」
「君も力が使えるわよ。」
あ、そうだった。でも見せる訳にもいかないしな。
「君にしては賢い選択だわ。」
「ところでリューマ、貴様ここで何しに来たんだ?
「え、そりゃ、この塔で暴れてる奴をぶん殴りに来た。おめぇもそうじゃねえのか?」
スネーキは顔に微笑みを浮かべた。
「それは残念だ、この塔で暴れていたのは僕だ。だが君に僕は倒せない。諦めたまえ。」
「んだとこら!? ギャフンと言わせてやる。」
「実際にギャフンと言う人はいませんが?」
うるせぇ、アイラ。ちなみに、今の俺はこいつに勝てるのか?
「あの爆発を食らっても無傷という石のような頑丈な体と、周囲の壁を自由自在に操られるこの状況、さらに氷との相性を考えると、勝てる確率は0,941%と言ったところでしょう。」
いやだからなんでそんなパッときもい数字を出すんだよ。理系ドラゴンめ。
「ま、ちょうどいい、イケメンさん、こいつをぶった斬ってくれ。」
謎のイケメンの方に目をやるが、ヤギに刀を喰われ、その受け難い事実から現実逃避して地面に伏せていた。
「…だめだあいつ。」
「ヤギが苦手みたいだね。」
「余所見は禁物だぜ?」
そうしてるリューマにスネーキは容赦なく飛びかかり、石のような硬い拳で一撃を食らわせた。
「グッ!」
壁には殴り飛ばされたリューマの体の跡ができていた。
痛ぇ! これ死ぬぞ、アイラ。
「死ぬわね。」
床を凍らせることは可能なのか?
「君が想像すれば、実力さえあれば可能だわ。」
想像か、簡単だな。んー。
「ダッ!?」
壁に貼り付けにされていたリューマをスネーキはもう1発殴った。
リューマの顔は変形していてもおかしくないはずが、非常人的な超回復力により、なんとか形を保っているようだが、顔は文字通り血で染まっていた。
「ほぉ、2発殴っても死なないとはな。褒めてやるぜ、リューマ。ついでだ。石の能力の真の力を拝めさせてあげよう。」
「何してるのよ、さっさと地面を凍らして!」
リューマは考え事をしてる模様。
ちょっとな、技名を考えていてよ。ちょっと待っとけ。
「技名? そんなの後でいいじゃない!本当に死ぬわよ?」
お、いいの思いついた!
「アイスフ…グハッ!?」
なんだ!? 地面から!?
地面や壁からスネーキが現れ、あらゆる方向からリューマを殴って殴って殴り続けた。
「どうしたどうした? せっかくゲームが現実化したんだ、何もできずに死ぬのか? まぁ、それが貴様の運命ってものだろうよ。ザッハハ!」
スネーキは慈悲深い感情は微塵もなく、時には下から、時には横からとリューマの全身の骨を砕け続けた。
ダァアア! 痛ぇ痛ぇ痛ぇ! 10階の高さから落ちた気分だぁ。
「10階から落ちたことあるの?」
いや、ねぇ。
「いい加減にしろぉ! アイスフロア!」
リューマは床に両手を当て、技を放った。
痛みと怒り、焦りが混じり合ったその勇気ある行動は床や壁、全てを凍らせて見せた。それは紫色に輝く氷。こんな状況でなければ誰もが魅了されていたであろう美しさ。
「想像以上にすごいじゃない。」
「おい、スネーキ。これでお前はもう、好き勝手に暴れることはできないぞ!」
「んな!? 地面に潜り込めない、貴様も能力者だったのか!」
「ニッヒヒ、これで正々堂々と勝負ができるってわけだ。」
「何自信満々な面こいてんだよ。ザッハハハ! ザッハハ!」
だがスネーキは今までにない程の笑いを見せた。
「何がおかしい!?」
「確かにこれで俺は石を自由自在に操れないし、石を通して移動もできない。だが、俺自身の力を忘れたわけでは、ないだろうな?」
そうだった、こいつは石の能力者。岩石のように硬い。アイラ、こいつも凍らせることができないのか?
「生物自体を凍らせることは不可能だが、その周辺の空気を凍らせることで動きを止めることは可能だわ。」
お、それいいね。んー、フローズンってのはどうだ?
「勝手にしなさい。」
ケチだな。
「よし、フローズン!…って、あれ?」
何も起きないぞ、アイラ。
「馬鹿なのか君は? 君が床を凍らせたのは触れたから。これもまたその物体に触れないと意味がない。」
先に言ってくれよ。
「そこまで馬鹿だとは思っていなかったわ。」
「どうした? 実力が足りないのか? 残念な奴だな。ではこっちから仕掛けるぞ!」
勢い良く飛びかかったスネーキは、凍っていた床により、滑りこけた。
「痛て。なんだよ、卑怯だぞ貴様!」
「正々堂々じゃないわね。」
「ニッヒヒ、氷の上を滑れないのか? アホだな。」
「んじゃ貴様は歩けれるのか?」
「歩く? 氷の上は滑るもんさ。」
元々スケートを習っていたリューマ。それがここで役立つとは誰が予想したのだろうか。リューマは滑りを楽しみながら立つこともできないスネーキに近づき、やがて触れた。
「フローズン。」
するとスネーキの周囲の空気は瞬時に凍り、スネーキは生きたまま氷漬けにされた。
「よし、これでギャフンと言わせ…っておい! これじゃギャフンと言わせられないじゃないか!」
「問題はそこかよ!」
アイラも流石に驚きを隠せない程、リューマの思考は解せないものであった。
これで静穏が戻ると思われたその瞬間、スネーキの身動きを止めた氷は砕け、スネーキが出てきた。
「んだぁ!? お前どうやって? って、イケメンさん!? 何やってんだよ!?」
謎のイケメンは刀と共にヤギを凍っていたスネーキに投げ飛ばしていた。
「ハァ、ハァ、焦ったぜ。生きたまま凍らせてたまるか!」
息ができなかったせいか、スネーキは息が荒い。
「おめぇ! 邪魔するなイケメンさん!」
と、謎のイケメンを引かせるように言いかけるものの、謎のイケメンは聞こえやしない。
「視覚の次は聴覚かよ。」
「爆発のせいかもね。それにしても、厄介なことになりましたわね。さぁ、次はどうする、リューマ?」
どうするって、また凍らせればいんじゃないか?
「そうだね。」
スネーキは真正面から飛にかかった。リューマの顔面や腹、肩を殴った。
「グッ!」
痛い痛い痛い! 死ぬ死ぬ死ぬ!
「なるほどな、貴様はとんでもない回復力の持ち主って訳か! だが回復する暇も与えなければただのゴミ! さぁどうする? どうする!? ザッハハ! ケンをいじめていたあのリューマはどぉした!?」
言葉もまた強力な武器。リューマは身体だけでなく、精神的にも相当なダメージを受けているだろう。
「ザッハハハ!!」
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