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第二章 血と粛清の嵐の中で

第十三話 二五三年 鉄籠山の戦い

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 徐質は五千の兵の内、二千に強奪した補給物資と捕虜にした蜀軍を司馬昭の元へ送らせ、自身は三千を率いて蜀の補給基地があると思われる鉄籠山に向かう。

 だが、それは全て蜀軍の総大将である姜維の策である事を、徐質は見抜く事は出来なかった。

 徐質と別れて司馬昭の本陣に向かっていた魏の部隊だが、蜀軍の陣営裏に差し掛かった辺りで突然道を遮る者達が現れた。

「ご苦労さん。わざわざウチの連中を護衛してくれたんだな」

 道を遮ったのは夏侯覇であり、その兵は五千を下らない。

「さーて、それじゃこれからどうしようか。一戦して突破を試みてみるか? 二千対五千なら、ひょっとすると何とかなるかもしれないぞ?」

 夏侯覇は自身の槍を肩に担いで提案する。

 しかし、魏の者であれば夏侯覇の剛勇を耳にする機会は多い。
 その者が準備万端で待ち構えていた時点で、しかも半数以下の兵力で戦うと言うのは分が悪いどころの話ではなかった。

「それからもう一つ。蜀軍の補給部隊二百人だけど、そいつらただのヘタレじゃなくて、俺直轄の部下で、相当な手練だ。それに物資は確認したから知っているだろうけど、武器もたんまりある。俺の号令で周りからも内側からも襲われる事になるが、どうするね? やり合うって言うのなら、俺は構わないが?」

 魏兵は急いで撤退しようとしたのだが、後方にはすでに張翼の部隊が展開して退路を塞いでいた。
 もしここに徐質がいれば結果は違ったかもしれないが、この場には指揮を取る武将がいないと言う事や、夏侯覇と言う見知った敵であった事もあり、魏の兵は降伏した。

 するしか無かったと言えるかもしれない。

「さて、こちらは上手く行ったが、向こうはどうだろうな」

 夏侯覇は降伏した魏の兵士達と取り返した物資を蜀の本陣に運びながら、張翼に言う。

「姜維将軍が自ら指揮を取っているので、遅れを取る様な事はないでしょう」

「いや、身内贔屓に聞こえて不快かもしれないが、魏の武将は一筋縄では行かないぞ。腐っているとは言え、司馬一族も油断ならない一族だ。それの直属となった徐質も、それに見合った能力を持っているはず。姜維将軍が油断するとは思えないが、取り逃したら厄介な事になる」

「夏侯覇将軍、援軍に向かわれてはいかがです? こちらの事はこちらで行いますので」

「……いや、止めておこう。こちらにも次の段階の準備がある。廖化達もいる事だし、信じて次に備えよう」

 夏侯覇と張翼は、蜀の本陣に戻ると次の準備に移る。

 夏侯覇は魏軍に詳しいのは間違いないのだが、秘密主義の司馬昭の直轄部隊まで把握している訳ではない。

 その為、徐質と言う武将の事は夏侯覇も詳しくは知らないので、姜維の元へ援軍に行ったところで特別な役に立てるとは言えないのだ。

 それを自覚していたからこそ、自分が出来る事、やるべき事に注力する。

 次の役割は、蜀軍の武将達より夏侯覇が最適である事もあり、それも失敗は許されない重要な役割である。



 そんな事が起きているとは知らない徐質は、蜀軍の補給基地があると聞いた鉄籠山に向かったのだが、そこにあるはずの補給基地どころかただ何も無い広場があるだけで兵の一人もいない。

 あまりに不可解な状況であり、もしこれが鄧艾や司馬昭のような智将であればすぐに相手の意図を察する事が出来たのだが、徐質は猛将であったので気付くのが致命的に遅れてしまった。

 突然後方から大きな物音がしたのだが、それはこの広場への入口の山道を壊れた車両や木牛流馬などで塞ぐ音だった。

「しまった、罠か!」

「放て!」

 徐質が言うのと同時にその号令が掛けられ、広場の周りが一斉に炎に包まれる。

 徐質の部隊は炎によって囲まれ、唯一の出入り口であった山道を車両などで塞がれ身動きが取れない状態になった。
 しかも、炎に囲まれていない山道の向こうから蜀軍の矢が射掛けられてくる。

「おのれ、この程度の事で!」

 徐質は叫ぶと自らの鉾を地面に突き刺し、壊れた車両を持ち上げて投げ飛ばしていく。

「皆の者、恐れるな! この徐質が道を拓く! 皆、この徐質の後ろについて来い!」

 徐質は言葉通りに自ら壊れた車両や木牛流馬で蜀軍の矢を防ぎ、しかも炎の中で道を作りながら少しずつ前進する。

 しかし、車両や壊れた木牛なども木製であり、炎はそこにも広がっていく。
 もちろんそれは先頭を行く徐質がもっとも被害を受ける事になる。

「皆、遅れてはおらんな!」

 それでも徐質は後ろを見ながら、炎から逃れる兵達に声をかける。
 自身の鎧に火が着いても、それを引きちぎり投げ捨てながら道を切り開いていく。
 近付いてくる轟音に、出入り口を塞ぐ蜀軍にも不安が広がっていく。



 その正面には、姜維が待ち構えていた。

「将軍」

「慌てる必要も、焦る必要も無い。音は近付いてきているのは私にもわかる。皆、遠慮はいらん。姿は見えなくともそこに敵はいるのだ。存分に矢を放ち、炎の中に閉じ込めてやればいい」

 姜維は無慈悲な命令を下す。

 燃え盛る炎と、雨のように降り注ぐ矢の中、それでもついに徐質は炎の中に道を作り脱出路を確保したのである。

「道は拓けたぞ! 軟弱な蜀兵を打ち倒し、司馬昭閣下に報告だ」

 徐質は真正面に立つ姜維を睨みつけ、後方の兵に言う。

 しかし、その徐質は重度の火傷と無数の矢傷によって致命傷を負っているのが見ただけでわかる。

 徐質は山を降りるまで生きていられないだろう。
 それは分かったのだが、それでも姜維は槍を手に徐質の前に立つ。

「魏将、見事である。私は総大将姜維。名を名乗られよ」

 姜維はそう言うが、別に徐質の名を知らない訳ではなく戦場の倣いとして言ったのであるが、徐質にはそれが聞こえていないのか、名乗りを上げる事も無く姜維を睨んだままである。

 無理もない。

 体の半分はすでに炭化している徐質は、生きている事の方が不思議で、目が見えているのか耳が聞こえているのかも分からない。

 それでも姜維を睨みつけているのは、人影は察しているという事だろう。
 そして、前にいる人影はすなわち敵であるという事も理解している。

「いや、やはり名乗らずとも良い、魏将徐質。すでに貴将は十分過ぎるほどに武威を示した。それだけで貴将は在り方を見せられた。あとは休むが良い」

 実際、徐質が炎の中から姿を現した時から蜀の兵士達はその迫力に呑まれて矢を射掛ける事も出来なくなっているほどだ。

 このまま見逃しても徐質は命を落とすのだが、全軍の士気の為にもここは討ち取っておかねばならない。

 これほどの武威を示した武将である。

 出来る事なら手厚く葬ってやりたいところだが、これは戦争であり、ここは戦場である。

 姜維はただ立っている徐質に、騎馬に乗ったまま近付く。

 見たところ徐質はすでに武器らしきものを持っていない。

 それだけでなく鎧も無く、半裸の状態でもし戦えたとしても姜維の相手になる状態ではない。

 姜維はそれでも油断せずに馬を進め、槍で徐質の胸を一突きに貫く。

 が、その直後、

「うぉおおおおおおおおおおお!」

 徐質が獣の様な声で吠える。

 その咆哮を合図に、後方の炎の一部が弾けると、まったく予想外のところから魏の兵達が溢れ出してくる。

「何?」

 尋常ならざる智将である姜維でも、目の前の狂気に満ちた行動は目を疑った。

 徐質は自分の進む方向に蜀の兵が待ち構えている事を分かっていたのだろう。そこで自ら囮として進む道と、兵を逃がす道を作っていた。

 武将首である瀕死の自分が姿を晒せば、その首を取ろうとそこの指揮官級の武将が来る。

 その武将を十分引き付けてから、別の道に隠れていた兵を逃がす。

 それは実に見事な策だと姜維は感心するが、燃え盛る炎の中でその身を焼きながら待機など、命じられてできるものでは無い。

 炎がはじけ飛んだ事からおそらく車両や木牛の部品で炎を避ける為の壁なども作っていたのだろうが、蒸し焼きにされながら武将の号令を待っていたという事になる。

 炎に焼かれながら号令を待てと言う命令は、命じる側も実行する側もどうかしているとしか思えない。
 どれほどの奇計良策であったとしても、実行出来ないのであればそれはまったく無意味な策と言える。

 少なくとも自分なら命じる事の無い命令であり、考えもつかない愚策である。
 が、それだけに虚を突かれた事は否めない。

「廖化、張嶷に伝達! 魏兵を炎の中に叩き込め! 一兵たりとも生かして帰すな!」

 姜維が手近な兵にそう命令した時、胸を貫かれた徐質が、その状態のまま姜維に飛び掛かって来た。

 胸の一撃で即死だったと思っていたのは、姜維だけではない。

 それ以前に、今の徐質がまともに動けるなど、この状況を見ていた蜀の全兵士が思ってもいなかったほどである。

 それは誰にも予想出来なかった完全な不意打ちであり、姜維も自分で考えての行動が取れなかった。

 だが、姜維は反射的に槍を手放して剣を抜いて一閃していた。

 徐質の伸ばした手はほんの僅かに姜維に届かず、その焼け焦げた首を刎ねられていたのである。

 それは以前、常人の域を遥かに超えた槍の達人である趙雲との一騎打ちの経験があった事が、姜維を助ける事になった。

 まだ魏の若手武将であった頃にだが、姜維は趙雲と一騎打ちを行った事がある。

 自分の武勇には自信があった姜維だが、想像を絶する達人であった趙雲の槍捌きには驚かされ、今でも生き延びられた事が奇跡的だったと思う。
 その一騎打ちはとても考える余裕などなく、ただ生存本能のみを引き出す様な戦い方であった為、姜維は考えるより早く動く事が身についたという副産物も手に入れていた。

 実際に趙雲は、あの時の姜維を討ち取る事が出来なかったのは君自身の実力であり、そう遠からず自分では勝てなくなるだろうと認めてたほどだ。

 もしその経験が無ければ、この徐質の決死の反撃の餌食になっていたかもしれない。

「敵将徐質、この姜維が討ち取った!」

 その宣言は蜀軍の士気を高める事は出来たが、同時に魏軍の兵達にも狂気を爆発させる結果となった。

 比喩ではなく、文字通り火の着いた魏軍の兵達は火だるまになりながら蜀軍に突撃してくる。

 徐質の兵士達は、誰一人として生き残らない、まさに全滅するまで戦った。

 その結果、完全に罠に嵌めた蜀軍の方が多大な被害を出したほどである。

 それは魏兵の正面に配置されていた張嶷の部隊が極めて甚大な被害を受け、ほぼ壊滅状態となり、廖化や姜維の援護がなければ魏兵を取り逃していたかもしれないくらいだった。

「……恐ろしいものですな」

 戦いが終わって張嶷が姜維に向かって言う。

「諸葛丞相がかつて言われた事がある。魏の人材のどれほど豊富な事か、と。魏にこの徐質と同等の者が他にもいるとは思えないが、魏の人材の豊富さを見た気がする」

 姜維は、もはや元が誰だったかも分からないほどに焼けただれた徐質の首を見ながら言う。

「いずれにしても、想定外の苦戦だったとはいえ私の策の通りに事は進んでいる。次の段階に移るぞ、撤収を急げ!」

 姜維は張嶷と廖化に命じる。

「魏の人材、か」

 姜維は徐質の首を見て思う。

 張嶷にはそう言ったものの、魏にはおそらくこの徐質と同等の実力者がまだ他にもいるだろうと言う事は、嫌でも予想が付く。

 それに対して、これほどの烈士が今の蜀にいるだろうか、と。

 また、これほど狂気に満ちた命令であっても命を懸けて遂行しようとする兵がどれだけいるだろうか、とも。

 諸葛丞相、あなたのおっしゃられた通り、魏の人材のなんと豊富な事か。それに対し我が蜀軍の人材の乏しさといったら。諸葛丞相、あなたが生きておられたら。
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