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第2話 目標は国一番の冒険者

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 ハッキリ言って俺の選択は大正解だった。

 俺が考えていたよりも、テリーさんは獲物を残してきていた。
 収納スキル持ちの俺が全部持って帰ったことで、収入が3倍に跳ね上がったのだ。
 テリーさんは半分くれると言ったけれど、さすがに悪かったので1/3で了解してもらった。


 そうなるとテリーさんの残り物を漁ってきた腐肉食らいスカベンジャーたちが悔しそうにしている。
 それはいいんだけど、俺にとってはちょっとマズかった。
 俺の収納スキル、バレバレじゃん。

 そのことはテリーさんも思ったらしく、俺が独り立ちできるまで一緒に組むことになった。
 ケガの功名とはこのことである。



 だから俺はテリーさんがやらなくていいことを率先して全部やった。
 荷物運びだけでなく、食事の支度やポーション、テントなどの備品の点検なんかだ。

 金の交渉は大人のテリーさん任せだ。
 装備や武器の手入れは自分でやるか、プロに頼むというのがテリーさんなので触ったことはなかったが、俺にその方法をしっかり教えてくれた。

 俺の足が遅くなったら休憩も入れてくれるし、休みの日には効率のいい体の鍛え方も教えてくれる。
 子どもだからしっかり寝ろと早寝はさせられるけどな。

 何このヒト。
 めちゃめちゃいいヒトじゃん。


 テリーさんはすぐにCにランクアップし、俺を連れてダンジョンに行くようになった。
 きっともっと強いダンジョンに挑みたかったんだろうけど、俺に合わせたものだ。

 俺は情報を集めて、案内係をやった。
 鍵開け練習して、宝箱を開けられるようになった。
 2人でする攻略は面白くって、金もどんどん儲かるようになった。
 一緒にゲラゲラ笑って、本当の兄弟みたいに仲良くなったんだ。


 そんなある日、俺はダンジョンでドジってしまった。
 罠に引っかかって隠し部屋に入ってしまったのだ。
 しかもその罠、俺は何にもない空き部屋に閉じ込められて、外では魔獣が大量に沸く仕組みだったのだ。

「ライル! 俺はいいからお前はなんとか出る方法を考えろ‼」
「わかった‼」


 でもその時頭の中によぎったのだ。
 これは多分ゲームのイベントだ
 出る方法は2つあって、1つは外の魔獣をある一定以上倒さないとクリアにならないってね。

 その瞬間、俺の頭の中に膨大な記憶の波が押し寄せてきた。
 前世の記憶を取り戻したんだ。
 ここは元の世界でやってたRPGだ。

 もう1つのクリア条件がある。
 このイベントはボーナスステージで、戦ってもらっている間にこの部屋の中に隠されている宝物を見つけると扉が開いて魔獣の湧きが収まるのだ。


 細かいエピソードやイベントは全然思い出せないけど、たしか魔王と七つの大罪が絡んだ手下たちと戦うものだ。
 それでレベル上げのために様々なダンジョンが用意されていた。
 

 ライルなんてキャラはいなかったが、NPCにテレンスはいた。
 リーダーシップのある冒険者で、女にモテモテのイケメンだった。
 フレンドプレイヤーと対戦できない時は、テレンスが率いるNPC冒険者チームと対戦して能力値を上げることができた。

 テリーさんはテレンスだったんだ……。
 だから見おぼえがある気がしたんだ。

 脇役のモテキャラなんて全く興味なかったけど、テリーさんを見ればその設定大納得だ。
 今はちょっとストイックに生きてるから、モテモテなのに女子を寄せ付けてないけどね。
 元外国貴族ってのを隠してるつもりらしい。
 バレバレだけどね。


 俺が記憶の通り、入り口から右角の壁の下の方を叩いたら、隠しボタンが見つかった。
 押すと箱が出てきて、開けると力が倍増する指輪とスクロールがあった。
 魔法が身につくスクロールで水魔法だ。

 力の指輪はテレンスさんに、水魔法はサポーターである俺がいい。
 それを取得して俺が扉を開けると、大量の魔獣たちがいなくなってテリーさんがびっくりした顔をしていた。


「ライル、よかった。無事だったんだな」

「うん、これ中にあった。テリーさんに」
 俺が指輪を渡すと、テリーさんは返そうとしてきた。

「お前が取ったんだぞ?」

「俺先に勝手に選んじゃったよ。
 魔法のスクロールがあったんだ。
 水魔法。これで一生食いっぱぐれないだろ?」


 するとテリーさんはガハハと大声で笑って、俺の髪の毛をぐしゃぐしゃにした。

「魔法のスクロールは売れば大金になるが、中でも水魔法持ちは値千金だ。
 うまくやれば、治癒魔法だって使えるようになる。
 だが早い者勝ちとはいえ、勝手に取得したんだからこれからもガンガン働いてもらうぞ!」

「怒んないの?」

「魔法のスクロールごとき、これから攻略を進めて行けば見つかるだろ?
 俺はAランク以上の冒険者になるつもりだ。
 お前も覚悟してついてこいよ」

 うん、テリーさんは心が広い。
 魔王出現についてはとりあえず考えないでおこう。
 テレンスはイケオジだったから、だいぶ先の話だしな。

 俺、テリーさんに一生ついていきます。



 俺を入れたおかげか、テリーさんのパーティーはメンバーが少しずつ増えて行った。
 女性ばっかりなのが気にかかったが、テリーさんの男気を感じたら女はメロメロ、男は尊敬してくる。
 こういうカリスマ性ってやつは、隠しても隠しきれるものじゃない。

 でも前衛アタッカーはテリーさんで全部倒すし、斥候やシーフ、ポーターなんかは俺がやっている。
 後衛の治癒士と魔法士ぐらいしか入れられなくて、腕のいいのが女の人だったんだ。
 
 それにゲームでもテレンスのパーティーは女子率の高かったしな。


 俺たちは力をつけて行って、とうとう王都へ出ることになった。
 王都でも一、二を争うクラン『カナンの慈雨』にスカウトされたのだ。

 でもそれが俺への追放宣言につながるなんて思いもしなかった。
 俺テリーさんに『もう遅い』なんて、したくねーよ。



 それで最初に戻るわけだ。

「ライル、お前にはこのパーティーから出て行ってもらう」

「ど、どうして?」

「どうしても、こうしてもあるか!
 俺は外国出身だから、この国の当たり前のことを知らない。
 だから10歳以上の子どもで魔法が使えるものは、全員魔法学校へ行かなきゃいけないなんて知らなかったんだ。
 お前、水も火も使えるじゃねーか!」


 あっ、俺も忘れてた。
 孤児院の時は、魔力はちょっとあるくらいで学校行くほどではなかったんだよ。
 でもスクロールで魔法が使えるようになると、記憶のおかげで効率よく育成できるから楽しくて頑張っちまったんだ。


「『カナンの慈雨』にパーティーメンバーの年齢と主なスキルを提出したら、子どもの魔法士を隠したら犯罪になるって話じゃねーか。
 お前も保護者の俺も、両手が後ろに回るところだったんだぞ!」

「ごめん、テリーさん」


 テリーさんは言いたいだけ言うと、落ち着いた様だった。

「俺はこのクランで、もっと攻略して強くなるからな。
 お前にはこれからも助けてもらわなきゃならん。
 だからしっかり頑張って勉強してこい。
 もっと高度な魔法技術を磨いて、俺と一緒に攻略へ行くぞ」


 嬉しかった。
 俺はちゃんとテリーさんに認められているんだ。

 他のパーティーメンバーの女の人たちも、俺の門出を祝福してくれた。
「ライルっておっさん臭いから、てっきりチビの童顔なんだと思ってた」発言は気になったけどな。


 俺、真剣に勉強してくっから、待っててくれ!
 テリーさんと一緒にこの国一番の冒険者になってやる!

 そう心に誓ったのだった。

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ファンタジーは設定がキモなので、私がカクヨムで書いている長編『錬金術科の勉強で忙しいので邪魔しないでください』の設定を利用しました。
そちらを読まなくてもわかるように書いたつもりです。

しかも第360話まで出てこない脇役さんの若いころの話です。


この後あとがきはございません。

お読みいただきありがとうございました。
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