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第6話

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 わたくしたちは学園を卒業し、卒業パーティーに出ることになった。

 レオナルド殿下からはドレスはおろか、エスコートの予定を聞いてくることもなかった。
 一応ぎりぎりまで待って、父にエスコートを頼んだ。

 今回の件は父にも報告済みだ。
 彼にわたくしが王妃になるよりももっとよい手土産を渡すということで、今回のパーティーに参加してもらった。


 そうして殿下はファーストダンスをわたくしとは踊らず、アイラと踊った。
 それも2曲続けてだ。それは結婚する相手とだけ踊るものだ。
 周りの貴族たちがその非常識さに驚いた。

 そうして壇上に上がって叫び出した。

「マリアンナ=ラ・トゥール、よくも我が愛しのアイリをマナー違反だ、なんだと苛めたな。
 その非道な仕打ちは国母にふさわしくはない。
 貴様との婚約を破棄する!」

「お申し出を承りました。婚約破棄に同意いたします。
 ただし、理由はあなた様とアイリという女との不貞が原因ですわね。
 わたくしはその女を苛めどころか、声をかけたこともございませんもの」

「その声をかけないというのがおかしい。無視して皆で疎外していたのだろう」

「おかしなことをおっしゃいますわね。
 だいたい紹介も受けたことのない男爵令嬢に話しかけは致しませんわ。
 殿下もわたくしの護衛騎士に話しかけないですわね?」

「なぜこの私が名前も知らぬ貴様の騎士などに話しかけねばならぬ!」

 殿下がファビアンを無視するのは、自分よりも優秀で美しい男だからだ。
 器の小さい男だ。


「ファビアンは麗しのロザリンド様のひ孫でわたくしのですわ。
 殿下とも遠縁にあたります。
 しかも父からわたくしの護衛騎士になったと紹介もいたしました。
 それでもあなた様はいつも無視なさいますわ。
 なのにどうしてわたくしが、紹介を受けていないあなた様の愛人に話しかけなくてはいけませんの?」

「愛人などと言うな。私たちは心底愛し合っているのだ」

 自分の不貞を大声で言うなど、本当に何を考えているのだろう。


「そちらのアイリという女がボストン男爵家の養女に入ったことは存じております。
 彼女が貴族令嬢の前で勝手に転んで、転ばされたと被害妄想に陥っている件で、何度かボストン男爵家と寄り親であるターナー侯爵家に抗議文を送らせていただいたこともございます。
 1度や2度ではなかったため、王宮にもその件は申し上げております」

 ここで私は言葉を切って、周りを見回した。
 ご令嬢方がわたくしの言葉に頷いている。


「それにわたくしはアイリという女に対して、マナー違反を指摘したことはございませんわ。
 それこそがマナー違反ですもの。
 彼女のマナーの悪さを指摘することは、ボストン男爵家とターナー侯爵家に対しての教育を怠っていると人前で指摘することですわ。
 だから彼らの顔を潰さないよう、後で抗議文を送っておりましたのよ。
 わたくしは家の不利益になるようなことはいたしません。
 それはターナー侯爵家も同じことだと思って、学園生であるうちは我慢しておりましたのよ」

「貴様! まだアイリを女などと言うのか?」

 逆ギレですか? 好都合です。


「わたくし達はもう卒業し、大人の仲間入りをしました。
 マナーも守れない、人前でダラダラ泣く、紹介すらされたことのない、そんな貴族とは思えない男爵家の養女など女と言うしかないですわ。
 それなのにボストン男爵家及びターナー侯爵家の教育が行き届いていないことを理由にわたくしを責めるなんて……。
 我がラ・トゥール公爵家を貶める陰謀としか思えません。
 しかも我が家の寄り子でない多くの令嬢たちは、アイラがターナー嬢と2人でいるときに彼女がケガをしたり、制服が汚れたりするのを目撃しております。
 それにターナー嬢は、わたくしに成り代わって殿下の婚約者になる計画を平民の女生徒に聞かれておりますわ。
 つまり犯人が誰かは言わなくてもわかりますわね」


 わたくしは手袋を外してキーラ=ターナーに投げつけた。

「キーラ=ターナー嬢。わたくしを陥れた貴女に決闘を申し込みます。
 これはわたくしたちのどちらかが死ぬまでの戦いです」

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「ボストン男爵家とターナー侯爵家に対しての教育を怠っている」の娘はアイラだけでなくキーラのこともです。
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