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第5話
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その話はレオナルド殿下とわたくしが婚約破棄した後、婚約者のいないキーラと白い結婚をして、アイラを側妃に迎えるという話だった。
キーラは王となったレオナルド公認でファビアンを愛人にするという。
そしてファビアンがラ・トゥール公爵家の親戚であることを利用して、公爵家を乗っ取ろうとしているのだ。
「あたしに王妃教育なんて出来っこないから、キーラがこの国を運営してくれたらすごく助かる。
キーラパパだって、あのクソ公爵家より権力が強くなるはずよ。
どうせ公爵家もファビーのものになるしね」
「まぁしょうがない子ね、アイラ。
でもわたくしならそれが可能なのは否定しないわ」
立ち聞きした女生徒は前述した中立派のエリントン伯爵令嬢と親しくしており、この話を彼女にしたのだ。
これってほぼ国家に対する反逆計画だ。
そんな話を平民とはいえ、人がいるところでするなんて馬鹿としか思えない。
エリントン伯爵令嬢は中立派の貴族たちにこの話をしており、ターナー侯爵家に近寄らないよう注意を呼び掛けていた。
その流れでウチにも声がかかったのだ。
ハッキリ言うと知らないのはターナー侯爵家とその寄り子、レオナルド殿下とその側近たちだけなのだ。
そして一番嫌なことが起こった。
ファビアンにキーラが近づいてきたのだ。
彼女はゲームの内容通り、元義母義妹のことを当てこすり、わたくしからもひどい目に遭っていることを慰められたという。
「どんな目に遭ってもあなたはきれいなまま。どこも汚れていないわ」
ゲームのアイラの決め台詞をキーラが自信満々に言う。
ファビアンにはあらかじめ彼女たちから何か言われても「ありがとう」と立ち去るように伝えてあった。
その時に手をベタベタと触られたらしい。
彼の手が洗い過ぎて真っ赤になっている。
ファビアンは未遂だったとはいえ元義母たちの暴力に遭い、わたくし以外の女性から触られることをものすごく嫌う。
しかもキーラの彼に送る視線が元義母たちと同じ性欲に満ちた目だったそうだ。
「マリー、アイツらめちゃめちゃ気味悪いんだけど切り殺していい?
魔法でもいいよ」
「ダメよ、ファビアン。あなたが手を汚すことないわ」
「アイツら、あのことを知ってたんだ。
ラ・トゥール公爵家だけですませて、誰も話すはずないのに」
「そうね、どうやって知ったのかしら?」
ゲームの知識だよとはいえない。
「マリーのこともものすごく悪く言うんだ。
取り合ってはいけないというから反論できなかったけどすごくイヤだった。
俺のマリーはこんなにきれいで優しくて愛しいのに……」
「ファビアン……」
前世でのわたくしの推しが誰だったかはもう思い出せない。
いくら顔や声が素敵でも、自分のことを毛嫌いする相手を好きになれるほど心が広くないからだ。
だから初めは仲良くなかったけど、どんどんわたくしに心を開いてくれるファビアンを心から好きになった。
「手が真っ赤ね。貸して、クリームを塗ってあげるわ」
ファビアンは黙って椅子に座るわたくしの前に跪いて手を差し出した。
わたくしは香りのついていないハンドクリームを手に取り、自分の体温で温めながら丁寧に彼の手に塗った。
てのひらから甲へ、さらに指先、指の股にいたるまで丁寧に。
そのうち指を絡めるように触れると、ファビアンも応じてきた。
わたくしたちが触れ合えるギリギリの行為。
いや、他人に見られたらアウトだろう。
ファビアンの眼がわたくしを求めているから。
その眼を直に見たらわたくしは抗えなくなってしまう。
だから彼の手だけを見つめることにする。
だってわたくしもファビアンを愛しているから。
「もう少しだけ我慢してね。全部終わってうまくいったらご褒美上げる」
「ほんとに? じゃあ楽しみにしてる」
わたくしは成人である15歳になった。
このままでは卒業と同時に王宮入りし、半年後に結婚だ。
殿下が婚約を破棄したいなら、是非してもらいたい。
わたくしだって全く結婚したくない。
彼が馬鹿でなければ、王宮から婚約破棄の打診が来るだろう。
その時にいくばくかの慰謝料をもらって、ファビアンと地方の領地に引っ込むつもりだ。
もし乙女ゲーム通りの馬鹿ならば、わたくしにも考えがある。
キーラは王となったレオナルド公認でファビアンを愛人にするという。
そしてファビアンがラ・トゥール公爵家の親戚であることを利用して、公爵家を乗っ取ろうとしているのだ。
「あたしに王妃教育なんて出来っこないから、キーラがこの国を運営してくれたらすごく助かる。
キーラパパだって、あのクソ公爵家より権力が強くなるはずよ。
どうせ公爵家もファビーのものになるしね」
「まぁしょうがない子ね、アイラ。
でもわたくしならそれが可能なのは否定しないわ」
立ち聞きした女生徒は前述した中立派のエリントン伯爵令嬢と親しくしており、この話を彼女にしたのだ。
これってほぼ国家に対する反逆計画だ。
そんな話を平民とはいえ、人がいるところでするなんて馬鹿としか思えない。
エリントン伯爵令嬢は中立派の貴族たちにこの話をしており、ターナー侯爵家に近寄らないよう注意を呼び掛けていた。
その流れでウチにも声がかかったのだ。
ハッキリ言うと知らないのはターナー侯爵家とその寄り子、レオナルド殿下とその側近たちだけなのだ。
そして一番嫌なことが起こった。
ファビアンにキーラが近づいてきたのだ。
彼女はゲームの内容通り、元義母義妹のことを当てこすり、わたくしからもひどい目に遭っていることを慰められたという。
「どんな目に遭ってもあなたはきれいなまま。どこも汚れていないわ」
ゲームのアイラの決め台詞をキーラが自信満々に言う。
ファビアンにはあらかじめ彼女たちから何か言われても「ありがとう」と立ち去るように伝えてあった。
その時に手をベタベタと触られたらしい。
彼の手が洗い過ぎて真っ赤になっている。
ファビアンは未遂だったとはいえ元義母たちの暴力に遭い、わたくし以外の女性から触られることをものすごく嫌う。
しかもキーラの彼に送る視線が元義母たちと同じ性欲に満ちた目だったそうだ。
「マリー、アイツらめちゃめちゃ気味悪いんだけど切り殺していい?
魔法でもいいよ」
「ダメよ、ファビアン。あなたが手を汚すことないわ」
「アイツら、あのことを知ってたんだ。
ラ・トゥール公爵家だけですませて、誰も話すはずないのに」
「そうね、どうやって知ったのかしら?」
ゲームの知識だよとはいえない。
「マリーのこともものすごく悪く言うんだ。
取り合ってはいけないというから反論できなかったけどすごくイヤだった。
俺のマリーはこんなにきれいで優しくて愛しいのに……」
「ファビアン……」
前世でのわたくしの推しが誰だったかはもう思い出せない。
いくら顔や声が素敵でも、自分のことを毛嫌いする相手を好きになれるほど心が広くないからだ。
だから初めは仲良くなかったけど、どんどんわたくしに心を開いてくれるファビアンを心から好きになった。
「手が真っ赤ね。貸して、クリームを塗ってあげるわ」
ファビアンは黙って椅子に座るわたくしの前に跪いて手を差し出した。
わたくしは香りのついていないハンドクリームを手に取り、自分の体温で温めながら丁寧に彼の手に塗った。
てのひらから甲へ、さらに指先、指の股にいたるまで丁寧に。
そのうち指を絡めるように触れると、ファビアンも応じてきた。
わたくしたちが触れ合えるギリギリの行為。
いや、他人に見られたらアウトだろう。
ファビアンの眼がわたくしを求めているから。
その眼を直に見たらわたくしは抗えなくなってしまう。
だから彼の手だけを見つめることにする。
だってわたくしもファビアンを愛しているから。
「もう少しだけ我慢してね。全部終わってうまくいったらご褒美上げる」
「ほんとに? じゃあ楽しみにしてる」
わたくしは成人である15歳になった。
このままでは卒業と同時に王宮入りし、半年後に結婚だ。
殿下が婚約を破棄したいなら、是非してもらいたい。
わたくしだって全く結婚したくない。
彼が馬鹿でなければ、王宮から婚約破棄の打診が来るだろう。
その時にいくばくかの慰謝料をもらって、ファビアンと地方の領地に引っ込むつもりだ。
もし乙女ゲーム通りの馬鹿ならば、わたくしにも考えがある。
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