ボクとサナ ~淫魔はミステリーに恋し、ロジックを愛する~

papporopueeee

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11. 証言:佐藤 津

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「嘘……ですか? そんなつもりは全くないのですが……」

 津に演技しているような様子は見られない。
 三葉の言葉に本当に心当たりがないようだ。

「ふっふっふ、しらばっくれるつもり? だったら、この発言にはどう責任を取るつもりかしら!」



” なので、私と近藤先生は部員の誰かが戸締りをした後に誤って持ち帰ったのだろうと結論付けました ”



「? それは真実ですよ。部員の誰かが誤って持ち帰ったと結論付けたから、近藤先生も大事にはしたくないという私の意向を汲んで口止めをしてくれたわけですから」
「そこじゃないわ、サトシン。いい、みんな。この発言には、意図的な隠蔽が含まれているのよ」

 隠蔽ということは、津が何かしらの事実を隠しているということだ。

 考えてみても、シオンにはまったく見当がつかない。
 写真部部員ならわかるのかもと考えたが、純夏も嶺二も得心がいっているようには見えなかった。

「…………ああっ、そういえば相田さんも居ましたね」

 ぽつりと、津が呟いた。

「そうっ! 部室の鍵紛失が発覚した時、私も現場に居合わせてたのよ。つまりサトシンは意図的に私の存在を隠蔽し、いなかったことにしようとした。これは怪しいわ!」

 三葉は当事者だったため、津の話と事実の差異に気付けたということだったのか。
 それならば、三葉だけが気付いたというのも納得がいく。

「すみません、相田さんも居たということを忘れていました」

 津は申し訳なさそうに三葉へ謝罪した。

 反応を見る限り津が三葉のことを忘れていたのは本当に思えるが、これはあくまで感覚的な判断だ。
 そもそもシオンは津のことをあまり知らない。

 三葉は津が意図的に嘘を吐いたと言っている。
 ならばその意図こそが重要だ。

 津は一体なんのために三葉の存在を隠したのだろうか。

「もしも佐藤先生が意図して相田さんの存在を隠したのだとしたら、その目的はなんなのでしょうか?」
「それは簡単よ。さっきサトシンは言ったでしょう、部長である私が鍵を持ち帰ったと思っているって。つまり、私に容疑を向けるために、鍵紛失の発覚現場から私を消したのよ!」

 ビシッ、と津に人差し指を突き付けながら、三葉は高らかに宣言した。

 確かに紛失の発覚現場に三葉が居た場合、そのまま鍵を誤って持ち帰るなんてことはありえない。
 津が隠蔽することによって、三葉が容疑者になったことは間違いない。

 しかし、津が三葉に容疑をかける理由なんてあるのだろうか。

「私が相田さんに容疑を向ける理由なんてないと思うのですが……。相田さんは心当たりがあるんですか?」

 津はシオンと同じ疑問を口にした。

 それに対し、三葉は――

「それは知らないわ!」

 堂々と、そう宣言して見せた。
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