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9. 証言:近藤 万紀
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「今日写真部の鍵の持ち出しをしたのは、そこの3人だな」
「まず朝にビニール袋を提げて相田が職員室にやってきた」
「相田は佐藤先生に挨拶をしてから、鍵を持って行った」
「鍵の返却に来たのは15分後くらいだったな。朝のホームルームが始まるギリギリの時間だった」
「次に来たのは烏丸だな。昼休み入ってから3分も経過してなかったから、授業を終えた先生たちが職員室に戻ってくるよりも早かった。お前、廊下走ったろ」
「烏丸が鍵を返しに来たのは、昼休みが終わる直前だったな」
「放課後に最初に来たのは倉持だ。佐藤先生に部室利用の申告をしてから、鍵を持って行ったよ」
「鍵はまだ返却されてないから、写真部員の誰かしらが持ってるんだろう。誰が所有しているかは常にハッキリさせとくようにな」
「鍵は私が持ってるわ。ちゃんと戸締りもしてあるから安心していいわよ」
「そりゃ安心だ。倉持が持ってた方がもっと安心だけどな」
万紀からの証言に目新しい情報はなかった。
このままだと結局容疑者は3人のままだ。
なんとか情報を引き出さないと……。
「今日鍵を借りたのはこの3名だけという情報に間違いはありませんか?」
「ないな」
「近藤先生が席を外している間に持ち出した生徒がいる可能性は?」
万紀は鍵の番人であり、鍵の持ち出しを全て把握しているが例外もある。
万紀は授業の為に職員室を離れることはないが、一日中席に座っているわけではない。
席を外している最中は他の教師が鍵の番人を引き継いでいるはずなのだ。
「それもないな」
「っ……確かですか?」
「今日は数回席を外してるが、どれも短い時間だし必ず他の先生に鍵の管理を頼んでる。生徒が勝手に持ち出さないようにな。鍵の持ち出しは記帳もしているし、それを見た限りでは写真部部室の鍵を持ちだしたのはその3人で間違いない」
「……近藤先生が席を外した短い時間というのは、5分以内ですか?」
「まあ、そんなところだな。今日はトイレでしか席を外していない」
『……サナ、鍵の持ち出しに間違いがないことを”確認”したい』
『へぇ、教師を疑うのか?』
『逆だよ。疑っていないからこそ、ここで可能性を潰しておきたい』
万紀の知らない鍵の持ち出しがあるとすれば、パターンは2つだ。
パターン1: 教師が記帳をしなかった
パターン2: 生徒が教師の目を盗んで勝手に持ち出した
鍵は持ち出した後に返却する必要がある。
万紀が席を外した時間が5分程度しかないのであれば、どちらのパターンでも部室に侵入した後の鍵の返却が困難だ。
万紀が嘘を吐いている可能性もあるが、嘘を吐く理由がいまのところ考えられない。
根拠がない以上、万紀は中立な存在として正直に発言しているとみなすべきだろう。
『シオンがそうしたいならそうすればいい。アタシはお前の命令に従うだけさ』
『”今日、写真部部室の鍵を職員室から持ちだしたのは相田三葉、倉持嶺二、烏丸純夏の3人だけだ”』
『”YES”』
シオンの手の甲に再び光が灯り、浸食の痕が歓喜するように蠢く。
紋様を描きかけた線は数センチほど伸びてから止まった。
これで5センチを超え、代償が更に重くなった。
『クックッ、気分はどうだ? お望み通りの結果だぜ?』
『……あんまり良くはないかな』
結局、容疑者は純夏と嶺二の2人だけとなってしまった。
「まず朝にビニール袋を提げて相田が職員室にやってきた」
「相田は佐藤先生に挨拶をしてから、鍵を持って行った」
「鍵の返却に来たのは15分後くらいだったな。朝のホームルームが始まるギリギリの時間だった」
「次に来たのは烏丸だな。昼休み入ってから3分も経過してなかったから、授業を終えた先生たちが職員室に戻ってくるよりも早かった。お前、廊下走ったろ」
「烏丸が鍵を返しに来たのは、昼休みが終わる直前だったな」
「放課後に最初に来たのは倉持だ。佐藤先生に部室利用の申告をしてから、鍵を持って行ったよ」
「鍵はまだ返却されてないから、写真部員の誰かしらが持ってるんだろう。誰が所有しているかは常にハッキリさせとくようにな」
「鍵は私が持ってるわ。ちゃんと戸締りもしてあるから安心していいわよ」
「そりゃ安心だ。倉持が持ってた方がもっと安心だけどな」
万紀からの証言に目新しい情報はなかった。
このままだと結局容疑者は3人のままだ。
なんとか情報を引き出さないと……。
「今日鍵を借りたのはこの3名だけという情報に間違いはありませんか?」
「ないな」
「近藤先生が席を外している間に持ち出した生徒がいる可能性は?」
万紀は鍵の番人であり、鍵の持ち出しを全て把握しているが例外もある。
万紀は授業の為に職員室を離れることはないが、一日中席に座っているわけではない。
席を外している最中は他の教師が鍵の番人を引き継いでいるはずなのだ。
「それもないな」
「っ……確かですか?」
「今日は数回席を外してるが、どれも短い時間だし必ず他の先生に鍵の管理を頼んでる。生徒が勝手に持ち出さないようにな。鍵の持ち出しは記帳もしているし、それを見た限りでは写真部部室の鍵を持ちだしたのはその3人で間違いない」
「……近藤先生が席を外した短い時間というのは、5分以内ですか?」
「まあ、そんなところだな。今日はトイレでしか席を外していない」
『……サナ、鍵の持ち出しに間違いがないことを”確認”したい』
『へぇ、教師を疑うのか?』
『逆だよ。疑っていないからこそ、ここで可能性を潰しておきたい』
万紀の知らない鍵の持ち出しがあるとすれば、パターンは2つだ。
パターン1: 教師が記帳をしなかった
パターン2: 生徒が教師の目を盗んで勝手に持ち出した
鍵は持ち出した後に返却する必要がある。
万紀が席を外した時間が5分程度しかないのであれば、どちらのパターンでも部室に侵入した後の鍵の返却が困難だ。
万紀が嘘を吐いている可能性もあるが、嘘を吐く理由がいまのところ考えられない。
根拠がない以上、万紀は中立な存在として正直に発言しているとみなすべきだろう。
『シオンがそうしたいならそうすればいい。アタシはお前の命令に従うだけさ』
『”今日、写真部部室の鍵を職員室から持ちだしたのは相田三葉、倉持嶺二、烏丸純夏の3人だけだ”』
『”YES”』
シオンの手の甲に再び光が灯り、浸食の痕が歓喜するように蠢く。
紋様を描きかけた線は数センチほど伸びてから止まった。
これで5センチを超え、代償が更に重くなった。
『クックッ、気分はどうだ? お望み通りの結果だぜ?』
『……あんまり良くはないかな』
結局、容疑者は純夏と嶺二の2人だけとなってしまった。
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