ボクとサナ ~淫魔はミステリーに恋し、ロジックを愛する~

papporopueeee

文字の大きさ
上 下
15 / 68
6. 証言:倉持 嶺二

2

しおりを挟む
『最初は威勢よかったのになぁ。中折れしちまったか?』
『う、うるさいな……。サナは何か気付いたところとかないの?』
『まったくねぇな。アタシはあくまでいち観客として楽しませてもらってるぜ?』
『ミステリ好きのくせに役に立たない……』
『ククッ、だったら”確認”でも使ってみるか?』

 確かに”確認”を使えば新たな情報を得ることはできる。
 しかし、確認に対してサナが”NO”と答えた時の浸食はいまの比ではない。
 代償の重さも一気に跳ね上がってしまう。

 ”確認”はもっと盤面が煮詰まった時、その名前通り確認のために使うべき力だ。
 いまはまだ思考に時間を割くべきだろう。

「……」

 思考を巡らせていると、先ほどの嶺二と三葉のやりとりが思い起こされた。
 嶺二が声を荒げたあの時の言葉……。

 ”純夏が犯人でないのなら、嶺二が犯人である”。

 それは当たり前の話だ。
 容疑者が2人いて、片方が犯人じゃなければもう片方が犯人なのは当然だ。

 しかし嶺二に怪しいところは見受けられない。
 これでは純夏を信じたくても、嶺二を疑うことはできない。

 だったら、嶺二を犯人だと決めつけてみようか。
 怪しいから疑うのではなく、最初から嶺二を犯人だと仮定してみよう。

 その上で、どうやって嶺二を告発するかを考えるのだ。

「……もしも……もしも倉持先輩が犯人なのだとしたら、プリンを食べたタイミングは放課後の入室直後しかありえない」
「おい、まだ僕を疑っているのか?」
「あくまでもしもの話です。倉持先輩がプリンを食べることが出来たのは、先輩が一人だったのは部室に入ってから相田先輩が来るまでの間だけですよね」
「そうだよ、その短い時間だけだ。だから僕は疑わしくないんだろ?」

 嶺二の言葉は聞き流す。
 疑わしくないとかはどうでもいい。

 いまだけは、プリンを食べたのは嶺二で確定しているのだ。

 入室直後に嶺二は冷蔵庫からプリンを取り出して食べた。
 巨大プリンは食べるのに時間がかかっただろう。
 食べ終わってから三葉が入室するまでに大した時間は経過していないはずだ。

 嶺二はその短い時間で自身がプリンを食べた痕跡を隠した。
 入室した三葉からも疑われないくらいに、完璧に証拠を隠滅し…………。

 そうだ、容器……プリンの容器はどこにいった?

 巨大プリンの容器は当然のようにプリンよりも大きい。
 そう簡単に処分できる物ではない。

 昼休みに純夏が食べたのだとしたら処分も可能だろう。
 放課後に嶺二が食べたのだとしたら、はたして処分はできただろうか。

 処分が不可能であれば、残された選択は隠すことだけだ。
 そして嶺二が容器を隠すことができたとしたら、それは部室の中か、もしくは――

 シオンの視線が無意識に動き、瞳と嶺二が一直線に並ぶ。

「な、なんだよ」

 シオンが視線を向けた先。
 テーブルの上の嶺二の鞄。

 まるで視線を遮るように、嶺二の体は鞄の前に陣取られていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁の花は謎を解く

しぎ
ミステリー
パーティ会場の隅で壁の花となった令嬢。彼女に話しかけた青年は次々と風変わりな問題を出し始めた… ウミガメのスープ風謎解きです。

一輪の廃墟好き 第一部

流川おるたな
ミステリー
 僕の名前は荒木咲一輪(あらきざきいちりん)。    単に好きなのか因縁か、僕には廃墟探索という変わった趣味がある。  年齢25歳と社会的には完全な若造であるけれど、希少な探偵家業を生業としている歴とした個人事業者だ。  こんな風変わりな僕が廃墟を探索したり事件を追ったりするわけだが、何を隠そう犯人の特定率は今のところ百発百中100%なのである。  年齢からして担当した事件の数こそ少ないものの、特定率100%という素晴らしい実績を残せた秘密は僕の持つ特別な能力にあった...

聖女の如く、永遠に囚われて

white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。 彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。 ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。 良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。 実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。 ━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。 登場人物 遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。 遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。 島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。 工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。 伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。 島津守… 良子の父親。 島津佐奈…良子の母親。 島津孝之…良子の祖父。守の父親。 島津香菜…良子の祖母。守の母親。 進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。 桂恵…  整形外科医。伊藤一正の同級生。 遠山未歩…和人とゆきの母親。 遠山昇 …和人とゆきの父親。 秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純一
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

【毎日更新】教室崩壊カメレオン【他サイトにてカテゴリー2位獲得作品】

めんつゆ
ミステリー
ーー「それ」がわかった時、物語はひっくり返る……。 真実に近づく為の伏線が張り巡らされています。 あなたは何章で気づけますか?ーー 舞台はとある田舎町の中学校。 平和だったはずのクラスは 裏サイトの「なりすまし」によって支配されていた。 容疑者はたった7人のクラスメイト。 いじめを生み出す黒幕は誰なのか? その目的は……? 「2人で犯人を見つけましょう」 そんな提案を持ちかけて来たのは よりによって1番怪しい転校生。 黒幕を追う中で明らかになる、クラスメイトの過去と罪。 それぞれのトラウマは交差し、思いもよらぬ「真相」に繋がっていく……。 中学生たちの繊細で歪な人間関係を描く青春ミステリー。

パンアメリカン航空-914便

天の川銀河
ミステリー
ご搭乗有難うございます。こちらは機長です。 ニューヨーク発、マイアミ行。 所要時間は・・・ 37年を予定しております。 世界を震撼させた、衝撃の実話。

物言わぬ家

itti(イッチ)
ミステリー
27年目にして、自分の出自と母の家系に纏わる謎が解けた奥村祐二。あれから2年。懐かしい従妹との再会が新たなミステリーを呼び起こすとは思わなかった。従妹の美乃利の先輩が、東京で行方不明になった。先輩を探す為上京した美乃利を手伝ううちに、不可解な事件にたどり着く。 そして、それはまたもや悲しい過去に纏わる事件に繋がっていく。 「✖✖✖Sケープゴート」の奥村祐二と先輩の水野が謎を解いていく物語です。

処理中です...