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暴走の買い物編

楽しいのための準備

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「……うしっ、化粧はこんなもんか?」
「はい、いい感じですね。練習したんですか?」
「まあ、せっかく動画撮ってもらったんだから、少しは上手くならないとな」
「とても上手くなっていると思います。では、次は洋服ですね」
「……」
「そんなに期待をされても、今日はお出かけなんですからえっちはなしですよ?」
「逆だよ! ちょっかい出されないか不安だったんだよ!」



「髪の毛のセット、ボクがやってもいいですか?」
「セットって、下ろすだけだろ?」
「下ろすだけでも、櫛は入れるべきです。さ、座ってください」
「お、おう……」
「……ネコの毛はさらさらとしていますね。櫛がこんなに滑るなんて、手ごたえがなくて物足りないくらいです」
「それ、褒めてるのか?」
「はい。確かに、この髪質だったら手櫛だけでも整えられてしまいますね。羨ましいです」
「ミミはくせっけ毛なのか?」
「そうですね。地毛は短くしているから目立ちませんが、伸ばすと大変なんです。……髪を短くしている理由はウィッグのためと言いましたが、くせっ毛なのも理由の1つなのは間違いないですね」
「ふーん……でもさ、くせっ毛だからこそ可愛い髪型ってのもあるだろ。髪って簡単には伸ばせないから難しいかもだけど、いつかは地毛で女装してみるのもいいんじゃないか?」
「それは……ネコの希望ですか? それとも、ボクを気遣ったのですか?」
「さあ、わかんね。ただ、思ったことを口にしただけだよ」
「……そうですか」

 櫛が髪を通る音だけが部屋の中に流れる。

「ところで、ネコは女装したのにあの口調にはならないんですか?」
「あ、あの口調って?」
「あの、クラスに一人はいる仕切りたがりのうざい女子っぽいやつです」
「うっ……的確すぎて傷つくぞ、お前それ」
「もしかして、あれって誰かの真似だったんですか?」
「そうだよ。咄嗟に女子っぽい口調で喋ろうとしたら、うちのクラスの女子のマネしてた。お前の言う通り、いつもうるさくて男子にも躊躇なく突っかかってくる奴」
「へえ、やっぱりどこにでも一人はそういう女子がいるんですね。で、真似しないんですか?」
「しねーよ、恥ずかしい」
「いいじゃないですか、可愛かったですよ?」
「ぜーったいにもうあれだけはしないって」
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