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親睦の化粧編

一人きりのファッションショー

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 ミミはスタンド式の姿見を翔斗の前に置いた。当然のように、鏡には翔斗の姿が映っている。

「それじゃあ、ごゆっくり♡」
「ちょっと、まっ……」

 ミミはリサを連れて部屋を出てしまった。翔斗は鏡と共に部屋に取り残される。

「……」

 鏡の中の自分は困惑した表情だ。この状態で残されてどうすればいいのか。いや、やることはわかっている。足元に落ちている布切れを身に着ければいい。もしくは、持ってきたブーメランパンツを履くかだ。

「これはちょっと、なあ?」

 紐パンは履きたくない。女性用の下着すら履いたことないのに、初めてが紐はハードルが高すぎる。しかしここで履かなければミミを裏切ることになる。ミミは軽口ではあったが、紐パンが恥ずかしいというのは間違いないのだ。いっしょに履く約束はミミの捏造だが、それを破るのも後味が悪い。

「なあ、どうすればいいと思う?」

 自嘲気味に鏡に対して疑問を投げかける。鏡に対して話しかけるなんて、冷静でいるつもりで翔斗も雰囲気に呑まれているのかもしれない。

 自分のしたいことをすればいい。鏡の中の自分は、そう言っている気がした。

「……そういえば、まだちゃんと見てなかった」

 口紅を塗り終わった途端にミミに襲われたせいで、まだ化粧が終わった自身の顔をちゃんと見ていなかった。

「……なんか、すごいな」

 自分でメイクをした時もそれなりの自信はあった。しかしミミに施してもらった化粧はレベルが違う。

 まるで――

「本当に女の子になったみたいだ」

 それも可愛い。特に目がいい。シャープな特徴は残っているが、サイズがずっと大きい。自分でメイクをしたときは疎んじていた目が、今はこの目で良かったと思えるほどに。

「……こ、こんな感じか?」

 鏡の中で少女がぎこちなく微笑んだ。へにょへにょと表情を変えては、ぎこちなく顔の前でピースを構えたり、胸の前で手を合わせたり、慣れないポーズを取ったり。

 我ながら拙いことはわかっている。それでも、可愛いと思っている自分がいる。

(すごい……すごいすごいすごい!)

 ただ鏡の前に立っているだけで楽しい。少し表情を変えるだけで興奮してしまう。

(確か、ミミはこんなポーズで……)

 髪をかき上げてみたり。

 前かがみになって覗き込んでみたり。

 口元に手を当てながら横目で様子を窺ってみたり。

「……オレもこういうポーズ似合うんだな」

 ポーズの完成度は低いはずなのに、様になっている。ミミのポーズのチョイスがそれだけいいということなのだろう。

(やっぱ、ミミはこういうの慣れてんだな)

 ふと、口元に当てた手からの匂いが気になった。ミミが精液をぶちまけた右手。ティッシュで拭き取っても、まだその匂いが染みついている。

 すんすんと、鼻を鳴らす音が部屋に響いた。
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