女として兄に尽くすよう育てられた弟は、当たり前のように兄に恋をする

papporopueeee

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主従

悪い人

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『どうして、玲をずっと従者として見ていたのですか?』

 それは、玲と出会った時からそうだったから。
 はじめましての瞬間から、玲は俺の弟ではなかった。
 既に、従者として教育された後だった。

『どうして、玲をずっと人として扱わなかったのですか?』

 それは、家のみんながそうしていたから。
 あの人も、親父も、玲自身も。
 誰もが玲が従者であることを異常としていなかった。

『どうして、玲の扱いに疑問を持たなかったのですか?』

 それは――

『外の世界で普通の弟というものを知っておきながら、どうして玲を従者のままとしていたのですか?』

 ――それは、俺が変化を疎んだから。

 宗田の家が異常であるという事実を知っておきながら――
 玲という異常を認知しておきながら――

 ――家族は誰もそれをおかしいとは言わなかったから――

 ――だから俺も、それで良いのだと思い込んだ。

 だって俺が口を出せば、俺が責任を持たなければならない。
 玲を普通にしたいのなら、宗田の異常に俺一人で立ち向かわなければならない。

 そんなのは御免だ。
 ただでさえこの家が好きではないのに、首を突っ込んでかき乱したくなんてない。

 玲自身は己の境遇を恨んでいない。
 むしろ外の世界の過酷さを知らないままに家事だけをしていれば生きられるのだから、ある意味では幸せでもあるはずだ。

 だから、このままでもいいのだと――
 玲に不満が無いのなら、これでいいのだと――

 ――そうやって、深く考えないようにしていた。

 そんな俺の現実逃避によって、玲は今日まで家畜として生きることになった。

『罪の意識はあるのですか?』

 俺が悪いのだとは思わない。
 しかし、俺は悪くないとは言えない。

 玲を助ける選択肢を、俺がずっと握りしめたままだったのは事実だから。

『償いはしていただけますか?』

 玲がそれを求めるのなら、甘んじて受け入れよう。
 玲には復讐の権利があるだろうし、俺にはそれを受ける義務があるだろうから。

 しかし――

「償いって……俺は、どうしたら許されるんだ?」

 償いとは許される為の行いであるはずだ。

 玲の人生を奪った俺は、はたして何をすれば罪を贖えるのか。

『それは――』






「一宏様……一宏様!」
「っ……」

 目の前には見慣れた顔があった。
 年齢よりも幼く見える童顔が視界いっぱいに広がっていた。

 大きな瞳。
 小さな鼻。
 長いまつ毛に、切り揃えられたさらさらとした髪。

 心配そうな顔で、俺の姿を瞳に映している――
 一見すると少女にも見える、座敷童のようなその姿は――

「…………玲?」 
「はい……私はここにいます……」

 目を覚ますと、至近距離に玲の顔があった。
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