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幕間
邪魔する者
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夜。
陽が落ちて、月が昇り。
中庭の緑たちが月光を浴びて、青白く輝き出した頃。
昼間でも宗田の家は大概静かだが、夜間はより一層静寂に満ちている。
空気がぎゅうぎゅうに詰まって、音の鳴る隙間も無いような廊下。
足を踏み下ろしでもすれば、途端に共鳴して大きな音が鳴り響きそうな空間。
人の居ない部屋は廃墟のような雰囲気さえあって、怖がりな人間であればお化けや妖怪の幻覚を見てもおかしくはない。
例え人が居ても、寝静まっていれば部屋は静寂であるはずだったが――
「っ……」
この家の主。
宗田の当主の部屋では、静寂に染み出していくような音が漏れ出していた。
「っ……っ……」
この日も主は安らかに、速やかに眠りについた。
枕から漂う懐かしさを感じる香りに誘われて、溜まった疲労による眠気に押されるままに。
しかし、今の主は寝苦しそうだ。
呻くように、艶っぽく、悩まし気な吐息を漏らしている。
そして、そんな主の吐息の音に紛れるようにして、水音も鳴っていた。
主の体にかけられた掛け布団。
その不自然に盛り上がった下半身の部分から、粘ついた水音が漏れ出ていた。
「ふーっ……♡ ふーっ……♡」
耳を澄ませば、荒い鼻息も聴こえてくる。
興奮しきった何者かが、何かにむしゃぶりついているような、そんな音も聴こえてくる。
結局は、これが主の疲れが取れない原因だった。
眠っている最中にその快眠を邪魔している者がいるのだから、疲労が抜けるはずもない。
「はーっ♡ はーっ♡」
玲には自身が主の害となっている自覚はあった。
自身の行いが主に害をもたらしていることを玲は自覚していた。
それでも、玲はそれを止めることができなかった。
あの香水を使えば、主はすぐに眠りに落ちる。
眠りに落ちた主は、そう簡単には起きない。
主が眠っていれば、またあの至福の時間を過ごすことができる。
毎日行っていた自慰では、もはや満足することはできなかった。
夜這いの味を憶えてしまった玲は、もうお行儀良く夜を過ごすなんてことできなかった。
「あぁ……♡ かずひろさま……♡」
毎日眠っている主を求め、貪り。
週に一度は主に求められ、貪られる。
玲にとって、ここ最近の日々は身に余る幸せだった。
気兼ねなく主に愛を伝えることができ、
主に愛されているかのような錯覚を得られる日々は、
自身の意思では手放すことができなくなるほどに。
したがって、この幸せな時間が終わりを告げるとすれば、
それは主に知られた時か――
「こんばんは、玲君」
――もしくは、
主と玲の仲を引き裂こうとする邪魔者が横槍を入れた時だけだった。
陽が落ちて、月が昇り。
中庭の緑たちが月光を浴びて、青白く輝き出した頃。
昼間でも宗田の家は大概静かだが、夜間はより一層静寂に満ちている。
空気がぎゅうぎゅうに詰まって、音の鳴る隙間も無いような廊下。
足を踏み下ろしでもすれば、途端に共鳴して大きな音が鳴り響きそうな空間。
人の居ない部屋は廃墟のような雰囲気さえあって、怖がりな人間であればお化けや妖怪の幻覚を見てもおかしくはない。
例え人が居ても、寝静まっていれば部屋は静寂であるはずだったが――
「っ……」
この家の主。
宗田の当主の部屋では、静寂に染み出していくような音が漏れ出していた。
「っ……っ……」
この日も主は安らかに、速やかに眠りについた。
枕から漂う懐かしさを感じる香りに誘われて、溜まった疲労による眠気に押されるままに。
しかし、今の主は寝苦しそうだ。
呻くように、艶っぽく、悩まし気な吐息を漏らしている。
そして、そんな主の吐息の音に紛れるようにして、水音も鳴っていた。
主の体にかけられた掛け布団。
その不自然に盛り上がった下半身の部分から、粘ついた水音が漏れ出ていた。
「ふーっ……♡ ふーっ……♡」
耳を澄ませば、荒い鼻息も聴こえてくる。
興奮しきった何者かが、何かにむしゃぶりついているような、そんな音も聴こえてくる。
結局は、これが主の疲れが取れない原因だった。
眠っている最中にその快眠を邪魔している者がいるのだから、疲労が抜けるはずもない。
「はーっ♡ はーっ♡」
玲には自身が主の害となっている自覚はあった。
自身の行いが主に害をもたらしていることを玲は自覚していた。
それでも、玲はそれを止めることができなかった。
あの香水を使えば、主はすぐに眠りに落ちる。
眠りに落ちた主は、そう簡単には起きない。
主が眠っていれば、またあの至福の時間を過ごすことができる。
毎日行っていた自慰では、もはや満足することはできなかった。
夜這いの味を憶えてしまった玲は、もうお行儀良く夜を過ごすなんてことできなかった。
「あぁ……♡ かずひろさま……♡」
毎日眠っている主を求め、貪り。
週に一度は主に求められ、貪られる。
玲にとって、ここ最近の日々は身に余る幸せだった。
気兼ねなく主に愛を伝えることができ、
主に愛されているかのような錯覚を得られる日々は、
自身の意思では手放すことができなくなるほどに。
したがって、この幸せな時間が終わりを告げるとすれば、
それは主に知られた時か――
「こんばんは、玲君」
――もしくは、
主と玲の仲を引き裂こうとする邪魔者が横槍を入れた時だけだった。
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