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兄と弟と弟だった人

玲は触れて欲しい

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「はぁっ……♡ ふぅっ……♡ あっ、あと、もう少し……♡」

 触れさせさえしなければいいという言い訳は、既に玲の中からは失われてしまっていた。
 今となっては、脳内には玲にとって都合の良い言い分で満たされている。

 お風呂に入ったばかりであるため、衛生的には問題ない。
 いつもしている玲に何も異常が無いことから、危険性も無い。
 主は玲にお世話をしてくれるくらいに愛してくれている。
 そして何より、主は眠っているのだから何をしてもバレはしない。

 結局は、主の目が無ければ玲の忠誠心は酷く脆いものであった。
 主に隠れてその衣服で自慰もするし、玲を信用して眠った主へ夜這いもする。

 従順な人形でいられるのは昼の間だけで、夜には淫蕩さが露呈してしまう。
 それが主に従うことだけを喜びとして教えられ育てられた、玲という人間だった。

「んっ♡ んぅっ♡ かっ、かずひろさまぁ……♡」

 主の吐息が玲の亀頭を撫でて、玲は艶やかな嬌声を漏らした。

 それは穏やかな吐息も刺激となってしまうくらいの距離ということであり、
 吐息程度でも感じてしまうくらい玲が興奮しているということでもあった。

 ここまで近づいてしまったら玲の意図とは関係なく、何か偶然が重なるだけでも接触しかねない。

「っ……っ……♡」

 突然、玲は腰の全身を止めた。
 主の唇に卑しく勃起した矮小な性器が触れてしまうというところで、玲は踏みとどまった。

 それは、まだ真に主を思う玲の良心が残っているからであり――
 それは、まだ主の吐息にくすぐられ焦らされる感覚を求める欲望からであり――

 それは、できる事なら主の方から触れてはくれないかという願望から。

「ふーっ……♡ ふーっ……♡」

 己の手の甲を咥えながら、
 呼吸の度に口内に溜めた主の匂いに興奮を覚えながら、
 玲は必死に自身の腰が動かないように耐える。

 仮に玲の妄想通りに主が好感を抱いているとしても、寝ているのだから自分から性器にキスするなんてことはありえない。
 しかし眠っているからこそ、身じろぎで意図せず玲の性器にキスする可能性もあった。

「ふーっ、ふーっ、ふーっ♡」

 もう先端から滲み出した露すら触れてしまいそうなその距離で。
 早くその唇に包まれて射精したいと急かす本能を、玲はより濃厚な性欲でどうにか抑えつける。  

 もしも主が自ら玲の性器に唇を触れさせてくれたら――
 例えそれが偶然の産物であったとしても――

 ――どんなに幸せなことだろうかと、期待を膨らませて――

 快楽ではじけそうになる全身を自分で焦らして――
 もう吐息だけで射精しそうになるのを、手を噛む痛みで何とか我慢して――
 永遠とも思える時間を耐えて――

 そしてついに――

「っ……」

 主が身じろぎをし始めた。
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