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兄と弟と弟だった人

夢精

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「んっ……っ…………すー……すー……」

 頭を叩いただけでは、玲は目を開けることすらしなかった。
 そういえば、玲は朝に弱いのだ。

「起きろっての」
「んにゃっ…………?」

 柔らかい頬を抓ると、玲が間抜けな声を漏らしながら瞼を開いた。

 覚束ない瞬きをしながら、
 鬱陶しそうな顔で、
 頬を抓っている人物を探して視線をふらふらとさ迷わせている。

 そして、やがて俺と目が合うと――

「ぁっ…………おはようございます、一宏様……」

 俺の姿を認めた途端に布団から起き上がり、
 表情をキリっと引き締めて座礼をする玲。

 しかし口調がふにゃふにゃとしているため、頭はまだ寝惚けているのかもしれない。

「玲、今がどういう状況か理解しているか?」
「はい。昨夜は一宏様に求められるままに同衾をさせていただきました」

 寝付くまで傍にいることは求めたが、玲までいっしょに寝ることは求めていなかったけれど。
 そこは玲と俺の間で言葉の解釈が違ってしまっただけだろう。
 昨日は俺も眠気で頭が働いていなかったし、玲を責めることじゃない。

「随分落ち着いてるが、時間は大丈夫なのか? いつも玲が起きてる時間はとっくに過ぎてるだろうけど、家事の心配は?」
「問題ありません。家事も大事ですが、最も重要なのは一宏様に仕えることです。一宏様が私をお求めになった以上、それに応えるのが最優先事項です。もちろん、これより家事にも取り組むため、心配には及びません」

 頭が起き始めたのか、次第に流暢に話し始める玲。

 寝不足ではあるのだろうが、一晩寝たことによりいくらかはスッキリできたのかもしれない。
 顔はいつも通り無表情で、
 声色も機械的だけれど、
 どことなく機嫌が良いように感じられた。

 しかし、この様子だとまだ自身の粗相には気付いていないのだろう。

「ところで玲、これがなにかわかるか?」
「? ……一宏様の服に、何か……白い…………っ!?」

 一瞬で青ざめる玲の顔色。

 玲はすぐさま着ている長襦袢をはだけさせ、自身の下半身を確認した。

「っ……ぁっ……!」

 わかっていたことだけれど、そこには動かぬ証拠があった。

 玲の小さな性器の周りには白濁液がべったりと付着している。
 見ただけでわかる、俺のズボンに付着しているのと同じ液体だ。

 ズボンと性器の汚れ具合から、玲が夢精をしてからそう時間は経っていない。

 もしかしたら俺は玲の夢精を受けて目を覚ましたのではないか。
 そんな考えが脳裏をよぎったが、せっかくの爽やかな目覚めが台無しになりそうな気がしたので忘れることにした。

「あっ……あっ……――!」

 わなわなと震えながら、額を畳に擦りつける玲。
 その後は、凡そわかりきった展開である。

 俺は思考のスイッチを切って、とりあえず玲が落ち着くまで謝罪を受け続けることにした。
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