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兄と弟と弟だった人
起床もふたりで
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「んっ……」
スムーズに意識が上って来て、自然と瞼が開く。
それは覚醒と呼ぶに相応しいほどに清々しい目覚めだった。
夢も見ないくらいの熟睡。
スイッチを入れたかのようなハッキリとした起床。
今までに幾度となく繰り返してきた中でも、トップに質の良い睡眠がとれた。
唯一の欠点を挙げるとすれば、寝るのが早すぎたせいで起きるのも早くなってしまったことだろう。
「……何時だ、今」
挨拶が聞こえないということは、玲がまだ起こしに来ていないということだ。
7時よりも前なのは確実であり、障子越しの朝日の具合から6時ぐらいだろうか。
時間はあるが、二度寝をする気分ではない。
ここまで爽やかに起床できたのに、二度寝なんてしたら台無しだ。
「……起きるか」
早起きしたからと言って得になるようなことなんてないだろうけれど。
このまま寝ているよりはマシだろう。
俺は布団から体を起こそうとして、そこで――
「ん?」
体に何かが当たった。
「なん……だ……」
「すー……すー……」
掛け布団をめくれば、そこには玲が居た。
目を瞑って。
寝息を立てて。
小さく丸まって。
俺の布団の中で玲が寝ていた。
「あー…………あのまま寝たのか」
思い起こされる昨夜の記憶。
疲れていた俺は、玲を抱いたまま眠りに落ちたのだった。
冷静になって考えてみると、どうして俺はあんなことをしたのだったか。
いくら疲れていたとはいえ、
玲が良い香りを纏っていたとはいえ――
――玲を抱きながら寝るだなんて、まるで玲に甘えているようではないか。
「……気の迷いだな。そういうこともある。さっさと忘れよう」
そう自分に言い聞かせて、速やかに思考を切り替える。
それにしても、どうして玲はここで寝ているのだろうか。
確かに布団に引き込んだのは俺だが、寝入った後は出て行っていいと言っていたはずだ。
俺よりも先に玲が寝入ってしまったなんてことはありえないだろう。
玲の顔をよく見れば、目の下に薄っすらと隈ができている。
玲がスムーズに寝れたとは思えない。
考えられるとすれば、寝入った後も俺が玲を離さなかったのだろう。
従者である玲は俺に気を遣って、
そのために布団から出られず、
抱き枕扱いされているせいで満足に眠ることもできず、
その結果がこの有様なのだろう。
「どうしたもんか……」
家事のことを考えれば玲を起こすべきだろう。
5時に目覚ましをかけている玲は、おそらくはもう起きていないといけない時間だ。
しかし、俺のせいで寝不足状態な玲を起こすことに気が引けるのも事実だ。
少なくとも身支度は一人でできるし、朝食も冷蔵庫を漁れば用意はできるだろう。
大学に行くまでの準備時間において、玲の起床は必須ではない。
「……寝かせてやるか」
ただでさえ珠美との折り合いが悪いせいで玲はストレスを溜め込みがちだ。
ここで寝不足まで加われば、余計に険悪になることは想像に難くない。
そうなれば被害を受けるのは俺なのだ。
俺は玲を起こさないように、慎重に体を起こして――
「ん?」
そして、それに気づいた。
「……は?」
ジャージの下が濡れていた。
正確には、ズボンに白い液体が引っ掛けられていた。
「……」
その液体がなんであるかは考えるまでもない。
俺の下着が濡れていないことから、誰の分泌液かも明白だ。
だから、俺は――
「おい、起きろ」
とりあえず、すやすやと眠る玲の頭を引っぱたくことにした。
スムーズに意識が上って来て、自然と瞼が開く。
それは覚醒と呼ぶに相応しいほどに清々しい目覚めだった。
夢も見ないくらいの熟睡。
スイッチを入れたかのようなハッキリとした起床。
今までに幾度となく繰り返してきた中でも、トップに質の良い睡眠がとれた。
唯一の欠点を挙げるとすれば、寝るのが早すぎたせいで起きるのも早くなってしまったことだろう。
「……何時だ、今」
挨拶が聞こえないということは、玲がまだ起こしに来ていないということだ。
7時よりも前なのは確実であり、障子越しの朝日の具合から6時ぐらいだろうか。
時間はあるが、二度寝をする気分ではない。
ここまで爽やかに起床できたのに、二度寝なんてしたら台無しだ。
「……起きるか」
早起きしたからと言って得になるようなことなんてないだろうけれど。
このまま寝ているよりはマシだろう。
俺は布団から体を起こそうとして、そこで――
「ん?」
体に何かが当たった。
「なん……だ……」
「すー……すー……」
掛け布団をめくれば、そこには玲が居た。
目を瞑って。
寝息を立てて。
小さく丸まって。
俺の布団の中で玲が寝ていた。
「あー…………あのまま寝たのか」
思い起こされる昨夜の記憶。
疲れていた俺は、玲を抱いたまま眠りに落ちたのだった。
冷静になって考えてみると、どうして俺はあんなことをしたのだったか。
いくら疲れていたとはいえ、
玲が良い香りを纏っていたとはいえ――
――玲を抱きながら寝るだなんて、まるで玲に甘えているようではないか。
「……気の迷いだな。そういうこともある。さっさと忘れよう」
そう自分に言い聞かせて、速やかに思考を切り替える。
それにしても、どうして玲はここで寝ているのだろうか。
確かに布団に引き込んだのは俺だが、寝入った後は出て行っていいと言っていたはずだ。
俺よりも先に玲が寝入ってしまったなんてことはありえないだろう。
玲の顔をよく見れば、目の下に薄っすらと隈ができている。
玲がスムーズに寝れたとは思えない。
考えられるとすれば、寝入った後も俺が玲を離さなかったのだろう。
従者である玲は俺に気を遣って、
そのために布団から出られず、
抱き枕扱いされているせいで満足に眠ることもできず、
その結果がこの有様なのだろう。
「どうしたもんか……」
家事のことを考えれば玲を起こすべきだろう。
5時に目覚ましをかけている玲は、おそらくはもう起きていないといけない時間だ。
しかし、俺のせいで寝不足状態な玲を起こすことに気が引けるのも事実だ。
少なくとも身支度は一人でできるし、朝食も冷蔵庫を漁れば用意はできるだろう。
大学に行くまでの準備時間において、玲の起床は必須ではない。
「……寝かせてやるか」
ただでさえ珠美との折り合いが悪いせいで玲はストレスを溜め込みがちだ。
ここで寝不足まで加われば、余計に険悪になることは想像に難くない。
そうなれば被害を受けるのは俺なのだ。
俺は玲を起こさないように、慎重に体を起こして――
「ん?」
そして、それに気づいた。
「……は?」
ジャージの下が濡れていた。
正確には、ズボンに白い液体が引っ掛けられていた。
「……」
その液体がなんであるかは考えるまでもない。
俺の下着が濡れていないことから、誰の分泌液かも明白だ。
だから、俺は――
「おい、起きろ」
とりあえず、すやすやと眠る玲の頭を引っぱたくことにした。
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