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兄と弟と弟だった人
従者
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玲の言葉に、心臓がヒヤリとした。
玲が言っていることは嘘ではない。
少なくとも、玲が従者であることは俺たちの間では真実だ。
何も間違っていない。
しかし、この関係性が異常であることなんて、小学生の頃にはもう気付いている。
学友たちの話を聞いていれば、俺と玲の関係が普通の兄弟とは異なっていることなんてすぐにわかった。
それが他人に気軽に話していいものでもないことも明白だった。
玲との関係は、玲の存在は、無闇に公言していいものではないのだ。
だから、俺は外では家のことはずっと隠して、偽って生きてきた。
玲は今それを口にした。
玲は外に出ていないし情報収集もできないから、
俺たちの関係の異常性を微塵も理解していないから。
だから、珠美の前で俺たちの異常な関係を明言してしまった
そして、玲の発言を受けて、珠美は――
「……玲君はお兄さん思いの優しい子だね」
珠美は、少しも動揺していなかった。
やはり、珠美は宗田の家における弟の立ち位置を理解していたようだ。
珠美は玲の存在は知っていたし、
珠美自身も弟なのだから当たり前だけれど、
それでも心臓が竦み上がった。
「兄ではありません。一宏様は私の主です」
「でも玲君、少しくらいは筋力があったほうがいいと思わないかい? 現に、この荷物を1人では運べなかったんじゃないかな?」
「……足りない筋力は道具で補えますので、問題ありません」
昨日の玲は台車を用意していたにも関わらず、そもそも台車に載せることができていなかった。
とても道具で補えていたとは言えないが、この場では触れないでおくことにした。
なんとなく、玲がそれだけは言わないで欲しいと懇願しているような気がしたので。
「そうかい? ……まあ、私も無理強いがしたいわけじゃない。気が変わったらいつでも勝手に使ってくれていいからね。ああ、でも怪我だけはしないように気をつけて。知っての通り重いから」
「はい」
それでダンベルについての話は終わった。
結局玲が考えているような危険物の持ち込みなんて無くて、むしろ珠美は玲に対して優しく接する良識のある大人だった。
これなら一緒に暮らしている内に玲の警戒も徐々に解けていくことだろう。
というか、解けてくれないと困るのだが。
「そうだ、ふたりとも甘いものは好きかな? これからお世話になるということで、手土産にケーキを買ってきていてね。ちょうどいい時間だし、おやつにしないかい?」
玲が言っていることは嘘ではない。
少なくとも、玲が従者であることは俺たちの間では真実だ。
何も間違っていない。
しかし、この関係性が異常であることなんて、小学生の頃にはもう気付いている。
学友たちの話を聞いていれば、俺と玲の関係が普通の兄弟とは異なっていることなんてすぐにわかった。
それが他人に気軽に話していいものでもないことも明白だった。
玲との関係は、玲の存在は、無闇に公言していいものではないのだ。
だから、俺は外では家のことはずっと隠して、偽って生きてきた。
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それでも心臓が竦み上がった。
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「でも玲君、少しくらいは筋力があったほうがいいと思わないかい? 現に、この荷物を1人では運べなかったんじゃないかな?」
「……足りない筋力は道具で補えますので、問題ありません」
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「はい」
それでダンベルについての話は終わった。
結局玲が考えているような危険物の持ち込みなんて無くて、むしろ珠美は玲に対して優しく接する良識のある大人だった。
これなら一緒に暮らしている内に玲の警戒も徐々に解けていくことだろう。
というか、解けてくれないと困るのだが。
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