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兄と弟

一往復

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「はっ、はっ、ふっ……ふっぅぅ……!」

 少しずつ。
 本当に少しずつ。
 挿入時よりも遅いペースで、玲は腰を持ち上げていく。

「ほっ、ほぉっ……ぉっ……」

 湿った摩擦音が結合部から漏れる度に、玲の口からも嬌声が漏れ出ていく。
 玲の喘ぎ声には吐息がふんだんに入り混じっていて、少し間抜けにも思えた。

「そんなに気持ちいいか?」
「はっ、はいっ……もっ、おぅっ……申し訳ありま…せ……んぅっ……はっ、はしたっ、ない、ところをぉっ……!」
「別に、玲がちゃんと動いてくれるならそれでいい」
「も、もちろんで……あっ! っ……はっ……ぁっ……」

 それはナメクジのような遅さではあったけれども、動かないよりはずっとマシだった。

 玲の腰が動く度に、ぬめぬめとした感触が性器の粘膜を這いずっていく。
 肉壁がカリ首のくびれまで密着するくらいに圧迫してきて、隙間なく性器を絞り上げる。

 油断すれば俺も声が出てしまいそうになる気持ちよさ。
 密着している玲の体温もあって、とても心地が良い。

「ふっ……ふっ、うっうぅぅぅ……」

 そして、ついに先端だけを残して玲の中から性器が出てきた。
 粘液に塗れた性器に空気が触れて、少しだけ冷たく感じる。

 これで半分。
 今度はもう一度腰を下ろして、それでやっと一往復だ。

「はっ……はっ……あっ、あっ……ああぁぁっ……!」

 玲はぎゅぅっと俺の体にしがみつきながら、腰を下ろし始めた。
 もちろん、その動きの緩慢さは変わっていない。

「ああっ……うっ……んふぅっ……!」
「……」

 動かなくても、玲が勝手に動いてくれる。
 むしろ、玲は俺が動くことを良しとしない。

 楽ではあるものの、手持無沙汰なのも確かだ。
 だから、俺はなんとなく玲の顔を眺めていた。

「あっ……はぁぁっ……んっ……くっ」

 体内に異物を呑み込んでいるというのに、その声はどこか満足気で――
 その表情は、柔らかく蕩けている。

 とろんとした瞳。
 半開きの口。
 緩んだ頬。

 普段はまるでロボットみたいに無表情なのに。
 言葉だって必要最小限にしか口にしないのに。
 フェラの時ですら機械的なのに。

 玲は俺が呼びつけた時にだけ体が起きるのだとしたら――
 心が起きるのはきっと夜伽の時だけだ。

 今だけは、玲には感情が溢れている。

「んっ、んんぅぅっ……! あっ、はぁっ……!」

 玲の顔を見ている間に、再びふたりの腰が密着した。
 これでやっと一往復だ。

「はっ……はぁっ……かっ、かずひろさま……」

 たった一往復で息も絶え絶えな玲に名前を呼ばれた。

「どうした? ギブアップか?」
「いっ、いえっ……そのようなことは……んっ……。ただ、あの……」
「ん?」
「っ……あ、あまり見られていると、その……」

 玲は俺の視線が気になるらしい。
 今更恥ずかしがることもないと思うが、今日の玲がいつにも増して乱れているのも事実だ。

 俺と同様に、久しぶりの夜伽で調子が狂っているのかもしれない。

「それじゃあ目隠しでもするのか? 俺に?」
「そ、そのようなことは……はぅぅっ!?」

 腰を少し動かしてやると、玲は間抜けな声を上げた。
 これでは、俺が好きに腰を打ち付けたりしたら玲は死にかねないと本気で思ってしまう。

「さっさと続きを頼む。玲が俺の上で喘ぐのなんて、今さら気にすることじゃないだろ」
「はっ、はいっ……申し訳ありませっ……んっ、ふっ、ぅっ……」

 再び玲の腰が動き出すと、卑猥な水音と玲の嬌声が部屋に響き始める。
 性器からの分泌液が唾液や腸液と混ざって、
 ぐちゅぐちゅと音を鳴らしながら玲の中はどんどんと潤いを増していく。

「おっ……おっ、ぅっ……くっ、ふぅっ……!」

 濡れていくほどに摩擦も弱くなっていく。
 摩擦が弱まれば腰の動きの制御は難易度が増していく。

 そして、玲の腰が上下する速度はどんどんとペースを上げ始めた。
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