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ゴブリン殲滅編
彼は聖女様の弟ですか? Is he Saint's little brother?
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「……」
「……」
気まずい沈黙。
実弟が居るなんて関係なかった。
もっと綿密に考えておくべきだった。
だって、彼はルマじゃないから。
ルマはボクに甘えることはあっても、えっちに甘やかして欲しいオーラを出したりはしないのだから。
「あっ、えっと……よ、ヨリッグ? 疲れてるだろうから、椅子に座って?」
とにもかくにも、目の前で雄々しく反り立っているそれを視界から隠さないといけない。
ただでさえボクも色々と溜まっているのに、こんなモノをずっと見せられていたらおかしくなってしまう。
「はっ! お言葉に甘えさせていただきます! お姉ちゃん!」
「……」
彼の言葉遣いは放っておくべきなのか、それとも崩すように勧めるべきなのか。
今の彼はボクの弟ではあるが、その内面は敬虔なる信徒だ。
祝福の最中であっても礼節を重んじるべきと考えているのなら、ボクの方からそんな必要は無いと言うべきなのだろう。
でも万が一、彼の理想の弟があれなのだとしたら。
ボクの方からそこに突っ込むのは野暮な気もしてしまう。
「……っ、ヨリッグってば、疲れてるの? いつもはそんな話し方じゃないでしょ? もっとリラックスして、気楽に話してくれていいんだよ?」
悩んだ末に、とりあえず指摘してみることにした。
テーブルにお茶を出しながら、なるべく自然な笑顔とともに。
「はっ! ありがたき幸せですぜ! 姉ちゃん!」
「……」
勇気を出したら悪化してしまった。
こうなってしまっては、もっと勇気を出すしかないのだろう。
「……………………ヨリッグ」
「はっ――っ!?」
椅子に座っていてもボクよりも目の位置が高い彼。
そんな彼の瞳を、ボクは覗き込んだ。
片膝を椅子に乗せて。
膝頭に熱く硬いモノを感じながらも。
目を逸らせないように両頬に両手を添えて。
瞳に互いの姿を映しながら、まっすぐに。
「お、教えて、ヨリッグ。ヨリッグはボクのなに?」
震えそうになる声を必死に押さえつける。
顔まで登ってきそうになる血液を今だけはと押しとどめる。
近づいてみれば、こんなにわかりやすいことはない。
彼は明らかに緊張している。
こんなに強張っていたら満足に祝福を享受できるわけがない。
気持ちよさだけは味わえるかもだけど、それではとびきりの祝福にはならない。
だから、今はボクが頑張らないと。
カッコつけるのに慣れていなくても。
話すのが苦手でも。
弱音なんて心の奥に押し込めて。
聖女として、信徒たちにこの身の全てを捧げると誓ったのだから。
「せっ、聖女様は――」
「違うでしょ? ヨリッグは、ボクの弟……そうだよね?」
「あっ……はっ、はい」
「はいじゃない……うんって言って?」
「もっ、もうしっ……うっ、うん……」
「良し、いい子だね」
彼の頭を一撫でしてから、ボクは離れた。
何事も無かったかのように、彼の向かいの椅子に腰を下ろした。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……お姉ちゃん、顔真っ赤ですね」
「言わないでくださいよ!」
「……」
気まずい沈黙。
実弟が居るなんて関係なかった。
もっと綿密に考えておくべきだった。
だって、彼はルマじゃないから。
ルマはボクに甘えることはあっても、えっちに甘やかして欲しいオーラを出したりはしないのだから。
「あっ、えっと……よ、ヨリッグ? 疲れてるだろうから、椅子に座って?」
とにもかくにも、目の前で雄々しく反り立っているそれを視界から隠さないといけない。
ただでさえボクも色々と溜まっているのに、こんなモノをずっと見せられていたらおかしくなってしまう。
「はっ! お言葉に甘えさせていただきます! お姉ちゃん!」
「……」
彼の言葉遣いは放っておくべきなのか、それとも崩すように勧めるべきなのか。
今の彼はボクの弟ではあるが、その内面は敬虔なる信徒だ。
祝福の最中であっても礼節を重んじるべきと考えているのなら、ボクの方からそんな必要は無いと言うべきなのだろう。
でも万が一、彼の理想の弟があれなのだとしたら。
ボクの方からそこに突っ込むのは野暮な気もしてしまう。
「……っ、ヨリッグってば、疲れてるの? いつもはそんな話し方じゃないでしょ? もっとリラックスして、気楽に話してくれていいんだよ?」
悩んだ末に、とりあえず指摘してみることにした。
テーブルにお茶を出しながら、なるべく自然な笑顔とともに。
「はっ! ありがたき幸せですぜ! 姉ちゃん!」
「……」
勇気を出したら悪化してしまった。
こうなってしまっては、もっと勇気を出すしかないのだろう。
「……………………ヨリッグ」
「はっ――っ!?」
椅子に座っていてもボクよりも目の位置が高い彼。
そんな彼の瞳を、ボクは覗き込んだ。
片膝を椅子に乗せて。
膝頭に熱く硬いモノを感じながらも。
目を逸らせないように両頬に両手を添えて。
瞳に互いの姿を映しながら、まっすぐに。
「お、教えて、ヨリッグ。ヨリッグはボクのなに?」
震えそうになる声を必死に押さえつける。
顔まで登ってきそうになる血液を今だけはと押しとどめる。
近づいてみれば、こんなにわかりやすいことはない。
彼は明らかに緊張している。
こんなに強張っていたら満足に祝福を享受できるわけがない。
気持ちよさだけは味わえるかもだけど、それではとびきりの祝福にはならない。
だから、今はボクが頑張らないと。
カッコつけるのに慣れていなくても。
話すのが苦手でも。
弱音なんて心の奥に押し込めて。
聖女として、信徒たちにこの身の全てを捧げると誓ったのだから。
「せっ、聖女様は――」
「違うでしょ? ヨリッグは、ボクの弟……そうだよね?」
「あっ……はっ、はい」
「はいじゃない……うんって言って?」
「もっ、もうしっ……うっ、うん……」
「良し、いい子だね」
彼の頭を一撫でしてから、ボクは離れた。
何事も無かったかのように、彼の向かいの椅子に腰を下ろした。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……お姉ちゃん、顔真っ赤ですね」
「言わないでくださいよ!」
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