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ゴブリン殲滅編
聖女とは少女でもあり、淑女でもあり
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「い、今のボクは疲れているわけではないんです……。クーロ様が抱きしめてくれないから、焦れてるんですっ……! クーロ様に抱きしめてもらえると、治癒のお祈りができることを期待していたのに……いつまで経っても抱きしめてもらえないどころか、まるでボクの祝福を拒絶するような物言いまでされて……」
「せ、聖女様っ……!」
「クーロ様は、こんな状態のボクを放っておくんですか? まさか、ボクの負担を減らすためと、このまま踵を返したりはしませんよね?」
瞳が潤んでいるのは悲しいからじゃない。
声が震えているのは苦しいからじゃない。
体の中に興奮を留めておけなくて、溢れてしまっているから。
「~~っ、聖女様!!」
「わわっ!?」
突然、彼は膝を着くとその額をボクのお腹に押し付けてきた。
老兵の時とは逆に、ボクが彼のことを包み込むような体制だ。
体格差のせいで、実際には包み込めてはいないけれど。
「どうかっ! 私の無礼な物言いをお赦しください! 御身の気持ちも考えず、身勝手な考えを押し付けようとした愚かな私を、どうかっ!」
ボクとしては誘っていたつもりなのだけれども、彼は責められていると感じたのかもしれない。
胸に縋りつく彼の姿はまるで母親に怒られた少年のようだった。
「お、落ち着いてください。ボクは怒ってないですから……むしろ、その優しさ自体はとても嬉しいんです」
「ほ、本当ですか?」
「はい、本当です。だからどうか安心して、このままボクを強く抱きしめてください。そして、治癒のお祈りをさせてくださいね?」
「もっ、もちろんです!」
「ありがとうございます……クーロ様はとても敬虔な信徒様ですね……いい子、いい子」
「せっ、せいじょさまぁ……」
顔は見えないけれども、声だけで喜んでいるのが伝わってくる。
年齢も体格もボクよりもずっと立派な大人たち。
正直、そんな彼らを甘やかすことは得意じゃない。
どうしても演技がかってしまうし、馬鹿にしてると怒られるのではと恐れてしまう。
でも、彼のように聖女に母性を求める信徒も居る。
彼のように、ボクの甘やかしで癒されてくれる人が居る。
だから、ボクも精一杯にやりきる。
母親のように優しく――
聖母のような包容力で――
それでいて、ちょっとだけいじわるに――
「ふふっ。いつもは真面目でカッコいいクーロ様なのに、今はまるで赤ちゃんみたいで可愛いですね? 皆様にも教えてあげたら、どのような反応をするでしょうか」
「そっ、そんなっ……」
「んっ……そんなに怯えないでください。大丈夫ですよ、冗談ですから……クーロ様の可愛い一面は、ボクだけのものですもんね? 誰にも見られることのない、聞かれることもないこの場所で、このまま好きなだけ、聖女に甘えてください?」
彼の腕に込められた力がまた一段と強くなって、ボクの唇から吐息が漏れた。
遮音の呪いが施された黒幕で囲まれた場所では、余程の大きさの音でないと外には漏れない。
だから、彼のようにここでのみ己の内を曝け出せるという人間は少なくない。
ボクはその期待に応えるだけだ。
簡易とはいえこの密室の中で。
彼らの中にある欲望を、鏡のように読み取って再現するだけ。
それが、聖女としての役割だから。
「せ、聖女様っ……!」
「クーロ様は、こんな状態のボクを放っておくんですか? まさか、ボクの負担を減らすためと、このまま踵を返したりはしませんよね?」
瞳が潤んでいるのは悲しいからじゃない。
声が震えているのは苦しいからじゃない。
体の中に興奮を留めておけなくて、溢れてしまっているから。
「~~っ、聖女様!!」
「わわっ!?」
突然、彼は膝を着くとその額をボクのお腹に押し付けてきた。
老兵の時とは逆に、ボクが彼のことを包み込むような体制だ。
体格差のせいで、実際には包み込めてはいないけれど。
「どうかっ! 私の無礼な物言いをお赦しください! 御身の気持ちも考えず、身勝手な考えを押し付けようとした愚かな私を、どうかっ!」
ボクとしては誘っていたつもりなのだけれども、彼は責められていると感じたのかもしれない。
胸に縋りつく彼の姿はまるで母親に怒られた少年のようだった。
「お、落ち着いてください。ボクは怒ってないですから……むしろ、その優しさ自体はとても嬉しいんです」
「ほ、本当ですか?」
「はい、本当です。だからどうか安心して、このままボクを強く抱きしめてください。そして、治癒のお祈りをさせてくださいね?」
「もっ、もちろんです!」
「ありがとうございます……クーロ様はとても敬虔な信徒様ですね……いい子、いい子」
「せっ、せいじょさまぁ……」
顔は見えないけれども、声だけで喜んでいるのが伝わってくる。
年齢も体格もボクよりもずっと立派な大人たち。
正直、そんな彼らを甘やかすことは得意じゃない。
どうしても演技がかってしまうし、馬鹿にしてると怒られるのではと恐れてしまう。
でも、彼のように聖女に母性を求める信徒も居る。
彼のように、ボクの甘やかしで癒されてくれる人が居る。
だから、ボクも精一杯にやりきる。
母親のように優しく――
聖母のような包容力で――
それでいて、ちょっとだけいじわるに――
「ふふっ。いつもは真面目でカッコいいクーロ様なのに、今はまるで赤ちゃんみたいで可愛いですね? 皆様にも教えてあげたら、どのような反応をするでしょうか」
「そっ、そんなっ……」
「んっ……そんなに怯えないでください。大丈夫ですよ、冗談ですから……クーロ様の可愛い一面は、ボクだけのものですもんね? 誰にも見られることのない、聞かれることもないこの場所で、このまま好きなだけ、聖女に甘えてください?」
彼の腕に込められた力がまた一段と強くなって、ボクの唇から吐息が漏れた。
遮音の呪いが施された黒幕で囲まれた場所では、余程の大きさの音でないと外には漏れない。
だから、彼のようにここでのみ己の内を曝け出せるという人間は少なくない。
ボクはその期待に応えるだけだ。
簡易とはいえこの密室の中で。
彼らの中にある欲望を、鏡のように読み取って再現するだけ。
それが、聖女としての役割だから。
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