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最終日:朝焼けの中、涙を拭って微笑んで

その覚悟を持てる人間は

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 死ね神を前にして。
 目の前に死を突き付けられて。
 死を迫られて。
 他の人間たちは素直に受け入れていた……?

「いや、そんなの……さすがに……」

 おかしい。
 明らかにおかしい。
 あまりにもおかしすぎる。

 脳が収縮するような感覚と共に、思考が精錬されていくのを感じる。
 思考よりも先に、感覚が真実を掴みかけている。

 このまま思考を続ければ答えに辿り着けるという予感と。
 このままでは真実に辿り着いてしまうという悪寒が走って。
 背中を一筋の冷や汗が滑り落ちた。

「落ち着け……冷静に……一つずつ考えるんだ……」

 言葉に出して言い聞かせないとならないくらいに、ボクは動揺していた。

 呼吸は勝手に速度を上げていく。
 体温は上がってるのか下がってるのかの判別もできやしない。
 心臓は誰かに握られているようで。
 居ないはずの死ね神に射竦められているような錯覚までしている。

「まず、普通に考えたらボクは普遍的な行動しかしてないってこと。これは、間違いないはずだ……」

 突然化け物に遺言を求められて答えられる人間なんていない。
 全く存在しないとは言い切れないが、そんなのは例外に分類していいはずだ。
 したがって、今までの死ね神の被害者たちも、ボクと同じように猶予を与えられた人間がほとんどに違いない。

 そして与えられた猶予を有意義に生かせた人間も多くはないだろう。
 ボクとそれ以外の人間で与えられた猶予に差はあるかもしれないが、それでも死の覚悟を決めるのは簡単なことではない。
 むしろ、猶予が長いほど難しくなることだって考えられる。

「でも、死ね神の話だと、ボクの方が少数派……?」

 ボク以外の全員が、与えられた猶予を以て死を潔く受け入れていたと死ね神は言っていた。
 潔さはあくまでボクと比較しての話だが、そんなことは些細なことだ。
 問題は、死ね神の中でボクがイレギュラーとして認知されているということだ。

「逆だろ……どう考えたって……!」

 普通なのはボクの方だ。
 ボクの行動こそが、平凡な人間の典型なはずなんだ。

 誰だって生きる為にあがいて。
 その為には多少の強気も見せて。
 それでもダメだったなら、無様に生を懇願したはずだ。
 ボクと同じような行動をした人間が他にもいないとおかしいんだ。

 それなのに今までの被害者は素直に殺されていただなんて。
 それじゃあまるで――

 最初から死を望んでいたみたいじゃないか
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