死の間際、あなたは親友ですか?

papporopueeee

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一日目:いつものふたりで、いつもどおりに

秘しておきたかったこと

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「それまたどうしてそう思うんだ? タク」
「どうしてって、ショウの話を聞いてるとセックスってただ難しいだけのように思えるんだよ。その……っ、性欲を解消させるだけなら一人でも事足りるわけだろ?」
「タクがいつもしてるみたいにか?」
「ぐっ……!」

 下ネタで弄られることに慣れていなさすぎて、咄嗟に会話を返すことができない。
 そんなボクを見て、抄はニヤニヤと笑っている。
 美少女の顔で。

「べっ、別に、ボクだけじゃないだろ!」
「もちろんその通りだ。だから、そんなに焦らなくってもいいんだぜ?」

 抄の顔はどこまでも余裕綽々だ。
 この話題において抄の優位は揺るがないのだから、その態度も当然と言えば当然なのだけれど。
 なぜだか、ボクはそんな抄に一矢報いたくなってしまった。

「そ、そうだよな。ボクだけじゃないだから、抄もそうだよな! さっきも、自信あるって言ってたもんな!」
「おう、もちろんだ。彼女作ってないからな。自分で自分を慰めなきゃならない日なんて山ほどあったぜ」

 ボクのちっぽけな反撃は抄にカスりもしなかった。

 どうしても下ネタでは抄に勝てる気がしない。
 あまり勝ちたいものでもないが、負けっぱなしでイジられっぱなしの状況だけはなんとかしたかったのだが……。

 諦めるしかない。
 そう思った次の瞬間、抄は少し困ったような口調で話し始めていた。

「たださー、さっきも言ったけど今は自信ないんだよ。なーんか男の時と違って、いまいち気持ちよくなれなかったんだよなー……」
「……え?」

 確かに抄は女性の体になった今ではオナニーに自信は持てないと言っていた。
 ボクはそれは、抄には女性の体での自慰経験がないが故の発言だと受け取っていた。

 しかし、今抄は「気持ちよくなれなかった」と発言していた。
 つまりそれは、女性に転生をした後に自慰を試みたということではないのだろうか。

 ボクの頭の中に突如浮かんだ疑問は、思考を経ることもなく口から飛び出してしまっていた。

「し、したのか……? そ、その、からだ、で……」
「……あっ」

 それは抄にとっても失言だったようだ。

 抄は男性時の性行為についてはなんの恥じらいも持っていなかった。
 セックスも、オナニーも。
 恥ずかしがることなく明け透けに語っていた。

 そんな抄が、自身が女性の体で自慰をしたことを漏らしてしまったと気づいた途端に、頬を朱に染め始めた。

「っ……あっ、と……えと……。そ、そうなんだよー。べ、別に俺が下手なわけじゃないぜ? 俺の指もそこまで評判は悪くなかったはずなんだけど……い、いやー、やっぱ自分のだと全然勝手が違くてさー……結局イケなかったんだよ! はっ、ははっ、あっはっはっ……」

 それは誰が見ても明らかな照れ隠しで、言った本人すらも余計に羞恥に襲われるような発言で。

 言及するんじゃなかったと後悔しながら、ボクたちはしばらく互いの顔を見れずに俯き合ったのだった。
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