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親睦偏
可愛くなくなっていっているようです
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「それって、どういう……?」
「え? ああ、違いますよ。変な意味じゃないです。ただ、年を取っていっちゃうからってだけですよ」
「なんだ……そういうことか……」
ツキの表情があまりにも深刻そうだったから、変な勘違いをしてしまった。
確かに年を取ると見た目は変わっていく。
ツキの追い求める可愛いの傾向を考えると、
年を経るごとにどんどんと理想から遠ざかってしまうのだろう。
「老化は全ての人に平等ですから。それはちゃんとわかってて、仕方のないことだって理解してます。女性だって、年齢には抗えない……」
「……」
「……でも、私は女性よりもずっと早く、可愛くなくなっちゃうんだろうなぁ……」
そう言って、ツキは視線をどこか遠くの方へ向けた。
その脳裏には、年を取って可愛くなくなった自分が映っているのかもしれない。
「それなら、手術とか受けてみるのは?」
「性転換のですか? んー……」
思いつきで言ってみたものの、ツキの反応は芳しくない。
ツキは可愛いの求道者であるものの、
可愛いの為なら何でもするというタイプでもないようだ。
性欲の為なら不法侵入だってするのに。
「今のところ、手術はあんまり受けたくないですね……。お化粧とかお洒落と違って、手術って不可逆の変化じゃないですか。取り返しがつかなくなることを、あんまり他人に任せたくないなって気持ちが強くて……それで絶対に可愛くなれるならまだしも、可愛くなくなっちゃう可能性も十分にあるわけですし」
「なるほど……」
それはツキの可愛いへの拘りが強いからなのだろう。
ツキはあくまで、自分の理想とする可愛いに自分で近づきたいのだ。
だからこそ、自身の老化が憂鬱なのかもしれない。
それは紛れもなく自分自身の成長のせいであって、
そして絶対に抗うことはできないから。
「私も指咥えて待ってるだけじゃなくて、アンチエイジングはしてますけど……それでもやっぱり進行を遅くできるくらいでしょうから。だから、私は今の内にたくさん可愛い服を着ておきたいんです」
「そうか……」
「……だからー♪ こんな可哀想で可愛いツキちゃんの為に、洋服をプレゼントしたくありませんか?」
そう言ってツキはおどけて笑ってみせた。
暗い雰囲気にしてしまったことを気にしているのかもしれない。
無理して明るく振る舞っているのは明らかだった。
「……そんなに気にしなくても、ツキなら大丈夫だよ」
「っ……どうして、そう言えるんですか? 無責任な発言だったらレイプしますよ?」
ツキの顔は微笑んでいるものの、声色が笑っていなかった。
それだけ真剣に悩んでいるということだろう。
「だって……ピザが可愛いくらいだろ?」
「え?」
よほど発言が予想外だったのか、ツキは間抜けな声を漏らした。
「スパゲティ、オムライス、パンケーキ、その他諸々の料理。ツキの言うそれらの可愛い料理たちよりも、今のツキの方がずっと可愛い」
「っ!?」
「だから、そんなに不安がらなくても大丈夫だよ」
年長者から見ると、悩んでいる若者というのはこんなにも愛おしいのか。
飯田が翠を連れ回す理由が少しだけ理解できた気がした。
「っ……っ……!」
「……どうした?」
ツキは俯いたままふるふると震えている。
「なっ……なっ……」
「な?」
「なっ……なでなで……」
「え?」
「ここでなでなでしてくれたら、完璧です……。だから、なでなでしてください……」
「えっ? ああ、うん……?」
なんだか様子のおかしいツキ。
その雰囲気に気圧されて、つい言われるがままにツキの頭に手を置いてしまった。
「……」
「……こ、これでいいのか?」
「……はい……えへへ……♡」
「え? ああ、違いますよ。変な意味じゃないです。ただ、年を取っていっちゃうからってだけですよ」
「なんだ……そういうことか……」
ツキの表情があまりにも深刻そうだったから、変な勘違いをしてしまった。
確かに年を取ると見た目は変わっていく。
ツキの追い求める可愛いの傾向を考えると、
年を経るごとにどんどんと理想から遠ざかってしまうのだろう。
「老化は全ての人に平等ですから。それはちゃんとわかってて、仕方のないことだって理解してます。女性だって、年齢には抗えない……」
「……」
「……でも、私は女性よりもずっと早く、可愛くなくなっちゃうんだろうなぁ……」
そう言って、ツキは視線をどこか遠くの方へ向けた。
その脳裏には、年を取って可愛くなくなった自分が映っているのかもしれない。
「それなら、手術とか受けてみるのは?」
「性転換のですか? んー……」
思いつきで言ってみたものの、ツキの反応は芳しくない。
ツキは可愛いの求道者であるものの、
可愛いの為なら何でもするというタイプでもないようだ。
性欲の為なら不法侵入だってするのに。
「今のところ、手術はあんまり受けたくないですね……。お化粧とかお洒落と違って、手術って不可逆の変化じゃないですか。取り返しがつかなくなることを、あんまり他人に任せたくないなって気持ちが強くて……それで絶対に可愛くなれるならまだしも、可愛くなくなっちゃう可能性も十分にあるわけですし」
「なるほど……」
それはツキの可愛いへの拘りが強いからなのだろう。
ツキはあくまで、自分の理想とする可愛いに自分で近づきたいのだ。
だからこそ、自身の老化が憂鬱なのかもしれない。
それは紛れもなく自分自身の成長のせいであって、
そして絶対に抗うことはできないから。
「私も指咥えて待ってるだけじゃなくて、アンチエイジングはしてますけど……それでもやっぱり進行を遅くできるくらいでしょうから。だから、私は今の内にたくさん可愛い服を着ておきたいんです」
「そうか……」
「……だからー♪ こんな可哀想で可愛いツキちゃんの為に、洋服をプレゼントしたくありませんか?」
そう言ってツキはおどけて笑ってみせた。
暗い雰囲気にしてしまったことを気にしているのかもしれない。
無理して明るく振る舞っているのは明らかだった。
「……そんなに気にしなくても、ツキなら大丈夫だよ」
「っ……どうして、そう言えるんですか? 無責任な発言だったらレイプしますよ?」
ツキの顔は微笑んでいるものの、声色が笑っていなかった。
それだけ真剣に悩んでいるということだろう。
「だって……ピザが可愛いくらいだろ?」
「え?」
よほど発言が予想外だったのか、ツキは間抜けな声を漏らした。
「スパゲティ、オムライス、パンケーキ、その他諸々の料理。ツキの言うそれらの可愛い料理たちよりも、今のツキの方がずっと可愛い」
「っ!?」
「だから、そんなに不安がらなくても大丈夫だよ」
年長者から見ると、悩んでいる若者というのはこんなにも愛おしいのか。
飯田が翠を連れ回す理由が少しだけ理解できた気がした。
「っ……っ……!」
「……どうした?」
ツキは俯いたままふるふると震えている。
「なっ……なっ……」
「な?」
「なっ……なでなで……」
「え?」
「ここでなでなでしてくれたら、完璧です……。だから、なでなでしてください……」
「えっ? ああ、うん……?」
なんだか様子のおかしいツキ。
その雰囲気に気圧されて、つい言われるがままにツキの頭に手を置いてしまった。
「……」
「……こ、これでいいのか?」
「……はい……えへへ……♡」
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