上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い

親睦偏

注文しました

「あ～これ可愛い～♪」
「……」
「これにしようかなー……でも、こっちのも可愛いなー……♪」
「……」
「迷うなー……でも、せっかくのアキラさんとの初デートなんだし、一番可愛いのにしたいですよねー♪」
「……疑問なんだけど、俺とツキは同じ物を見てるんだよな？　そっちのメニューだけ小動物が載ってるとかないよな？」
「え？　何言ってるんですか、アキラさん……これから食事するというのに、グロい話しないでくださいよ」
「……今の俺の発言をグロいと解釈する方がどうかと思うよ」

　何を食べるか選んでいる時の悩み文句といえば、味に関わることであるべきではないのか。
　先ほどからツキはメニュー見ては可愛さにばかり言及していた。

「さっきから可愛いしか言ってないけど、メニュー選ぶ気あるのか？」
「何言ってるんですか、ありますよ。料理は見た目だって大事じゃないですか」
「いや、それにしたって可愛いはないだろ……。普通は美味しそうとかさ……」
「可愛いは何にだって使える万能な概念なんです。アキラさんだって、美味しさが同程度なら可愛い方を食べたくないですか？」
「いや、まあ……そういうもんか……？」
「そういうものなんです」



「お待たせいたしました。こちら、ミートソーススパゲティです」
「どうも」
「こちら、ミニオムライスです」
「ありがとうございます♪」
「こちら、ミックスベリーのパンケーキです」
「ありがとうございます♪」
「こちら、エッグベネディクトです」
「ありがとうございます♪」
「かぼちゃのポタージュです」
「ありがとうございます♪」
「…………」

　テーブルに次々と並べられていく、ツキの選りすぐりの可愛い料理たち。
　それらはどれも見た目が特徴的で目を惹くものばかりだが、
　しかしその量は決して可愛くない。

「それでは、ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございました～♪　……なんですかアキラさん、その目は」
「いや……その量、本当に食えるのか？　さっきポップコーンも食ったばっかだろ……」

　一つ一つのサイズは大きくはないものの、
　ツキの注文した量は優に成人男性の一人前を越えている。

「余裕ですよ。なんなら、この後デザートも頼みますから♪」
「なるほど……？」

　ツキはその見た目に反して健啖家なようだ。
　朝の言葉通り、食事制限をしているのは朝食だけらしい。

「あーでも……」
「どうした？　やっぱり不安なのか？」
「……アキラさんは、スパゲティだけでお腹いっぱいになっちゃいそうですか？」
「……大丈夫だよ。もしもツキが食べ切れなかったら、俺もいっしょに――」
「よかったー♪　実はピザも気になってたんですけど、これ以上注文したらデザートを美味しく食べられなさそうだなって思ってたんです。アキラさんが一緒に食べてくれるなら注文してもいいですか？」
「…………いいよ？」
「やったー♪　それじゃあ、追加しますね……すみませーん♪」
「…………」