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親睦偏
叱りました
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このままだと、ツキに流されるままなあなあになってしまいかねない。
どんな理由があろうと、ツキがやったことは犯罪だ。
ツキは悪いことをしたという自覚があまりないようだし、ちゃんと言い聞かせるのが年上としての責務だろう。
「はぁ……ツキ」
「っ……」
真剣な表情を作って凄んで見せると、ツキが少しだけ体を緊張させた。
演技力にはあまり自信がないが、縛られているという状況も助けになっているのかもしれない。
その怯えたような表情を見ているとつい優しくしたくなってしまうが、ここは我慢して本気で怒っている演技を続けなければ。
「自分がやったことわかってるのか? 不法侵入も、勝手に合鍵作るのも、どっちも立派な犯罪だ。俺がその気になれば、警察に通報することだってできるんだぞ?」
「それは……そうですけど……。でも、私とアキラさんの仲ですし……」
「その自信はどこから来るんだ……」
ツキは人との距離を測るのが下手なのだろうか。
それとも、これが若さというやつなのだろうか。
陽気でポジティブな人間からすれば、一日共に過ごしたらそれはもう親友なのかもしれない。
陰気でネガティブで童貞を守ってきた人間からすれば、到底共感できそうにない感性だ。
「百歩譲ってそれが許されるくらいの仲だとしても、不法侵入はマズいだろ。もしも俺が家に入るよりも前に、家の中に誰かが居るって気づいてたら、その誰かを確認する前に通報してた可能性だってあるんだぞ」
「でも…………だって……」
「でももだってもない。反省してないのなら、ほんとに警察に突き出すぞ」
「そっ、そんなに怒って……えっちなお仕置きする気なんですね……♡」
「……」
「……っ……すみませんでした」
そう言って、ツキは掛け布団の中にもぞもぞと潜っていった。
「ほんとに反省してるのか?」
「っ……はい……」
布団の中からくぐもった声と、鼻をすする音が聴こえた。
少なからずショックは受けたようだ。
「……それならいい。拘束を外してやるから、手をこっちに向けてくれ」
ツキの性格を考えれば泣き顔を人には見られたくないだろうし、自分で顔を拭えないのも屈辱だろう。
ツキを好き好んでイジめたいわけでもない。
反省しているのなら自由にしたところで危険もないだろう。
「……ありがとうございます」
ツキは素直に体をころんと転がすと、こちらに背を向けた。
「しかし、合鍵まで作ってるとは……その行動力だけは尊敬するよ」
「……サキュバスプレイとか、してみたいなって思って」
「……は?」
あまりにツキがしょげているのでフォローをしたつもりだったのに、
予想だにしない言葉が返ってきたので間抜けな声を漏らしてしまった。
「アキラさんのことはすぐに落とせると思ってたので……そしたら、夜這いとかしたらもっと楽しいことになるかなって……サキュバス風の衣装も用意してあるんです……」
ツキの声色はいつものおふざけとは違っていて――
多分それはツキなりに真剣に考えていて――
なんて返せばいいのかもわからなくて――
「……どっちかと言うと、それはインキュバスかな……」
そんなツッコミを入れることしかできなかった。
どんな理由があろうと、ツキがやったことは犯罪だ。
ツキは悪いことをしたという自覚があまりないようだし、ちゃんと言い聞かせるのが年上としての責務だろう。
「はぁ……ツキ」
「っ……」
真剣な表情を作って凄んで見せると、ツキが少しだけ体を緊張させた。
演技力にはあまり自信がないが、縛られているという状況も助けになっているのかもしれない。
その怯えたような表情を見ているとつい優しくしたくなってしまうが、ここは我慢して本気で怒っている演技を続けなければ。
「自分がやったことわかってるのか? 不法侵入も、勝手に合鍵作るのも、どっちも立派な犯罪だ。俺がその気になれば、警察に通報することだってできるんだぞ?」
「それは……そうですけど……。でも、私とアキラさんの仲ですし……」
「その自信はどこから来るんだ……」
ツキは人との距離を測るのが下手なのだろうか。
それとも、これが若さというやつなのだろうか。
陽気でポジティブな人間からすれば、一日共に過ごしたらそれはもう親友なのかもしれない。
陰気でネガティブで童貞を守ってきた人間からすれば、到底共感できそうにない感性だ。
「百歩譲ってそれが許されるくらいの仲だとしても、不法侵入はマズいだろ。もしも俺が家に入るよりも前に、家の中に誰かが居るって気づいてたら、その誰かを確認する前に通報してた可能性だってあるんだぞ」
「でも…………だって……」
「でももだってもない。反省してないのなら、ほんとに警察に突き出すぞ」
「そっ、そんなに怒って……えっちなお仕置きする気なんですね……♡」
「……」
「……っ……すみませんでした」
そう言って、ツキは掛け布団の中にもぞもぞと潜っていった。
「ほんとに反省してるのか?」
「っ……はい……」
布団の中からくぐもった声と、鼻をすする音が聴こえた。
少なからずショックは受けたようだ。
「……それならいい。拘束を外してやるから、手をこっちに向けてくれ」
ツキの性格を考えれば泣き顔を人には見られたくないだろうし、自分で顔を拭えないのも屈辱だろう。
ツキを好き好んでイジめたいわけでもない。
反省しているのなら自由にしたところで危険もないだろう。
「……ありがとうございます」
ツキは素直に体をころんと転がすと、こちらに背を向けた。
「しかし、合鍵まで作ってるとは……その行動力だけは尊敬するよ」
「……サキュバスプレイとか、してみたいなって思って」
「……は?」
あまりにツキがしょげているのでフォローをしたつもりだったのに、
予想だにしない言葉が返ってきたので間抜けな声を漏らしてしまった。
「アキラさんのことはすぐに落とせると思ってたので……そしたら、夜這いとかしたらもっと楽しいことになるかなって……サキュバス風の衣装も用意してあるんです……」
ツキの声色はいつものおふざけとは違っていて――
多分それはツキなりに真剣に考えていて――
なんて返せばいいのかもわからなくて――
「……どっちかと言うと、それはインキュバスかな……」
そんなツッコミを入れることしかできなかった。
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