上 下
13 / 14
第二章 〜手伝い、そして新たな出会い〜

第12話 少女の手伝い2

しおりを挟む
 少しだけ話をして、キシとレイは部屋を出た。
扉を開けると、そこにはアースィマがいた。

「ふふっ……昨晩はお楽しみだったようですね」

「「ち、違います!」違うよ!」

 レイとキシは顔を真っ赤にしながら慌てて手を振って否定した。
しかし、アースィマはにやけが止まらなかった。
キシとレイが懸命に彼女に説明したが、なかなか信じてもらえなかったという。










◇◇◇









 時刻はまた夜。
キシたちは前回訪れた墓場へ来ている。
除霊魔法をレイから教えてもらうためである。

「じゃあまずは、印の結び方を教えるね。まずは左手を出して手の甲を上にする。そして、左手はこの形にして」

「こうか?」

「うんうん、それで大丈夫」

 左手の最初の型はどう考えても狐だった。
ただ親指、中指、薬指は指の腹をくっつけるのではなく握る形となる。
やはりレイは日本からの転生者なのかもしれないと思った。

「で、右手も左手と同じ形にして―――人差し指と小指を左手の人差し指に絡ませて……これで完成!」

「なるほどな、結構簡単だな」

 キシはレイの指の動きを真似た。
最初に見たレイの除霊魔法の印象が強すぎたせいか、印の結び方も難しいかと思っていたが、意外と簡単だった。

「そして、頭の中でここにいる亡霊達を天に返してあげる感じのイメージを持って発動させれば魔法陣を展開させられるんだけど……。キシの場合は持ってる魔力量が少ないから……」

 とても丁寧で分かりやすい説明だが、最後の説明で軽く傷ついている人物がいた。
カゲヤマ・キシとか、カゲヤマ・キシとか、カゲヤマ・キシとか……。

(くっ……レイじゃない誰かにすっげぇバカにされているような気がしてならない!)

「キシ、まずは鬼化してもらえる?」

「お、おっけー」

 キシは鬼化を発動させた。
彼の額から青白く、鈍い光りを放つ角が現れた。

「うん、これで魔力は補えると思う! じゃあ、早速やってみよ!」

「よっしゃ!」

 レイとキシは指で印を結び、頭の中でイメージする。
すると、数m先に魔法陣ができ始め、徐々に広がり始める。

(おぉ、すげぇ!)

 キシは今回が初めてなので、ぎこちない感じでゆっくりと魔法陣が広がっていく。
前回レイの除霊魔法を見た時は、これよりもっと早く完成していた。
彼女が放つ魔法が、どれだけ凄いのかを良く実感できた瞬間だった。











◇◇◇










 5分後、キシは寝転がっていた。
キシが鬼化を使っても魔力の供給が微妙に追いつかず、あっという間に立てることがやっとなほど疲労が溜まる。
除霊魔法はかなり魔力を消費することが分かった。
あの時、レイが汗をかいて肩で息をしながら、大の字になって倒れたのも納得出来た。

「レイって本当に凄いな。レイはこれよりもっと早く出来るんだろ? それがすごいわ」

「なんか褒められると照れちゃうよ……。でも、ありがとう」

「たぶんレイはその事をそうでもないって思っていると思うけど、絶対誇りに思ったほうが良い」

「うーん、自分はキシの言う通り、そうでもないことだと思ってるけど……キシが言うんだったらちょっとだけ誇りに思っても良いのかな?」

 レイは微笑んでいたが、まだ納得してないような顔をしていた。
彼女は他の魔法は全く習得しておらず、除霊魔法しか使えない。
納得できないのも無理はない話だった。

「さてと、そろそろ宿舎へ戻ろうか」

「えっ、大丈夫? 立てる?」

「まあなんとか大丈夫そうだ。俺は慣れっこだからな~」

「でも無理はしないでね。もしだめだったら言ってね。わたしの魔力分けてあげるから」

「ああ、ありがとうな」

 キシは鉛のように重たい体を起き上がらせ、ゆっくりと歩き出した。
レイはキシに何かあっても大丈夫なように、そっと彼の手を掴んだ。
何故かは分からないが、彼の手を繋いだ瞬間―――どこか安心感を覚えた。

「どうしたんだレイ。急にくっついてきて……」

「ううん、何でもない!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

【R18】突然召喚されて、たくさん吸われました。

茉莉
恋愛
【R18】突然召喚されて巫女姫と呼ばれ、たっぷりと体を弄られてしまうお話。

異世界転生王女、我儘王女からマジメ王女になったら周りの男たちが急に溺愛してきました

杏仁豆腐
ファンタジー
前世、高校2年生女子高生だった私は、家の近くの交差点でランドセルを背負った男の子が渡ろうとしていた。そこに信号無視の10トントラックが突っ込んできたのでとっさに体が動いて男の子を突き飛ばした。 しかし今度は私がトラックにはねられ死亡。気が付くとベッドに横たわっていた私。身に覚えのない部屋やメイドたち。どうやら転生したらしい。今まで我儘放題だった(らしい)私がマジメで優しくなったとたん周りの評価がうなぎのぼりになっていき…。 ここは前世の乙女ゲーム『プリンセス☆オブ☆ザ☆リベンジ』(通称:プリリべ)の世界そのままだった。 そして私の役は悪役王女『アムルディーナ』だったのだ。 この役のバッドエンドは色々あり最後はあっけなくギロチン死刑……。 そんな最後や嫌っ! ゲームプレイいていた私の記憶を確かにこの世界でバッドエンド回避に翻弄する、異世界リベンジ物語。 『悪役だってしあわせになりたいんだよっ!』 果たしてアムルは幸せになるのだろうか。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

処理中です...