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第二章 〜手伝い、そして新たな出会い〜
第9話 感謝のお礼
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「レイどうした?遠慮しないで入っていいぞ?」
キシにそう言われ、レイは恐る恐る部屋に入った。
しかし、彼女の表情は暗く、顔も俯いたまま。
「なんか悩んでんのか?なら相談に―――!?」
「―――うう……」
キシが扉を閉めてそう言うと、いきなりレイはキシに抱きついてきた。
そして、啜り泣きから嗚咽へ変わる。
この状況にキシは固まってしまった。
感覚的に10秒くらい経過したところで、ようやくキシの頭が状況に追いついてきたようだ。
「レ、レイ!? ど、どうした急に……」
「えっ―――あっ、ごめんなさい!」
レイはすぐにキシの体から離れた。
すると、彼女の頬がだんだんと赤くなっていった。
「えっと……これは違って! 気づいたらこんな事していて……。本当にごめんなさい!」
「い、いや大丈夫。いきなり過ぎてちょっとびっくりしただけだから……。あ、別にレイが落ち着くまでさっきの状態でも良いんだぞ?」
「う、ううん! 落ち着いたから大丈夫。ありがとう」
レイは目に浮かんだ涙を拭いた。
キシは最初は何事だと思ったが、とりあえず落ち着いて良かったと安堵の息を漏らした。
「そういえば、体調の方はもう大丈夫なのか?」
「あ、うん。けっこう寝ちゃったから今は大丈夫」
「なら良かった……! 知らない間に爆睡してたもんな」
「えっ……? もしかして……わたしキシにおんぶされたまま寝てた?」
「ああ、随分静かだなあって思って後ろ見たら……普通に寝てたぞ」
キシにそう言われた途端レイは恥ずかしくなり、両手を頬に添えた。
そして、彼女の顔がどんどん赤くなっていく。
「うぅ、はずかしいよぅ……」
「別に寝たって構わないぞ?」
「ほ、ほんとうにごめんなさい! 今日キシに出会ったばかりなのに、いっぱい迷惑かけちゃった……」
「何言ってるんだレイ」
キシはレイの頭にポンと優しく手を置いた。
「そのくらい俺に任せろって! だからレイはもっと俺に頼ってくれて良いんだぞ」
「キシ……うん!」
にへらっと笑顔を見せるレイの姿を見て、キシも自然と笑顔になった。
池の辺にいたあのレイとはまるで違う。
出会った時はどん底で、自分はどうしたら良いのかすら分からないくらい彷徨っていた。
しかし、今は違う。
元気溌剌としていて悩みなんてない。
今のレイはどこにでもいる幼い女の子だ。
「キシ、なんだかうれしそうな顔してる」
「えっ?あ、いや……そうか?」
「うん、すごく嬉しそうに見えるよ」
「そうかそうか。うん、俺は今めちゃくちゃ嬉しい!」
どうやら顔に出てしまっていたようだ。
しかし、キシはレイにバレても別に構わないと思った。
なぜなら、この嬉しい気持ちはレイに向けるべきものなのだから。
「―――ありがとう」
「―――! ど、どうした?」
レイはキシに近づき、彼の手を握った。
「あの時―――わたしはどうすれば良いんだろうって考えてた。アースィマもいてくれるけど、なぜかすごく落ち込んでて……」
そう言うとレイは顔を上げ、キシを見た。
「そんな時に来てくれたのがキシだよ。キシがわたしにかけてくれた言葉は、わたしにとってすごく嬉しかった。だから―――ありがとう!」
レイはキシを見上げながら、満面の笑みを浮かべた。
彼女が握る手もキュッと優しく、そして強く握った。
「あの時俺がレイに言った通り、俺もレイと同じ状況になっていた時期があった。
だからこそ、あの時のレイを見過ごすわけにはいかなかったんだ。おかげで今は悩みなんてない感じでスッキリした顔してるよ」
キシはレイの頭に手を置いた。
レイはほんのり頬を赤くし、嬉しそうな顔をする。
「ほんとうに―――な人」
「えっ、なんか言った?」
「えっ、ううん何でもない。じゃあ、わたしは寝るね」
「あ、また寝るのか。あいわかった―――なあ、何で俺のベットで寝転がってんだ?」
「だって疲れちゃって眠たいんだもん……。戻るのも面倒くさいし……良いでしょ?」
レイはベットの上でうつ伏せになりながら、上目遣いでちらっとキシを見た。
これが子供の武器と言うべきか、それにやられてしまったキシは……。
「イ、イイデスヨ……」
と、つい棒読みで了承したのだった。
キシにそう言われ、レイは恐る恐る部屋に入った。
しかし、彼女の表情は暗く、顔も俯いたまま。
「なんか悩んでんのか?なら相談に―――!?」
「―――うう……」
キシが扉を閉めてそう言うと、いきなりレイはキシに抱きついてきた。
そして、啜り泣きから嗚咽へ変わる。
この状況にキシは固まってしまった。
感覚的に10秒くらい経過したところで、ようやくキシの頭が状況に追いついてきたようだ。
「レ、レイ!? ど、どうした急に……」
「えっ―――あっ、ごめんなさい!」
レイはすぐにキシの体から離れた。
すると、彼女の頬がだんだんと赤くなっていった。
「えっと……これは違って! 気づいたらこんな事していて……。本当にごめんなさい!」
「い、いや大丈夫。いきなり過ぎてちょっとびっくりしただけだから……。あ、別にレイが落ち着くまでさっきの状態でも良いんだぞ?」
「う、ううん! 落ち着いたから大丈夫。ありがとう」
レイは目に浮かんだ涙を拭いた。
キシは最初は何事だと思ったが、とりあえず落ち着いて良かったと安堵の息を漏らした。
「そういえば、体調の方はもう大丈夫なのか?」
「あ、うん。けっこう寝ちゃったから今は大丈夫」
「なら良かった……! 知らない間に爆睡してたもんな」
「えっ……? もしかして……わたしキシにおんぶされたまま寝てた?」
「ああ、随分静かだなあって思って後ろ見たら……普通に寝てたぞ」
キシにそう言われた途端レイは恥ずかしくなり、両手を頬に添えた。
そして、彼女の顔がどんどん赤くなっていく。
「うぅ、はずかしいよぅ……」
「別に寝たって構わないぞ?」
「ほ、ほんとうにごめんなさい! 今日キシに出会ったばかりなのに、いっぱい迷惑かけちゃった……」
「何言ってるんだレイ」
キシはレイの頭にポンと優しく手を置いた。
「そのくらい俺に任せろって! だからレイはもっと俺に頼ってくれて良いんだぞ」
「キシ……うん!」
にへらっと笑顔を見せるレイの姿を見て、キシも自然と笑顔になった。
池の辺にいたあのレイとはまるで違う。
出会った時はどん底で、自分はどうしたら良いのかすら分からないくらい彷徨っていた。
しかし、今は違う。
元気溌剌としていて悩みなんてない。
今のレイはどこにでもいる幼い女の子だ。
「キシ、なんだかうれしそうな顔してる」
「えっ?あ、いや……そうか?」
「うん、すごく嬉しそうに見えるよ」
「そうかそうか。うん、俺は今めちゃくちゃ嬉しい!」
どうやら顔に出てしまっていたようだ。
しかし、キシはレイにバレても別に構わないと思った。
なぜなら、この嬉しい気持ちはレイに向けるべきものなのだから。
「―――ありがとう」
「―――! ど、どうした?」
レイはキシに近づき、彼の手を握った。
「あの時―――わたしはどうすれば良いんだろうって考えてた。アースィマもいてくれるけど、なぜかすごく落ち込んでて……」
そう言うとレイは顔を上げ、キシを見た。
「そんな時に来てくれたのがキシだよ。キシがわたしにかけてくれた言葉は、わたしにとってすごく嬉しかった。だから―――ありがとう!」
レイはキシを見上げながら、満面の笑みを浮かべた。
彼女が握る手もキュッと優しく、そして強く握った。
「あの時俺がレイに言った通り、俺もレイと同じ状況になっていた時期があった。
だからこそ、あの時のレイを見過ごすわけにはいかなかったんだ。おかげで今は悩みなんてない感じでスッキリした顔してるよ」
キシはレイの頭に手を置いた。
レイはほんのり頬を赤くし、嬉しそうな顔をする。
「ほんとうに―――な人」
「えっ、なんか言った?」
「えっ、ううん何でもない。じゃあ、わたしは寝るね」
「あ、また寝るのか。あいわかった―――なあ、何で俺のベットで寝転がってんだ?」
「だって疲れちゃって眠たいんだもん……。戻るのも面倒くさいし……良いでしょ?」
レイはベットの上でうつ伏せになりながら、上目遣いでちらっとキシを見た。
これが子供の武器と言うべきか、それにやられてしまったキシは……。
「イ、イイデスヨ……」
と、つい棒読みで了承したのだった。
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