追放者の冒険

うまチャン

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第二章

第7話 復興を目指して1

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 翌日、村の中心には男たちが集まっていた。
そこには勿論バーブノウンもいる。

「みんな集まったな……。これから村の復興を目指して作業を開始する。さあ、始めるぞ!」

「「「「おおぉぉぉ!!!」」」」







◇◇◇






「バーブノウンはこういうのは初めてか?」

「はい、全然経験なくて……」

 男たちはそれぞれ自分の仕事に手をつけ始めようと散らばったところで、1人の男がバーブノウンに話しかけた。
 彼の名前はハジム。
身長が高く、筋肉質な体の持ち主で妻、そして2人の子どもがいる。
 こんな体つきだが、実は家事が得意。
洗濯、料理、掃除にとどまらず、裁縫まで出来てしまう超万能旦那なのである。
そのため仕事がなくなってしまい、暇になってしまう妻によく怒られている。

「そうか、それなら俺がみっちり教えてやるからよ!」

「は、はい! よろしくおねがいします!」

 この人なら間違いなくわかりやすく教えてくれそう……。
その時のバーブノウンはそう思っていた。
しかし、その予想は大きく外れることになる、というのを、彼はまだ知る由もなかった。









◇◇◇








 一方のフィーダはというと……。

「よっ!」

「おー! すごいぞ!」

 バーブノウンと同じ、住宅の復興の仕事をやっていた。
フィーダのお仕事は大量の木材の運搬。
女性なら絶対に持てなさそうなくらいの――――男性でもいっきに全部持てるかどうかくらいの量を軽々と持ち上げてしまった。

「よくそんな量を持ち上げられるな……」

「このくらい余裕余裕。男たちはもっと頑張らないとね」

「「「「ぐっ……!」」」」

 男性にとって屈辱的な言葉をフィーダに言われ、悔しそうな顔をする男たち。
しかもこんなに容姿が良い少女に言われたのが、彼らに追い打ちをかけるのだった。

「くそ、俺たちも黙ってられないな!」

「そうだ! フィーダちゃんに負けてられるかよ!」

「「「おぉ!」」」

 フィーダがすたすたと村の方へと歩いていく姿を見た男性陣は、急に炎が燃え上がるようなオーラを見せる。
そして、フィーダとほぼ同じ量の木材を両腕に掲げた。

「「「「うぉーーーーー!」」」」

 と雄叫びをあげながら、村の方へと土煙を上げてスタートダッシュ!
ゆっくりと歩いているフィーダの間を抜けて、

「「「「うおーーーーー!」」」」」

 と、村へと猛ダッシュして行き、あっという間に男達は見えなくなってしまった。
それを見送るフィーダは、おー、と感心しながら、人間について新たなことを学んだ。

「人間の男は単純。フィーダちゃんはちゃんと覚えました」

 フィーダが新たな知識を学んだ一方、バーブノウンはというと……

「ほら、そこちゃんと抑えないと落ちるぞ!」

「はいすいません!」

「そこ! 力強くやらないとすぐに崩れるぞ! もっと気合い入れてやれ!」

「はいぃ! ぜぇ、ぜぇ……」

 ハジムにみっちりと叩き込まれていた。
いざ仕事を始めると彼の空気は一変。
急に両手の指をゴキゴキと鳴らすと、先程のハジムはどこへ行ったのやら……。
バーブノウンに容赦なく鞭を叩くようにビシビシ指摘する。
ちょっとのズレがあっても見逃すことなくバーブノウンに知らせ、すぐに直させる。
まさに体育会系教師だった。

(うぅ……もうだめだよぅ……)

 弱音を心のなかで吐いていると、向こう側から長い銀髪がなびく少女の姿が。
フィーダは両腕に大量の木材を掲げてバーブノウンが建てている住宅の前を通っていく。

(―――やっぱりフィーダはすごいなあ……。力仕事も出来て、本当に何でも出来るもんなぁ。羨ましいよ)

 そう思いながらフィーダを見つめていると、フィーダは視線に気づき、バーブノウンの方へと顔を向けた。

「バーブ頑張ってるみたいだね」

「そうだ、聞いてフィーダ! 僕さ―――」

「弱音吐かないで頑張ってね。男の子らしく先輩の言うこと聞くんだよ?」

「えっ、ちょ、待っ……!」

 フィーダはフンス、と気合を見せるような仕草をして木材置き場の方へと向かっていってしまった。
バーブノウンは助けを求めるように手をのばすが、それも虚しく……。

「ほら、ぼーっとしてないで作業再開だ!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!! フィーダァァ……!」

 バーブノウンの悲鳴が、快晴の空へと響き渡った。








◇◇◇








 作業をすれば、時というのはあっという間に過ぎていってしまうもの。
バーブノウンが気付いた頃にはもう日が姿を隠すほどになっていた。

「今日はこのくらいにしておこうか。お疲れ様」

「は、はい……。はぁ、終わったよ……」

 バーブノウンは屋根から降りるとすぐに座り込んでしまった。
作業が終わった瞬間、バーブノウンの体に一気に疲労が押し寄せた。

(こ、これじゃあ全く動けそうになさそうだよ……)

「バーブ」

「あ、フィーダ。お疲れ様……」

 今にも魂が抜けそうなバーブノウンの目の前に現れたのはフィーダだった。
彼女はバーブノウンの前にしゃがんで顔を覗き込んだ。

「随分とお疲れモードだね」

「それはそうだよ。あんなに仕事したの、初めてだったんだから……はあ、はあ……」

「ふーん……」

 フィーダはバーブノウンの疲れ切った顔をしばらく見ると、バーブノウンに向かって手を伸ばし……彼の頭に手を置いて優しく撫でた。

「フィ、フィーダ!?」

 バーブノウンは顔を真っ赤にする。

「よく頑張りました。偉い偉い」

「だ、だからといって僕の頭を撫でなくても……」

「だってちゃんと出来たらよしよしと頭を撫でてあげる。それが普通でしょ?」

「い、いやそれは子どもの話で……」

 フィーダはバーブノウンの頭を撫で、そして優しく微笑んだ。
それを見たバーブノウンは思わずドキッとする。

「さて、この後は夜ご飯だね。すごく楽しみ……」

 フィーダは突然撫でるのをやめ、夕食ができつつある匂いの方へ向き、眼をキラキラさせて涎を垂らしそうにする。
バーブノウンは何が何だかわからず混乱している様子。

「バーブ、一緒に行こう?」

 フィーダはバーブノウンに手を差し伸べた。
それにバーブノウンは一瞬戸惑いを見せたが、ふふっと微笑むと。フィーダの手を取り立ち上がった。

「うん! 僕もお腹空いたしね」

「じゃあわたしと大食い勝負する?」

「そ、それは遠慮しておくよ……」
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