魔王に見初められる

うまチャン

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第21話 元聖帝vs炎帝・雷帝

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 2人の攻撃を防いだ俺に、2人は離れた。

「わたしの攻撃を止めるなんてやるじゃない。さすが元聖帝なだけあるわね」

「燃え上がってきたぜ!『ハリククラ』!」

 ホムラの詠唱により火玉が作られ、俺に向かって放たれる。
 俺は聖剣で防ぐが、

「はぁぁあああ!」

「くっ!」

 ギィンシャー!

 ホムラの攻撃を防いだ瞬間、背後からミライが迫る。
ミライの剣と俺の剣が打ち合い、金属の擦れる音が響く。

「油断したな!『ヤドナール』!」

「ぐはっ!」

 ミライの攻撃に気を取られたせいで、火属性の魔法を纏ったホムラの拳が、俺の腹に命中した。
 俺は遠くへと突き飛ばされ、口に温かいものが来たと思った直後、大量の血を吐いた。
先程の攻撃で内臓が破裂したみたいだ。
 もう立ち上がることが出来ない。
目の前の視界が歪み始めている。
 これじゃあここに来た意味が無いじゃないか。

「ふん、残念だったわねルーカス。わたしが楽にしてあげるからね?」

 ミライは下卑た笑みを浮かべ、俺に近寄ると剣を振り上げた。
そして、力強く振り下ろし俺の心臓に突き刺した。

「ああああああああぁぁぁ!!!……」

「弱かったなこいつ」

「もうちょっと楽しみたかったのに」

「いやー面白かったよ」

「「―――!?」」

「2人がかりで襲いかかってくるなんて、なんて理不尽なんだろうか」

「はぁ!? 」

「な、何で生きてるのよ!」

「さぁ、何ででしょうね?」

 実はさっきまで2人に見せていたのは全て幻。
俺は少し遠い所で観戦していた。
この技は『ハバットアルダウ』と言って、光の粒子を集めて形を作っている。
人間が目で色彩を判別しているのは全て光の反射によるもの。
それを利用しているから、人は錯覚を起こしまるで実物を見ているかのように見えるんだ。
 だがしかし……やっぱこの登場の仕方かっこいいと思わない?

「まぁ同じことだミライ。もう1回殺せば良いんだからなぁ!」

「そうよね!」

 そう言って2人は再び身構える。
俺はその姿を見てニヤリとする。

「何笑ってやがる」

「くっくっ……。やっぱ哀れに見えてくるな、その姿を見ると……ははは! 笑いが止まらない」

「弱いあんたが何言ってんのよ! 死ね!」

 するとミライは俺に再び向かって来た。
全く見えないくらい速い。
 俺はそんなこともお構いなく、ゆっくりと目を瞑った。

「―――」

「―――きゃっ!?」

「ミ、ミライ!?」

 ミライは突然ものすごい勢いで吹き飛ばされた。
やっと、やっとこれを使える時が来たよ。

「あ、あぁ……」

 ミライはもう立つことなんて出来ないだろうな。

「てめぇ! ミライに何しやが―――!?」

「さてもうこれ以上時間を使いたくないんだ。だから冥土の土産にいいもの見せてあげるよ」

「な、なにが―――がっ! あぁああああああああぁぁぁ!!!!」

「ははは……やっとこいつらの鬱憤を晴らせた、わけないか。一生消えないなこれは。さて、あいつの所へ行くか」

 もちろん2人を殺してはいない。
冥土の土産とか言ってたけど、あれは脅迫でしかないからな。
 しかし、俺があれだけ下卑た笑いをしたのは何時ぶりだろうか。
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