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第18話 フィーヒム山脈
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「さ、さびぃ……」
俺たちは今、シャイタンとアーリア王国を隔てる巨大な山脈、フィーヒム山脈に差し掛かった。
しかし、とにかく寒い!
まだ麓にいるのに、まるで冬に逆戻りしたかのようだ。
「さ、寒い……」
さすがの魔王でも、鼻水を垂らしながら俺の腕にしがみつきながら歩いている。
うーん、周りも顔に青筋が現れ始めたな。
よし、ここは得意な光属性の魔法の出番だな!
『ダーフィ!』
俺の詠唱とともに、頭上に光の粒子が煌めく。
「な、なんだ?」
「なんか、体が温かくなったような……」
よし、顔色が良くなってきて、みんなのモチベーションが上がってきたな。
「体が……何をしたの?」
「光属性の特性を生かしたんだよ」
「光属性の特性?」
「そう、光属性の魔法は身体能力向上によく使われるのはアンラも知ってるだろ?」
アンラはこくこくと頷いた。
「それを応用させたのがこの魔法さ」
「え、でも光属性の魔法は、例えばパワーを上げたりするイメージがあるけど……体温を上げるとか、日常的に使う魔法はあまりないんじゃ……」
確かにアンラの言う通りだ。
例えば、火属性の魔法は火を起こしてご飯を作ったりすることが出来る。
しかし、光属性の魔法は日常的に使う場面が全くない。
完全なる戦闘向けの属性なのだ。
「でもさ、完全にそうなのかなって思うと試したくなるのが昔からの俺の性格だから……」
「確かに……ルーカスは何か試したいものがあると、すぐにどこか行っちゃうよね?」
「そうそう、それをやってくうちに『ダーフィ』が俺が初めて作り出した魔法だった」
「えっ!?」
アンラは俺の腕をがっちり掴んだ。
思わずよろけたが、何とか踏ん張って倒れることは逃れられた。
「自分で新しいものを作り出しちゃったの!?」
「そ、そうだけど……」
アンラは俯くと体を震わせた。
あれ……もしかして禁忌《きんき》に手を出しちゃったとか―――
「凄い! 素敵! やっぱりルーカスはカッコイイね!」
「えっ?」
アンラは目にハートを浮かばせて俺に抱きついてきた。
久しぶりにこの表情見た気がする。
初めてアンラに会って部屋に連れられた時以来か……。
あの時は突然過ぎて状況が把握していなかったせいでなんとも思ってなかったけど、婚約者となった今となると……。
最高すぎる……。
「ルーカス、気持ち悪い顔になってるわよ……」
「わっ!? びっくりさせるなよ……」
いつの間にか俺の横にディージャジャが歩いていた。
俺の顔を見られてしまったか……。
恥ずかしくて思わず顔を手で覆った。
「でも、こんな感じならルーカスも苦労しそうね」
「はは……」
「じゃ……もうちょっとで山脈を超えるわよ。頑張りましょう!」
ディージャジャはまた上空へと飛び立った。
いつの間にか山脈を超えるところまで来たのか……。
みんなのモチベーションが上がったおかげで進みが結構速かったんだろうな。
「アンラ、もうすぐ山脈超えるってさ」
「さすがわたしの婚約者ね! カッコよすぎ! はぁ……早くこれを終わらして式挙げたい……」
ダメだ、全く聞いちゃいない。
しかも式挙げるって随分とぶっ飛んでるなぁ……。
―――嘘です。本当は早くやりたいです。
「あ、見えました! アーリア王国です!」
ヒサンの声が響く。
俺とアンラは山脈が降り始めた所まで行くと、そこには城壁に囲まれた国が目に映りこんだ。
俺の故郷、アーリア王国だ。
あの頃と変わらない姿、威圧感をかもしだしている。
「俺の故郷が敵か……」
「ルーカス?」
「いや、あの景色を見ると色んなことを思い出すよ」
物心ついた時から追放されるまでが、頭の中で再生される。
でも、良い思いをしていたのは序盤だけだ。
今はシャイタンの方がアーリア王国より良い。
「でも、俺はこの国と戦わなくちゃいけない。俺のためにも、そしてアーリア王国の国民のためにも……」
「ルーカス……」
アンラは俺の手を握る。
暫くはアンラに触れることは出来ない。
アンラも少し寂しいのだろう。
もちろん俺も寂しい。
しっかりとアンラの体温を堪能して、名残惜しく手を離す。
アンラの目付きが変わった。
「皆さん準備は良いですね?」
アンラの掛け声とともにみんなは頷いた。
みんなやる気十分のようだ。
「出陣です!!」
アンラの合図とともに雄叫びをあげ、シャイタンの軍はフィーヒム山脈を勢い良く下っていく。
「ルーカス」
「―――!」
「絶対勝とうね」
「あぁ!」
俺とアンラは拳をコツンと当てた。
そのままアンラは一瞬にして姿を消してしまった。
アーリア王国内にテレポートして行ったようだ。
「俺も行くか。待ってろよ七帝!」
俺たちは今、シャイタンとアーリア王国を隔てる巨大な山脈、フィーヒム山脈に差し掛かった。
しかし、とにかく寒い!
まだ麓にいるのに、まるで冬に逆戻りしたかのようだ。
「さ、寒い……」
さすがの魔王でも、鼻水を垂らしながら俺の腕にしがみつきながら歩いている。
うーん、周りも顔に青筋が現れ始めたな。
よし、ここは得意な光属性の魔法の出番だな!
『ダーフィ!』
俺の詠唱とともに、頭上に光の粒子が煌めく。
「な、なんだ?」
「なんか、体が温かくなったような……」
よし、顔色が良くなってきて、みんなのモチベーションが上がってきたな。
「体が……何をしたの?」
「光属性の特性を生かしたんだよ」
「光属性の特性?」
「そう、光属性の魔法は身体能力向上によく使われるのはアンラも知ってるだろ?」
アンラはこくこくと頷いた。
「それを応用させたのがこの魔法さ」
「え、でも光属性の魔法は、例えばパワーを上げたりするイメージがあるけど……体温を上げるとか、日常的に使う魔法はあまりないんじゃ……」
確かにアンラの言う通りだ。
例えば、火属性の魔法は火を起こしてご飯を作ったりすることが出来る。
しかし、光属性の魔法は日常的に使う場面が全くない。
完全なる戦闘向けの属性なのだ。
「でもさ、完全にそうなのかなって思うと試したくなるのが昔からの俺の性格だから……」
「確かに……ルーカスは何か試したいものがあると、すぐにどこか行っちゃうよね?」
「そうそう、それをやってくうちに『ダーフィ』が俺が初めて作り出した魔法だった」
「えっ!?」
アンラは俺の腕をがっちり掴んだ。
思わずよろけたが、何とか踏ん張って倒れることは逃れられた。
「自分で新しいものを作り出しちゃったの!?」
「そ、そうだけど……」
アンラは俯くと体を震わせた。
あれ……もしかして禁忌《きんき》に手を出しちゃったとか―――
「凄い! 素敵! やっぱりルーカスはカッコイイね!」
「えっ?」
アンラは目にハートを浮かばせて俺に抱きついてきた。
久しぶりにこの表情見た気がする。
初めてアンラに会って部屋に連れられた時以来か……。
あの時は突然過ぎて状況が把握していなかったせいでなんとも思ってなかったけど、婚約者となった今となると……。
最高すぎる……。
「ルーカス、気持ち悪い顔になってるわよ……」
「わっ!? びっくりさせるなよ……」
いつの間にか俺の横にディージャジャが歩いていた。
俺の顔を見られてしまったか……。
恥ずかしくて思わず顔を手で覆った。
「でも、こんな感じならルーカスも苦労しそうね」
「はは……」
「じゃ……もうちょっとで山脈を超えるわよ。頑張りましょう!」
ディージャジャはまた上空へと飛び立った。
いつの間にか山脈を超えるところまで来たのか……。
みんなのモチベーションが上がったおかげで進みが結構速かったんだろうな。
「アンラ、もうすぐ山脈超えるってさ」
「さすがわたしの婚約者ね! カッコよすぎ! はぁ……早くこれを終わらして式挙げたい……」
ダメだ、全く聞いちゃいない。
しかも式挙げるって随分とぶっ飛んでるなぁ……。
―――嘘です。本当は早くやりたいです。
「あ、見えました! アーリア王国です!」
ヒサンの声が響く。
俺とアンラは山脈が降り始めた所まで行くと、そこには城壁に囲まれた国が目に映りこんだ。
俺の故郷、アーリア王国だ。
あの頃と変わらない姿、威圧感をかもしだしている。
「俺の故郷が敵か……」
「ルーカス?」
「いや、あの景色を見ると色んなことを思い出すよ」
物心ついた時から追放されるまでが、頭の中で再生される。
でも、良い思いをしていたのは序盤だけだ。
今はシャイタンの方がアーリア王国より良い。
「でも、俺はこの国と戦わなくちゃいけない。俺のためにも、そしてアーリア王国の国民のためにも……」
「ルーカス……」
アンラは俺の手を握る。
暫くはアンラに触れることは出来ない。
アンラも少し寂しいのだろう。
もちろん俺も寂しい。
しっかりとアンラの体温を堪能して、名残惜しく手を離す。
アンラの目付きが変わった。
「皆さん準備は良いですね?」
アンラの掛け声とともにみんなは頷いた。
みんなやる気十分のようだ。
「出陣です!!」
アンラの合図とともに雄叫びをあげ、シャイタンの軍はフィーヒム山脈を勢い良く下っていく。
「ルーカス」
「―――!」
「絶対勝とうね」
「あぁ!」
俺とアンラは拳をコツンと当てた。
そのままアンラは一瞬にして姿を消してしまった。
アーリア王国内にテレポートして行ったようだ。
「俺も行くか。待ってろよ七帝!」
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