レオン〜騎士道を知らずに騎士になった少年〜

ピカピカの金貨と嬉しい知らせ

　舞踏会の二日後。レオン一家が食卓を囲み、いつものようににぎやかに夕食を食べている。と、玄関の扉がノックされた。
「こんな時間にだれだろう？」
　レオンの父がアーチ型のぶ厚い木の扉を開けると、エラの使者と名乗る者がよく通る声で説明する。
「お城からやって参りました。この家のレオンという少年に預けていた物を引き取りに行くようにとエラ嬢からおおせつかりました」
「レオン、お嬢さんからの預かり物を持っておいで」　
「わかった！」
　やった！　やっぱり作戦は成功したんだ！　王子さまのハートを射止めたから、お嬢さんはもうお城で一緒に暮らしてるんだろう。レオンは預かっていた包みを渡すと、使者は預かり賃として金貨を一枚くれた。
「金貨……！」
　レオンも両親も息を呑んだ。金貨がどれほど価値のある物かを知っているからだ。
「キャー、きれーい！」
「うわぁ、ピッカピカだぁ！」
「ぴっかぴかー！」
「アッブブブー！」
　幼い弟妹たちは初めて見る金貨に大はしゃぎ。金貨をみつめる彼らの瞳もまた、金貨のようにキラキラと輝いている。
「この金貨があれば、みんながおなかいっぱい食べられるね……」
「ああ、そうだとも。レオン」
「毎晩、神さまにお祈りしてたんだ。『家族をおなかいっぱいにしてやれますように』って」
「お前はほんとに優しい子だね。母さんの自慢の息子だよ」
「お前がお嬢さんにした親切は、家族みんなの幸せとなって返ってきた。私はお前を誇りに思う」
「嬉しいよ、こんな日が来るなんて……。さあ、お前たち静かに。お祈りしよう。神さまに感謝の祈りを捧げるんだよ」
　レオンが手を組んでお祈りを始めると、弟妹たちもおとなしく小さな手を組んで、目を閉じて兄にならった。両親はそんな子供たちの姿を見てうなづき合うと、それぞれに神に感謝を捧げ始める。エラの使者はそんな彼らの姿を見届けると、静かに立ち去った。